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勇者? 人違いです  作者: Adhen
93/128

93。ドライアードだからなぁ……

2025年8月25日 視点変更(物語に影響なし)


「できれば一緒に行きたいのですが」


 そう言ったのは自称戦えないか弱い女、フェルの向かいのソファーにドライアードの隣に座ってお茶を飲んでいるアンナである。


 ……は? 何で〝自称〟なんだって?


 考えてみてくれ。


 毎回フェルの背後に素早く回り込んで、ガッチリと捕まえる彼女は戦えないと言っているけど、じゃあその動きは何だ?


「だめだ」


 だけどそれでもフェルは彼女を連れて行かない。


 フェルとドライアードと違って、アンナは戦闘に慣れていないから。


 それにマナ銃があっても今回の相手は悪すぎる。


「分かっていますわよ、ただ言いたかっただけですわ」


「もの分かりの妻を持って俺は幸せだ」


「あら、褒めても精々キスくらいしか出ませんよ?」


 何も出ないじゃないのか!?


「むっ! 私は褒めなくてもキスを出しますよ、王!」


 そりゃあまあ、フェルにとってありがたいだろうけど、下らない競争(きょうそう)だな。


「とにかく! 会議で言った通り、アンナは留守番だ」


「はぁ〜、分かりましたわ」


「私のキスは要りませんか、王?」


「「……」」


 と、フェルたちは真面目にしているのにドライアードだけはふざけーーいや、彼女の目は本気だ……。


「ね、ねぇ、フェルさん、ドライアード様って欲求不満ですの?」


「いや、俺に訊くなよ……」


 精霊はこういう事に対してあまり気にすることないから違うとフェルは思いたいところだけどーー


「ドライアードだからなぁ……」


「ドライアード様ですからねぇ……」


「な、何ですか、二人にして?」


 ドライアードってちょっと変わった精霊だからな……他の精霊と同じ基準を適用するのは失礼になる、とフェルは考えている。


「む? 王、何か失礼な事を考えていませんか?」


「あー、いや、他の精霊と同じ基準をお前に適用するのは良くないかなーと」


 実際に口に出したぞ!


「うーむ、確かにそうかもしれませんね」



 肯定するのかよ!?







「んー! んん!!!」


 地面に座っている男は何か訴えている。


「いやぁ〜すまんがもうしばらく辛抱してくれ、エルリン兵の皆さん」


 そう言ったのはフェルだ。彼は敢えてその兵士を無視する。


 何故なら彼がやった事だからだ。


 この兵士達は数日前世界樹の封印を調べるために派遣された調査隊だ。


 どうしてこうなったのかというと……フェルの作戦の一部だとしか言えない。


 エルリン国王はこの兵士達の報告を待つつもりで、よっぽどの事がない限りフェルは動けない。


 一応他国の人間だからな。


 しかし何もしなかったら手遅れになりかねない。


 それで一色々検討してみた結果、調査隊をしばらく木の幹の中に、世界樹の中(・・・・・)に静かにしてもらった方がいいとフェルは結論に至った。


 世界樹の中は全く幹の中だと思えないくらい明るい。


 例えるならファンタジー物語に良く出てくるダンジョンみたいな不思議な空間だから、兵士達は暗くて怖い思いせずに済んだ。


 よかったな、諸君!


 あ、ちなみに食事はちゃんと用意されたよ。


「まったく、これは問題になるでしょうねぇ」


 とフェルは兵士達に言い訳していると突然声がして、彼は声の方へ振り向くと薄緑フェドーラを被った男がいた。


「何だ、いたのか、ネヌファ」


 そう、彼はドライアードの部下、手下である大精霊ネヌファだ。


「何言っているのですか!? ご命令通りこの人達を監視していますよ!?」


 いるに決まっていますよ! とネヌファは抗議した。


「こうなったのはお主のミスでもあるのだ。少し反省しなさい、ネヌファ」


「う、うぅ、はい、お母様」


「誰がお母さんだ!」


「ちょ、待ってください! ご、ご勘弁をーー」


 ……ネヌファ、安らかに眠ってくれ。


 彼は一応森と水の大精霊だ。


 しかしその権限は森の大精霊であるドライアードと水の大精霊であるニンフに及ばなくていつも彼女達の助言を仰いでいる。


 言い換えれば子分? かな?


 本人はドライアードとニンフをお母様と呼んでいるから、子分というより子供だな。


 まあそれはともかく、ドライアードの言う通り今回の事件はある意味彼のせいだ。


「こいつらが死なないように頼むぞ、ネヌファ」


「はい! 任せてください、お父様!」


「誰がお父さんだっ!」



 ……地雷多いなぁ。







 キッシャアアアア!!!


「こいつどうやって声を出してるんだ?」


 耳を塞いでいるフェルはうんざりそうな顔で、同じく耳を塞いで後ろにいるドライアードに訊いてみるとーー


「えっと、口の中に口蓋垂(こうがいすい)という物があってーー」


「あるのか、口蓋垂!? 確かに口みたいな物があるんだけど!」


 どこでその知識を学んだかはともかく、真面目な答えが返ってきた!




 バッキバッキ!




「危なっ!」


 根っこをウニョウニョにして鞭のように使って、変異トレントはフェルを攻撃した。


「何でこんなに正確なんだよ!?」


 トレントの攻撃は百発百中! そんなトレントも攻撃にフェルは文句を言っている!


「それはですね、顔に目のーー」


「いい、もういい! そんな知識今必要ないって!」


 ……えー、説明が遅れてすまないけど、フェル達は今件の変異トレントと対面している。


 昨夜暗くてあまり見えなかった変異トレントの姿はこうして改めて対面して見ているとやっぱりでかいなとフェルは思っている。


 近くでずっと仰ぐと首が痛くなりそうだ。


 幸いフェル達は充分距離を取ってあるからそうはならーー


 バッキ!


「おい! 今ナレーターが喋ってる途中だぞ! 空気読めよ!」


 普段私の仕事を盗むお前が言う? まあ一応お礼は言うよ、ありがとう。


「なれーたーって何ですか、王?」


「いや、こっちの話だ、気にしないでくれ」


 そうフェルは答えるとドライアードはトレントの攻撃を躱しながら首を傾げる。



 ……っていうかお前ら、余裕なん?

フェル「なぁ、ドライアード、お前欲求不満なのか?」

ドライアード「っ! そうだったのですか!?」

フェル「いや、何で俺に訊くんだよ?」


よかったらぜひブックマークと評価を。

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