表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者? 人違いです  作者: Adhen


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/162

65。幕間 ふふふ、寂しいか?

2025年7月14日 視点変更(物語に影響なし)


「お母様! 何故お尋ね者を連れて帰りましたの!?」


「アンナ! 言葉に気を付けなさい!」


 数日前にレヴァスタ王国が探している少年の情報が入って、少年を追うために遠征をしたお母様達は帰還して、会議を開きました。


 会議に参加している事でその少年は王城にいると知りましたわたくしは思わずお母様に抗議を述べてしまいました。


「アンナ様の心配は分からなくもありません。本当によろしいのですか、女王様?」


 他の参加者の確認の問いにお母様は躊躇いなく頷きました。


「他の国々を敵に回しかねないのですよ!?」


 そう! それですわ! お尋ね者を匿っている事に絶対にいいことはありませんわ!


「……理由は日を改めてから説明する、それまで彼を最善な待遇を。アンナ、付いてきなさい」


 話は終わりだと言わんばかりにお母様は席を立って、会議室を後にしました。


 付いてくるようにと言われまして、慌ててお母様の後を追って行先を聞いてみると図書室だと答えられました。


 ですけど図書室に着きますと既に先客がいましたわ。


 黒いローブを着ていて、小柄で白髪が混じった短い黒髪が印象的でしたわ。


「あー、女王、すまんがちょっと訊きーーお前若返りしたのか?」


 手にある本を読みながら振り返ったその人はわたくしを見てそんな事言いました。


 ちなみにお母様はなぜか居ませんでしたわ……。


「あ、あなたが、フェル、さんですの?」


 それにしても思っているのと違ってこの人、わたくしとあまり歳が離れていませんわね……。


「ん? なんだその語びーー待てよ……」


 何か言いかけていた彼は暫し沈黙を保ちますと再び口を開きました。




「この大きさーーお前女王じゃないな。誰だ?」




「ど、どどどこを見ているのですか!?」


 さっきから視線が胸に固定していますわよ!?


「ふふふ、どうかな、フェルさん(・・)? 娘は中々でしょう?」


「お、お母様!?」


 物陰から笑っているお母様は出て来ましたわ!


「やっぱり娘さんか? まぁ、お前ほどじゃないが中々立派だぞ?」


 近付いてきているお母様に笑みを浮かべながら男は親指を立てて突きました。


「それでフェルさん、娘を貰ってくれない?」


「なっ! お母様!? 何をーー」


「いや、自分の娘の前で何言ってんだよ? 彼女の意志も重要だろう?」


 そうですわ! どこの馬の骨とも分からない相手に何を言っていますの!? 犯罪者かもしれませんわよ!? いえ、指名手配されていますから犯罪者ですわよ!?


「ふむ……じゃあ意志さえあれば歓迎する、と?」


「あー、美人を待っても構わんが、嫌われてるらしいんだぞ?」


 チラ、と一瞬わたくしに視線をやって、男は肩をすくめました。


「当たり前ですわ! 素質が分からない上に世界中からお尋ね者扱いされていますわよ!? この国に危険をーー」


「アンナ!」


「っ!」


 最後にお母様に大声で怒鳴れられたのはいつでしたっけ? 昔すぎてもう忘れましたわ……。


「……不安させたな? すまん。用事が済んだら立ち去るから安心してくれ」


「フェ、フェルさん、それはーー」


 苦笑した男に対して何か言おうとしたお母様は男に遮られました。


「はぁ……俺のせいでお前らの仲が悪くなったら目覚めが悪いんだよ。親子は仲良くするのが普通だろう?」


「「……」」


 そう言って、男は机に置かれている数冊の本を持ち上げてお母様に問いかけました。


「ところで研究所とかあるか?」


「……はい、こちらへ」


 まだ納得していないのか、お母様はしばらく沈黙を保ちました後男と共に図書室を出ました。



 えっと、わたくし、付いていかなくてもよろしいですわね?







「アンナ、フェルさんの事どう思う?」


 その日の夜、お母様の私室に呼び出されたわたくしはそう訊かれました。


「……どうと言われましても、彼の事殆ど知りませんからなんとも言えませんわ」


 今日会ったばかりですわよ?


「なら何故彼は悪人だと決め付ける?」


「そ、それは……お母様こそどうしーー」


「勇者だから」


「え?」


「彼は勇者だからよ」


 絶句しているわたくしを無視して、お母様は説明し始めました。


「数ヶ月前から各地の治安は芳しくないという報告がーー」


 お母様によりますと国の所々に治安が悪化していて、各領主から人材派遣要請が沢山届きました。


 例えば一ヶ月前くらい、北東にある狐人族の村は盗賊と(おぼ)しき集団に襲撃されましたとか。


 しかしここ最近それらは段々減っていきます。


 全部は男のおかげだとお母様は確信していまして男に問い詰めましたが、本人は認めませんでした。


「村人たちみんな彼を勇者だと思っているのよ? まあ、お母さん知っているけどね、彼は勇者ってことを」


「お母様……」


 その確信はどこから来ましたの?


「レヴァスタ王国は何を考えて彼をお尋ね者にしたのかわからないけど、決していい選択じゃないわね」


 とにかく、とお母様は続けます。


「彼の事を知りなさい」



 いやいやいや、娘をもっと大切にしてくださいよ、お母様!







