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勇者? 人違いです  作者: Adhen
51/128

51。幕間 魂が抜けちゃいましたわ

2025年6月22日 視点変更(物語に影響なし)


 フゥオオォォォ!


「ままま待ーーうわあああああ!」


「きゃはは! しゅごーい!」


 ルーゼン第一研究所の周りには研究者達が自分の成果を展示(てんじ)する場所がある。


 用事が大体済んだ頃に、ソフィマを連れてフェルたちはそこに行ったのだ。


 そしてフェルとソフィマは今展示されている物の一つに乗って、上空へすごい速さで持っていかれている。


「あの、本当に大丈夫ですか?」


 ルナは心配している表情で上空にいるフェルたちを見ている。


「はい! 私達の〝コースター〟は安全第一と肝に銘じておりまーー」


「ぎゃああああーー」


「「「……」」」


 発明家の代表はそんなルナに安心させる為の言葉を言おうとした時、遠くからフェルの悲鳴が聞こえた。


「そういえばフェルさん、高所恐怖症でしたっけ? 本人は認めませんけど」


「「あ」」


 あー、前に指摘されることあったけどアンナの言う通り彼は認めなかった。


 おかげでみんなすっかり忘れてしまったよ。


「あいつが? この前数十メートルくらい跳んだぞ?」


 当然そんな事知らないディアは信じられないという顔で戻ってきているカートを見ながら言った。


「あら? 魂が抜けちゃいましたわ」


 そしてカートの中には蒼白(そうはく)な顔面のフェルとはしゃいでいるソフィマ、というすごく対照している二人がいた。


「おっしゃん! もういっかい!」


「……っ! あ、ああ!」


 すごく元気なソフィマの掛け声に正気に戻ったフェルは引き攣った笑顔で頷いて、可哀想にと女性陣は思って変わってやりたいけどーー


「ソ、ソフィマちゃん、今度お姉ちゃんと一緒に乗りましょうね」


「やっ! おっしゃんがいい!」


 これである。


 優しいルナの申し入れでも断られたのだ。ソフィマは今日やけにフェルから離れたくない、今でさえもフェルの腕を抱き着いているブンブンと頭を左右に振っている。


「い、いいんだ、ルナ」


「あ、あのー、よろしいのですか?」


「ああ、頼む……」


「で、ではベルトをーー」


 心配している発明家に促されて、フェルはソフィマのベルトを締め直したあと自分のもした。


「フェル……あんたのこと決して忘れないわ」


 と、レイアが。


「お、おいーー」


 シュウウゥゥゥゥゥ。


「今までありがとうございます……」


 そしてルナが。


「待てーー」


 ウウゥイイイィイィィイン!


「フェルさん……よよよん」


 最後にアンナが言った。


「勝手に人をころーー」


 ボオオウウゥゥゥ!


