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勇者? 人違いです  作者: Adhen
8/120

8。引きなさい、人間

2021年3月31日 マイナー編集

2025年2月25日 視点変更(物語に影響なし)


 フェルが去ってから三日間が経って、現在朝食をとりながらルーガン、ネア、そしてレイアの三人は今日の予定を話し合っている。


「今日は北を目指します」


「西と東の方はもう調べたからね。精霊たちの言葉だと北に行かない方がいいけど」


「えぇ〜そうなの〜? やばくない〜?」


「軽く調べるだけだから問題ないと思うよ」


「む〜仕方ないな〜」


 精霊の言葉と知ったネアはあまり乗り気じゃない。それでもパーティーだから全員行ったら自分も行くしかないと彼女が観念した結果、数時間後三人は洞窟の入口の前に立っている。


 途中で何回か森の精霊たちに悪戯されてずっと同じ場所でぐるぐる回っていたけど、最後にレイアは彼らにお願いして案内してもらった。


「なんかそれっぽい場所だね〜」


「あれほど精霊たちから忠告を受けたんだ、何かあるだろう」


 壁に緑色の線がある洞窟を前にして、ネアとルーガンは警戒を上げて洞窟に入った。


「ーーーー」


「え?」


 遅れて二人の後を付いていこうとしたレイアの耳に声が入って、右端の視界に女性の姿を見た気がして視線を向けーー


「どうしたの〜レイアちゃん?」


「っ! い、いえ、なんでもないわ」


 ーーようとしていたけど、遅れている彼女を心配して戻ったネアに声を掛けられた。


(気のせい……よね? うん、気のせいに違いないわ)


 そして女性がいると思った方向へ見るとそこには何もなく、レイアは自分にそう言い聞かせた後ネアと一緒に洞窟の中へ進んだ。


 知らないエリアだから三人は普段より警戒して、しばらく歩いたら下へ続く階段を発見した。


「これ、降りるしかないね〜」


「ああ。レイアさん、精霊たちはなんと?」


「洞窟に入った直後、彼らはどこかに行ったわ」


「そうですか……とりあえず、警戒して進みましょう」


 盾と剣を構えて、ルーガンは先頭を歩く。


「わぁ、大きいな扉ね〜」


 下で待っているのは大きいな大樹の浮き彫り(うきぼり)付き石扉(せきひ)だった。そして石扉の左側に水晶みたいなものがある。


「これはーーねぇ、ネア、風魔法、あるいは木魔法使える?」


「ん〜? 使えるよ〜」


「ならどちらかの魔力をこの水晶に流してくれる?」


「りょうかーーん?」


 水晶を触ろうとしたネアは突然止まって、首を傾げた。


「どうした、ネア?」


「……あたしたち以外誰かここを尋ねたようね」


 普段の口調と違ってそう言った彼女はルーガンたちに振り向いた。


「どうする? このままいく?」


 確認の問いを投げた彼女に、ルーガンとそろってレイアは頷いた。それを見た彼女は水晶に向き直し魔力を注ぎ始めてから少しの後ーー


 ピシャアア!


 水晶が突然緑色の光を放って同時に扉が左右へ開く。


「何だここ……?」


「広いね」


「……」


 やがて完全に開いた扉の先に三人を待っているのは広場だった。


 天井、それと左右の壁に洞窟の中にある同じ光っている緑色の線が見られ、それらが広場の奥へ続いて一ヶ所に集まった。


「あれは……聖剣フォルティア、ですよね?」


 その一ヶ所は剣が刺さっている祭壇だった。


 剣を見たルーガンは信じられないと言わんばかりにレイアたちに訊いてみた。


「分からないわ。でも不思議なことにあの剣、精霊たちが囲んでるのよ」


 首を横に振ってレイアは自分が見ている不思議な光景をそのまま説明した。


「……ネア、入るぞ。レイアさんの護衛を」


「オッケー。レイアちゃん、離れないように」


 ずっと入口に居ても何も変わらないから、ルーガンの指示通り三人は動いた。


 そして広場の中央あたりまで進んでいると先頭にいる剣と盾を構えているルーガンが突然ストップをかけた。


「待って、何かいる!」


 周囲に何もいないのにルーガンはそう言って構え直す。




「引きなさい、人間」




 彼ら以外誰もいないはずのこの空間に突然女性の声がして、その瞬間にルーガンたちの少し前に小さな緑色の光玉が集まる。


 ルーガンたちが目を瞑るに余儀なくされるまで光が段々強烈になって、やがて光が治まって目をゆっくり開けた彼らの前に一人の女性が立っている。


 身長が女性平均より高く、緑色のストレート髪が腰まで伸び、顔がこの世のものと思えないぐらい綺麗。女性であるレイアとネアが思わず見とれてしまう程の美貌の持ち主なのだ。


 そして何よりーー


(せ、精霊たちが喜んでる!?)


 精霊を見えるレイアの目には女性の周りに精霊たちが元気いっぱいで回っている。


「あ、あなたは――」


「分からないのか? 引きなさい。これが最後の警告だ」


 何か言おうとしたレイアは女性に遮られて、その直後女性の身が突然激しく発光すると同時にレイアは激しい眩暈を感じた。


 それでも戦いにおいて相手から目を逸らしてはいけないと分かっているレイアは辛うじて発光している女性の表情を見た。


(な、なに……? どう、して!?)


 その表情は困惑(・・)だった。


「っ! させない! ファイアウォール!」


 同じく目眩を感じたネアは女性が何かやろうとしていると悟って魔法を展開した!




 ズッシイイィィン!




 その直後何かがぶつかり合った音が広場に響き渡った!


 音に耐えられず膝につき両耳を塞いだレイアが再び前を見ると緑色の光が炎の壁に阻まれている光景がそこにあった!


「ルー! フレームエンチャント!」


「っ! わかった!」


 ネアの掛け声に答えたルーガンは剣を掲げるとそれに応じるかのように剣が突然炎に包まれた。


「ちっ!」


「させないって言ったでしょ! アースバインド!」


 走り出して迫って来ているルーガンから距離をとろうとした女性はネアの魔法によってその場で留められた!


「これで終わりだ! おおおぉぉぉぉ!!!」


 好機とみてルーガンは一気に距離を縮めるように跳躍し、勝利を確信した彼は叫んで炎に包まれた剣を振り下ろした!


「っ!」


「ま、待って、ルーガーーっ!」


 やっと目眩から回復したレイアはルーガンを止めようとしたけど、ルーガンの方が一歩速かったのだ。




 ぼぉふうぅうぅ!




 直撃! ルーガンが振った炎の剣が火の柱を生み出し、その火が天井まで届いた!


「よし! ネア、もう一回だ!」


「うん! フレーーっ!」


 今が勝機(しょうき)だと思ったルーガンの指示に従い、ネアはもう一度フレームエンチャントを唱えようとした時ーー




「だから結界を張った方がいいって言っただろ」




 後ろからこの場にいないはずの少年の声がして、全員の動きが一瞬止まった。

ルーガン「ラスボス登場!」

女性「それはワレの言葉だ!」

ネア「じゃあ言えば〜?」

女性「うっ……恥ずかしくて無理だ!」


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