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勇者? 人違いです  作者: Adhen
82/128

82。幕間 おっと、ちょっと黙りましょうか!?

2025年8月20日 視点変更(物語に影響なし)


(どうやらこっちではあの指名手配されている、犯罪者フェルは英雄か勇者扱いされているようだ)


 ギーフに着いた時二班に分かれて、勇者二人は自分の用を済ませるために頑張っている最中、護衛隊長は女王との謁見を予約する為に自分の国王が託した手紙を城の門番に渡した。


 その後、宿探しがてら情報収集している彼はフェルがこの国の民間から良く思われて、それも評価がかなり高く、誰に訊いてもみんな自分の事のように誇って話している事を分かるようになった。


(レヴァスタ王国での勇者達の評判とまるで真逆だな)


 三人の男勇者達は〝下半身脳〟だと評判されて、唯一の女勇者である勇者サナダの考えは何一つ分からなくて変な勇者、と……。


(どっちが勇者かどっちが犯罪者か分からなくなってきたぞ)


 犯罪者じゃないからな、フェルは。


(一番気になるのはマナフル精霊王国の情報だな)


 王都ギーフから北西の森の中にある、精霊王マクスウェルが統治(とうち)する新国で、精霊と人間が共存して生活している国、それは隊長が耳にした情報だ。


 彼の上司によると犯罪者であるフェルは精霊王と呼ばれているけど、さっき聞いた精霊王マクスウェルと同一人物なのか? と隊長は疑問を抱いている。


(もしそうなら早めに援軍を要請しないといけないな)


 一つの国を相手にすることになるから、妥当な判断だ。


(まあ、すべてはロダール女王との謁見の後だ)



 今考えても仕方ないと思って隊長は宿に戻る事にした。







(……分かっていたが、こいつら本当に使えないーーいや、称号は使えるか?)


 宿に戻った隊長は今憂鬱な気持ちになっている。


(所詮ガキか……自分の欲を満たすのが最優先事項だろう)


 なぜ? それは下半身脳ゆーー




「こうなったら最初の計画通りだ」


「そうだな! ロダール女王に女を送らせてもらうぜ!」




 ーー救いようがない勇者達である。


 王都ケルテインを出てから国境を越えるまで町に立ち寄る度に女遊びしかしなかったこの二人の勇者にとってロダール女王国は地獄だろう。


 ロダール女王国では女遊びの店、娼館は禁じられているのだ、女王自らに。その代わり女であれば生活に困る事なく、安全に暮らせると女王は誓った。


 女遊びが趣味であるこの二人の勇者はロダール女王国に入ってからずっとそういう系の店を探しているけど、見つけるはずもなく頭がおかしくなーーコホン! 元々おかしかった。


(……神様、明日の謁見は何事もなく終わりますように)



 無理なお願いと知りながら隊長は溜め息を吐いた。







 ゴンゴン!


「女王様、勇者一行のご登場です!」


 重そうなドアノッカーを鳴らした衛兵に、ドアの傍に待機している一人の番兵は頷いた、豪華で大きなドアを開けた。


 ちなみに衛兵と番兵は全員女性だ。後ろにいる勇者二人が暴走しないかと護衛隊長はずっとハラハラしている。


「「おぉ!」」


 そして開かれた扉の先に王座に座っている女王の姿を確認した途端、勇者達はそんな声を漏らした。


「ようこそ、レヴァスタ王国の使者達よ。ここまでの道のりは大変だろう、ご苦労だった」


 高から苦労の言葉を投げた女王に隊長達は跪いて頭を垂れる。


「して後ろの少年達は勇者達か?」


「はっ! 左様でございます」


 頼んだぞ、ガキ共! と内心で二人の勇者が失礼な真似をしないようにと隊長は内心で願っているけどーー




「ふむ。どうやら礼儀は叩き込まれておらんかったようだな」




 はい? と女王の言葉に疑問を抱いた隊長は勇者達に振り向くとーー


「女王様の前で頭が高いです」


(だよな!? お前ら何やってんだ!?)


 女王の傍に待機している宰相プリムに同意見した隊長は我慢してなんとか二人の勇者に怒鳴りを吐くに堪えた。


「あん? 勇者であるオレ様達がなぜーー」


「おっと、ちょっと黙りましょうか!?」


 何か言おうとしている勇者ナリタの口を流石にまずいと思った隊長は瞬時で手で塞いだ。


「ーー何やってんだよ!?」


 隊長の手を振りほどいた勇者ナリタは大声で抗議した。


「良い! そなたも楽にして構わん!」


「は、はっ!」


 騒ぎを立てて失礼に捉えられる勇者たちの行為を見て、女王はもういいと言わんばかりに遮った。


 フェルも跪かないし、数ヶ月前ロダール女王を訪れるとる時にレイアたちと騒ぎを立てたけど、まあそこは人望の違いだ。


「手紙を拝見させた。残念だがそなた達が探している人物はここにはおらん」


 ガキを相手にするのは時間の無駄だと思った女王はさっそく本題に入った。


「は? 何言ってんだ?」


 勇者ミウラの言葉遣いに思う所がある隊長は何か言おうとしたけど、それより早く女王は説明した。


「理解できないのか? そなた達が探しているフェルという人物はとうにここから去ったのだ」


「ふざけんな! オメェが匿ってるのがわかってんだぞ!」


「そうだ! 早くそいつを渡せ!」


 説明を聞いた勇者たちは再び騒ぎを起こす。


(まずい、読み違えた!)