「すあああぁぁぁああーー!」


「きゃっきゃっ!」


 カートは凄い勢いで発車して、フェルの悲鳴とソフィマの楽しそうな笑い声が瞬く間に遠くになた。


「「「くす……」」」


「……お前たち、本当に彼を愛してるのか?」



 嘘泣きしているレイアたちにディアは呆れた。







「おっしゃんだいじょうぶ?」


 数回くらいコースターを乗ったフェルとソフィマは休憩所のベンチで休んで、ぐったりとしているフェルの膝の上に座っているソフィマは心配そうな顔で彼を仰いでいる。


「だ、だいじょう、ぶ……今夜、寝れないくらいだ……」


「あー、怖くて眠れないって事だな」


「……それ全然大丈夫じゃないからね」


 ディアとレイアは半眼でフェルを見る。


「お疲れ様でした。皆さんもどうぞ」


 飲み物を買っていくルナは戻って、みんなに配った後ソフィマを抱き上げた。


「休憩しましょうね〜! はい、あーん」


 お菓子を食べるソフィマは嬉しそうに尻尾を揺らしていて、ルナからお菓子を貰った。


「おっしゃん、あーん」


 そしてぐったりしているフェルに差し出す。


「ありがーーん?」


「あーん」


 距離があるためソフィマの手が届かないからフェルはお菓子を取ろうとしたけど、彼女は素早く手を引き込んだ後、再びお菓子を差し出す。


「ふふふ、ソフィマちゃんったら」


 意図に気付いたルナはちょっと前へ屈んで、ソフィマの手をフェルに届かせた。


「おいしい?」


「ああ、美味しいぞ」


 お菓子を食べて、ソフィマの頭を撫でると彼女は嬉しそうに笑って、それを見ているルナとフェルは微笑む。


「ーーはっ! こ、これは! 何といい家族でしょう! 負けていられませんわ!」


「せっかくいい雰囲気だったのに……」


 羨ましくて素早くお菓子を手にしているアンナにレイアは呆れた。


「フェルさん! はい、あーん!」


 そんな彼女たちの視線に全く気にする事なく、アンナは早足でフェルに近付いて彼の口にお菓子を近付かせる。


「ん? あ、ああ」


 突然の事で何も考えずフェルは素直にお菓子を食べた。


「どうですの? 美味しいですの?」


「あ、あー、うん、美味しいよ?」


 ウキウキしているアンナにフェルは戸惑っている。


「はうぅ! わ、私の手からのお菓子がーー」


「はいはい、バカな事言わないで」


 アンナをほっといたら暴走しかねない、危険だと分かったレイアは素早く彼女をフェルから遠ざけてーー


「ちょっと何していーーん!? もぐもぐ……」


 抗議をしようとしているアンナにルナは近付いて、ソフィマに彼女の口にお菓子を押し込んでもらった!


「おいしい?」


 無邪気な問い掛けににもぐもぐしながらアンナは涙目で頷いた……。


「何やっているんだ、お前たち……」



 カオスだった。 







「すぅー」


「寝てしまったのか……? あんなにはしゃいでて当然か」


 思う存分に遊んでいたソフィマは今フェルの腕の中にいびきを立てている。


 休憩が終わった後、フェルたちは日が暮れているまで魔力測定器とか、魔力を自動的に変換する機械とか、色んな展示物を見て回って遊んでいた。


「ソフィマちゃんったらフェルさんの魔法を見るたびにはしゃいでいましたわ」


「本当、何がそんなに面白かったか分からないわ」


 展示物の中に魔力に色を付ける機械があったけど、フェルは機械を使うより自ら魔力を水に変換し魚の形に変えたのだ。


「何言っているのですか? あれはすごく巧妙な魔法の使い方でしてーー」


「あー、はいはい、ルナねぇは落ち着いて」


 魔法の発動者ではなく、魔法を見ていた人、ルナはレイアの言葉に反応して暴走しかけている彼女を見てディアは宥めに入った。 


「っていうかあの時他の見物者もはしゃいでいて、結構騒がしかったね……」


「大変でしたわ……」


 あー、機械よりフェルの魔法の方が面白くてインパクトがあるからな。


 衛兵まで来たのだ。


「いやぁ〜すまんすまん」


「あんたね、自重って言葉知らないの?」


 ははは、と快適そうに笑っているフェルにレイアは呆れている。


「まあいいじゃねぇか? ソフィマは楽しんでただろう?」


 フェルはソフィマに色んなことを見せて、体験させたかったから連れてきたのだ。その過程で他人に迷惑掛けたり、困らせたりするかもしれないけど、それは二の次だ。


「どうしてそんなにフェルさんに懐いていますの……? そういえばダルミアさん達との出会いの話まだ聞いていませんわね」


「確かに気になるね。どうなの、フェル?」


 まあ、ソフィマがこんなにフェルに懐いている理由はそこにあるかもしれない。


「お? 何だ? 聞きたいか? 聞きたいだろう?」


 しかし自分のことをあまり話さないフェルの事だ。教える所か逆にニヤニヤしながらわざとレイアたちを煽ってーー


「ふ、二人共落ち着いてください!」


「は、放して、ルナさん! こいつのニヤニヤ顔潰すわ!」


「そうですわ! 見過ごせませんわ!」


 ーー容易くその挑発に乗った彼女たちは彼をボコボコにしようとしていて、ソフィマを抱えている今、そんなのさせる訳がなくルナは彼女たちを背後から纏めて捕まえた!


「ははは! 教えない! べえぇっ!」


 動けない彼女たちにフェルは舌を出して更に挑発した!


「フェル? あなたもいい加減にしなさい」


「あ、はい、すみませんでした」


「ざまあみろ! べえぇっ!」


 直ぐ様にルナに注意された彼は瞬時に謝って、それを見たレイアは嬉しそうな顔で逆に挑発して舌を出した!


「……お前たち、本当に愛し合っているのか?」



 目の前にある状況を見て、ディアは溜め息を吐いた。

アンナ「はう〜この手決して洗いませんわ〜」

レイア「洗ってよ!」

アンナ「いやですわ! この手はフェルさんが食ったクッキーのーー」

レイア「洗って!」


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