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勇者? 人違いです  作者: Adhen
55/128

55。めっちゃ効いてる!!!

2025年6月24日 視点変更(物語に影響なし)


「なあ、ルナ……俺たち魔法練習してるんだよな?」


「そうですが?」


 屋敷に帰った翌日の朝、フェルとルナはいつものように魔法の練習をしている。


 ちなみにソフィマは休ませた、昨日帰ったばかりだからな。


「じゃあなんであいついるんだ?」


 隣にいるルナを見ているまま、フェルはやや後ろにいるディアを指した。


 彼女はさっきから無言で剣を振り続けている。


「なんでって、朝の練習でしょう? ねえ、 ディア?」


「ああ、それがどうした、フェル?」


「〝どうした〟じゃねぇよ! さっきまで俺を睨んでただろ!?」


 背中にチクチクと視線を感じたんだよ! と更にツッコミを入れたフェルは半眼でディアを見ている。


「あ、そうでした! ディアに魔法を教えたらどうです?」


「ええ、是非教えてくれ、フェル」


 帰る際にルナはディアを連れてきたいと聞かなかったからフェルは仕方なくそうしたけどーー


「お前なにしに来た? 個人的な恨みでもあるのか? 言葉と表情が一致してないぞ?」


 あー、真顔で言ったからな。


 お前に教われたくないけど、お姉ちゃんのアイディアだから仕方なく頼んだ。だから断れ! とまあディアの表情と視線はそういう意味合いがあるとフェルは感じたのだ。


「いやですか?」


「別にいやって分けじゃないんだが……」


 俺の言葉を素直に受け入れるか? とフェルは疑問を抱いている。


 それにディアの戦闘スタイルは知らないから、どんな魔法を教えるかフェルには判断が付けない。


「まあ、とりあえず魔力量を増やしたら? ルーンブレイカー数回しか使えないだろう?」


 ルーンブレイカーは自分の魔力を使って相手の魔法を打ち消す、ディアのオリジナル魔剣技だ。以前フェルと戦闘していた時彼は結構魔法を使っていてもディアはその技を数回しか使わなかった。


 その事から数発しか打てないだろうとフェルは推測して、彼女に魔力量を増やす訓練を勧めた。


「それに魔力量が多い事に越したことないからな」


「……分かった。どうすればいいのだ?」


「……は?」


 意外と直だな! とディアの返答にフェルはちょっと驚いてルナに視線をやると彼女はただ笑みを浮かべて頷いた。


「コホン……魔力を使い尽くせばいいさ」


「なんか適当だな……本当にそれでいいのか、ルナねぇ?」


「ええ。魔力を使い尽くすということは精神を追い込むということよ」


 精神は筋肉と同じく、限界まで追い込めばそのうち成長して強くなるのだ。そして魔力は精神に反映されるから精神が強くなれば魔力量は増える。


「そういう事だ。さあルーンブレイカーを使え! ファイアボール!」


「ちょ、待って!」


 フェルは凄く気合いを入れてその後ひたすらファイアボールをディアに投げ続けた。



 さっきまで睨まれていたことに対して思う所はあるに違いない……。







「う、うぅ……だるい……」


 数時間後、食卓でディアは首を前に垂れて力なく呟いた。


「彼女どうしたの?」


 そんな彼女を不思議そうに見ているレイアはルナから説明を受けて、フェルに視線を投げた。


「……ま、まあそれより朝食だ」


 彼女の視線から逃げたフェルはそう言って、彼と一緒に他の連中もそれぞれ手を合わせてから食べ始めた。


「ところでドライアード、森の方はどうだった?」


 フェルたちがルーゼンに行っている間、ドライアードは精霊たちのために森の様子を確認していた。


「はい、問題ありませんでした。規模は幻想の森より小さいですがちび達は気に入ったようです」


「モンスターの方はどうだった、りゅうじぃ?」


 フェルの屋敷は森の中にあると言ってもまだ森の周縁だ。お陰でモンスターはいない、いても近寄らないのだ。彼が知りたいのは知り尽くした屋敷の付近ではなく、森の奥の方だ。


「相当なのはいるぞ? もちろんワシに及ばんがのう、フォッホッホ」


 一体何がいるんだ? と気になった気持ちより食堂にいるみんなはりゅうじぃの凄い自信に呆れた。


「……と、とにかく忙しくなるからしばらく戻らないんだが、行きたい所あったら送ってやるぞ?」


「え? 帰ったばかりなのにもう行くの?」


 爺を無視してフェルはそう言うとレイアは驚いて、そんな彼女をフェルは無言で見つめている。


「な、なに?」


「いやあ、まさかあのレイアがもっと俺と一緒に居たいとはなぁ」


「なっ! 誰もそんなこと言ってないでしょう!?」


 と、フェルに揶揄われたレイアの顔は真っ赤になるまで怒って否定した。


「分かったから落ち着けって。とにかく、ギーフに行った時いくつかの問題が迫って来てるのは分かった」


 女王からの情報なのだ。


 中には数ヶ月後やってくるレヴァスタ王国の者たちとか、アンナとマセリア帝国とか、どれもフェルの頭を痛くする問題だ。


「んで、今回の外出はそれらを歓迎(・・)するための準備だ」


 忙しいんだよなぁ、とフェルはうんざり気持ちになった。


「とにかく、やることが多いから明日から忙しくなるんだ。その前に行きたい所あったら送ってやるよ? 一方通行だが」


 しばらく戻らないから、ある意味一方通行だな。


 しかし全員首を横に振っている!


「……お前ら暇人だな?」


「失礼ね」


「別にやる事がないわけじゃありませんわ」


「行く所がないだけです」


「行く必要ないからな」


 と、フェルの言葉にレイアたちは抗議した。


「あー、はいはい……それとドライアード、悪いが付いてきてくれないか?」


「「「え?」」」


 適当に彼女たちをあしらったフェルはドライアードを見てそういうとレイア、ルナ、そしてアンナはまるで時間が止まったかのように一瞬固着してしまった。


「な、ならわたくしも行きますわ」


「あ、あたしも!」


「ふ、二人ともちょっと落ち着いてください!」


 テーブルに身を乗り出しているレイアとアンナにルナは慌てて宥める。


「い、いや、今回お前らを連れていけないんだが」


「なんでよ!?」


「色んな所に行くつもりなんだよ」


 転移で行くつもりだからもし彼女たちを連れて行ったらフェルの魔力が持たないだろうな。


「それにドライアードとしかやれない事があるからお前らを連れて行けないんだよ」


「「そ、そんなぁ〜」」


「ふふふ、残念だったな」


 胸を張ってドヤ顔しているドライアードは肩を落としているレイアたちを煽る。


「いや、そんな安い煽りは効くわけがーー」


「く、くぅ! うらやましいですわ……!」


「ド、ドライアードさま〜」


「めっちゃ効いてる!!!」


 実に羨ましそうな眼差しで二人はドライアードを見ている!


「「フェル(さん)!」」


「な、なんだ?」


 と何もしないのにレイアたちに睨まれているフェルは身を引いてしまった……。


「大丈夫です、王! 私がいますから!」


「あ、ああ」


 隣に座っているドライアードに腕が絡まれるフェルは頷いた。


 しかしそれは罠だった。


「「「フェル(さん)」」」


「え? あっ!」



 フェル、全然学習しない男である……。

フェル「ダルミアアアアァァーー」

ダルミア「……よし、逃げられたね」

レダス「お前なぁ……」


よかったらぜひブックマークと評価を。

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