 勇者一行はずっとフェルはロダール女王国にいると思っていてそれを元に基計画を立てたのだが、女王のさっきの言葉に隊長はようやくそれが間違いだと理解した。


「いい加減にその口を閉じろ」


「黙れ! 犯すぞ!」


 だが二人の勇者はそれを理解出来なくて騒ぎを起こし続けて、彼らに向かって注意を放ったジューナは呆れの溜め息を吐いた。


「断るというなら詫びとして女をよこせ!」


「ほう? そっちが本命のようだな」


 と、ついに本音を出した勇者ナリタの言葉に女王の目つきは鋭くなった。


 勇者たちの計画は要請が断られたら欲求を述べるけど、断ると出来ないは違う。


「ところで、隊長、ルーゼンの研究者達は最近面白い魔法道具を開発したらしいぞ?」


 勇者たちから視線を外し、女王は突然話題を変えて笑みを浮かべてさらに続ける。


「〝テープ〟というらしいでな。何でも周囲の音を拾って記録する魔道具らしい」


(周囲の音を、記録? ま、まさかーー)


「便利すぎて思わず数個買ってしまった」


 女王は何かを手に持って、ゆらゆらと揺らしていながら隊長に見せ付ける。


「ここでの会話が他国に知られたらどうなるかな?」


(くっ! やられた!)


 まあその場合はずっと無礼に働き、暴言を吐いている勇者たちの評判はさらに下がるだろう。


 それだけじゃない。


 勇者たちを野放しにして調教できないとレヴァスタ王国の評判も下がるのだ。


「はっ! そんなの関係ねぇんだよ! 俺達勇者だぜ?」


「そうだ、俺達を必要とする他国大勢ある」


 いくらお前らが勇者でも全魔族を相手出来ないだろうが! バカかお前ら!? バカだな! 下半身脳だから!


「そうか? ならこの会話を全国へながそう」


「じょ、女王陛下! それだけはーー」


「もう良い! 勇者達はお帰りになりそうだ。誰か送ってやれ」


 女王様の言葉に数名の衛兵は勇者達を囲む。


「あー、そうそう、フェルという人物を探したいなら精霊王国マナフルに行くがよい」


 そして最後に重要なことをさらっと連れ去られている勇者一行に女王は言った。


「ふざけんな! 話はまだ終わってねぇぞ!」


「いいから行くのです!」


 計画が崩れて抗議している勇者ナリタは隊長に無理矢理に連れて行かれた。



 ……苦労しているな、隊長。







「クソ! 何なんだ、あの女!?」


 結局勇者一行は強制的に城外まで引きずられた……失礼、〝勇者たち〟だけだった。二人は最後の最後まで抵抗を続け、衛兵たちに迷惑をかけていたのだ。


 そして以後の事を話会うために一旦宿に戻って、部屋に着いた途端勇者ナリタは女王に対して唾吐きした。


「貴様も何やってんだ、隊長!?」


「それはこっちの台詞です! あれ以上騒ぎを起こしたら国にクレームが入りますよ!?」


 いや、入るのが決定事項だな。


「それがどうした!?」


(俺の首が飛ぶ事になるって事だよ、このクソガキ共が!)


 とまあ、内心でしか言えない隊長は可哀想だ。


 クレームが入るのは決定事項で、女王が持っているテープが流されたら隊長は一生レヴァスタ王国の奴隷に落とされる。


「とにかく目標の居場所は分かりました。これ以上ここに留まる必要はありません」


 最後女王の言葉と自分が集めた情報を踏まえて、隊長はここから北西へ移動して精霊王国マナフルを目指すと決めた。


「既に国に援軍を要請しまた。三ヶ月後合流できると思います」


 マナフル精霊王国はロダール女王国の領内の北西にあるから、要請した援軍はそのまま同じルートを辿って勇者一行に合流できないのだ。


 もしそうしたら侵略の試みとロダール女王国に見なされるかもしれないからな。


 そこで遠回しの迂回になるけど、隊長はマナフル精霊王国の西にあるレヴァスタ王国の属国を合流地点として選んで援軍を要請したのだ。


 まあ、レヴァスタ王国としては同時に二つの国と同時に戦争したくないからな、いくら自分たちは大国としてもね。


「ふん! こんな国に負けるわけねぇだろうが!」


「……ロダール女王国は確かに小さな国です、それでも数大国に囲まれてまだ存在していますよ」


 東にマセリア帝国、南にレヴァスタ王国、西にレヴァスタ王国の大属国。これらの大国に囲まれていて今も存在し続けるロダール女王国は侵略能力こそ低いけど、防御面では侮れないってことだ。


 それにロダール女王国は以前開発した〝エアキャノン〟と言う魔大砲の力も世間には不明だから、迂闊攻めたらレヴァスタ王国は負ける可能性は充分ある。


 いや、負けるだろうな。


「チッ! こうなったら女を誘拐してでも」


「やるならスマートに、だ」


 ついに二人の勇者は可笑しくなったようだ。


「おやめください! 勇者を止めて犯罪者になるおつもりですか!?」


 性格と思考は犯罪者のそのものだと隊長は分かっているけど、ここまでとは思わなかった。


「レヴァスタ王国の名を背負っていますよ!」


「……仕方ねぇな」


「勇者資格を失えば色々と不便だからなぁ……」



 ……いやぁ、本当に救いようがない奴らだ。

隊長「跪き方知らないのですか?」

勇者二人「「知らん。俺達がルールだ」」

隊長「なに言っているのですか……」


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