「うお! ちょっーーお前何やってんだ!?」


 男はすぐに顔を背けました。


「何突っ立ってるんだ!?」


「はっ! あ、ああぁぁぁーー」


 一瞬頭が真白になってしまいましたけど、男の声にすぐ我に返りまして、そしてあまりの恥に上手く声を制御できませんでした……。


「ちょっ! 叫ぶなよ?」


「ん! んんー!」


 大声を出そうとしているわたくしの背後に素早く回り込んだ男は左手でわたくしの口を塞ぎました!


「くそ! 入口で待機してる女騎士たちはどうした!?」


 女騎士? 何言っていますの? 女騎士なんて置かれるわけないでしょう!? 風呂場(・・・)ですわよ!? それより早く放してください!


「ちょっと黙ってろ! くそ! あの女王わざと女騎士を外したのか?」


 いや、冷静に分析しないでさっさと放してください! お願いします! 何か硬いモノが当たっていますから!


「いいか? 大声だすなよ? お互いにまずい状況だから」


 そ、そうですわね! もし他人にバレたらわたくし、お嫁にいけませんわ……。


「せっかくだからお前も一緒にどうだ?」


 わたくしを解放した男は浴槽(よくそう)へ歩きました。


「い、いえ、遠慮しますわ……」


 確かにお風呂をするために来ましたけど、なんか身の危険を感じますわ……あんな硬いモノが後に押し付けられましたし。


「そうか? まあ、後一〇分で上がるからその時また来てくれ」


 そう言って、男はのびのびと浴槽でくつろいでいます。



 っていうか言わなくてもそうしますわ!







 それから男は殆ど研究所に引きこもっていて、彼の様子を伺っているある日ーー


「入ったらどうだ?」


「っ!」


「ずっと監視しても退屈だろう?」


「い、いつからバレましたの?」


「そうだな……最初から?」


 さ、最初から!? え? もしかしわたくし、やばい女だと思われていますの?


「安心しろ、やばい女とか、ストーカーとか思っちゃいねぇさ」


「あ、当たり前ですわ!?」


 心外ですわね!


「まあ、そんな事よりこれを見ろ」


 さっきから何かを書いている男は手を止めて、わたくしに見えるように紙を持ち上げました。


「これは……設計図?」


 釣られて広く左右へ開かれた紙を近くでよく見たら、そこに左右に輪がついているパイプみたいな絵と部分の詳細が書かれています。


「大砲?」


 サイズはあまり大きくありませんが。


「これは〝エアカノン〟だ」


 男の説明からしますとこれは砲弾(ほうだん)の代わりに空気を圧縮して高速で放つ、という砲弾不要な大砲ですわ。


 威力は高くない事と距離はあまり遠くないのが欠点ですけど、魔力がある限り弾切れはしない、というのがポイントらしいですわ。


「どうしてこんな物を?」


「この国ぱっと見てバリスタしかないからな。これがあれば国力上がるだろう?」


「それはそうですけど……」


「お尋ね者である俺を匿って色々よくしてもらったから、そのお礼だ」


 そういえばお母様から身分証、土地、情報、色々提供されたらしいですわね……。


「まあ、改良点たくさんあるから一緒に考えたらどうだ?」


 意見は多い方がいいしな! と男は笑顔で誘いました。


「……そうですわね、そうさせて頂きますわ」



 監視がより楽になりましたし。







 研究所に行ってフェルさん(・・・・・)と研究している一ヶ月後の朝ーー


「じゃあな、女王、世話になったよ」


「何、こっちも色々助けられたから気にしないでくれ」


 フェルさんは再び旅に出ようとしていますの。 


 彼を見送るためにお母様、ジューナさん、そして戦乙女の皆さんと一緒に王城の門の前に集まりました。


「それとこれを」


「これは?」


「設計図だ。詳しい事はアンナに訊いてくれ」


 フェルさんから手渡された設計図の巻物を受け、皆さんは一斉にこっちを見てニヤニヤとしています。


「な、何ですの?」


「ふふふ、何も。フェル、次に訪れるのはいつになるのだ?」


 もう、お母様ったら!


「さあ? 再び来れるかすら分からんからなぁ」


「……」


「まあ、その時はその時だ」


 指パッチンをした後、フェルさんの背後に扉みたいなものが現れまして、訊いてみるとそれは〝ゲート〟という転移魔法の一種らしくて全員驚愕を抑え切れませんでした。


「達者でな」


 わたくしたちを見回ってそう言ったフェルさんは扉を潜った後、扉は消えました。


「……」


 しばらくゲートがあった所をじーっと見ているとお母様は訊きましたの。


「ふふふ、寂しいか?」


「お母様!?」


 さっきから何なのですか!?


「彼の事だ、そのうち戻るだろう」


 ニヤニヤしながたお母様は王城へ歩き出しましたけど、よく見たらジューナさん達も同じ表情をしていますわ!



 もう! 皆さんにして何なのですか!?

アンナ「はぁ〜」

女王「なに? やっぱり寂しいじゃない」

アンナ「もうお母様!」


よかったらぜひブックマークと評価を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