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勇者? 人違いです  作者: Adhen
80/128

80。丁度いい高さだな!

2025年8月19日 視点変更(物語に影響なし)


「フッハッハッハ! 姿がつり合っているぞ、これで文句なーーあいたっ!」


「フッハッハッハ! 丁度いい高さだな! ほらほらほらっ!」


 勝ち誇った顔で胸を張ったマクス爺の頭にフェルは何度もチョップをかけて、涙ぐんでしているマクス爺は両手で頭を守ろうとしている。


 まあ、フェルの身長だと本当に丁度いい高さにマクス爺の頭がある……。


「あの、エイオン様? ワレの後ろに隠れないでください」


「その、身の危険を感じてーーいや、頭の危険か?」


 どうでもいい事で痛い事が変わらないから首を傾げて言い直さなくてもいいのだ。


「それより、止めなくてよろしいのですか?」


「うぅ!」


 今も頭がチョップされているマクス爺にドライアードは指差して、それに対してエイオンはまるで裏切られたかのようにドライアードを睨む。


「ーーどうしたどうした! 防御しかできねーのか!?」


「やめーーいたっ!」


 側から見たらまるでいじめだ……いや、実際にいじめか?


「行ってください! 夫を見捨てるつもりですか!?」


「いやよ! あなたこそフェルの妻でしょう!? 夫を止めなさいよ!」


「ちょっ! 放してください!」


 ぶんぶんとドライアードの腰に両手を回したエイオンは頭を左右に振っている!


「ん? 待って……エイオン様の()?」


 そこでレイアはやっと気付いた。エイオンは前精霊の女王だから、つまり今いじめられているのは前精霊の王だという事に。


「ちょっとフェル!」


 流石にまずいと思った彼女は慌ててフェルを背後から抱いて拘束する。


「レイア、邪魔するな! こいつは身をもって教えないと分からない、特徴な体質を持ってるんだよ!」


「何が教えるのよ!? さっきからただマクスウェル様の頭を叩いてるだけじゃない!?」


「失敬な! 人を変人みたいに言うな!」


「え!? そこっ!?」


 庇ってやるつもりのレイアだったけど、的外れだった。


 まあ人によって拘りは違うからな。


 マクス爺の場合は頭がチョップされるより変人呼ばわりの方が重大って事だ。


「ちょっとドライアード! その手は何!?」


 現精霊女王と前精霊女王の方だけど、笑顔のままで指を真っ直ぐに伸ばしているドライアードに対比して、エイオンは慌ててレイアの陰に隠れた。


「あぁ〜頭痛い……」



 ……頭を抑えるレイアであった。







「ーーというわけでレイアは精霊と人間の仲介を担当してるんだ」


 あれから何とか落ち着きを取り戻したみんなはフェル達の用事を済ませるために家に入って、大体の事を説明したフェルはそう話を締めくくった。


「なるほど。話は分かった、後で他の連中に伝えておこう」


 低いテーブルを間にして、フェルの向かいに床に座っている真剣な顔でマクス爺は頷いた。


 ちなみに姿は少年のままだ。


「あの、エイオン様、質問ですが」


「うん? なに?」


 マクス爺とフェルの邪魔にならないように他の連中は縁側に腰を掛けて、レイアは隣に座っているエイオンにふと気になる事を尋ねてみた。


「エイオン様とマクスウェル様はご結婚なさっているのですか?」


 さっきの騒ぎの中でエイオンはマクス爺の妻だとフェルは遠回しに言った。


「そうよ? まあ私たち精霊は〝結婚〟という習慣(しゅうかん)はなかったから、結婚生活にはまだ慣れていないけどね』


 そう言って苦笑したエイオンはそのまま説明を続ける。


「私たち精霊はずっといるでしょう?」


「えっと、寿命がない、って事ですよね?」


「そうそう。だから次から次へと変わっていく人間の習慣には興味ないの」


 ようするに自然から生まれた、ある意味不死不滅な精霊達からすると、寿命が短い人間の習慣はどうでもいいものだ。


「それでもここ三年間みんなある程度慣れてきたのよ」


 一番慣れているのはマクスだけどね、とエイオンは苦笑する。


「えっと、

何で少年の姿ですか?」


 百年は確実に超えているし、何より精霊達の王だった者だから年寄の姿にした方がいいとレイアは思っている。


 まあ凄みていうか、威厳? はあるからな、爺の姿だと。


「それは……フェルに構ってもらえたかっただと思う」


 私はノリでやっているけどね、とエイオンはまた苦笑する。


「祖父が孫に構ってもらえることは当然のことだからね」


「いやいや、孫がそう簡単に祖父の頭を叩きませんよ。それに普通は逆だと思います」


 うーむ、エイオンの言う通りかもしれないよ、レイア。


 子供である孫は普段遊に忙しいから全然祖父の事を構わなくて、それで孫を愛している祖父は寂しくなって逆に孫を探す、というケースはたまにあるのだ。


 ……多分だけど。


「それにしてもフェルはマクスウェル様とエイオン様の孫、か……あれ? でもフェルって確か人間ですよね?」


「そうよ。だからこそ人間の習慣を私達に教えられたの」


「な、なるほど」


 精霊の仲間と呼ばれるほど精霊達と仲がいい自分みたいに、フェルも精霊達と仲が良くて、精霊の孫と呼ばれるようになったのか、とレイアは勝手に結論に至った。


「でも人間は精霊王になれます? いくら自分の孫と思っても種族が違いますから王位継承(けいしょう)出来ないんじゃーー」


「彼は人間であり、精霊でもあるから、出来るのよ」


 え? とエイオンの言葉を聞いたレイアは驚愕して固着してしまった。


「だって彼はーー」


「エイオン様!」


 そんなレイアを構わず何か言いかけたエイオンはさっきから黙って話を聞いているドライアードに遮られて睨まれている。


「分かったわよ」


 もう〜、とエイオンは頬を膨らませている。


「時が来たら教えるわ。彼は私達の孫、それだけを知れば今は充分よ」


 フェルの妻だからいずれ知る事になるわ、とレイアに向き直したエイオンはさらに加えた。



 エイオン様は一体何を言いたかったの? と内心でそう気になるレイアだった。

マクス爺「なぁ、フェル、精霊達をアイドルとして育てたいんだけど――」

フェル「はぁ!? アイドルって何なのか知ってるのか!?」

マクス爺「ただ歌って踊るだけだろう?」

フェル「全アイドルに謝れ!」


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