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勇者? 人違いです  作者: Adhen
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49。どこを触っているのですか!?

2025年6月16日 視点変更(物語に影響なし)


「んで? ディアを連れて行きたい、と?」


「はい」


 ディアを軽い尋問したその日の夜、宿での女性陣の部屋にフェルたちは集まってガラステーブルを囲んで座っている。


「……どう思う?」


 帰ってきたルナの要望にフェルはちょっと難しい顔になってアンナに問いかけた。


「そうですわね……この件について何も言えませんわ、相手は知りませんもの」


 まあ、会った事ないからな。


「レイアは?」


 次にフェルはソフィマを自分の膝に乗せて抱いているレイアに話を振ると、彼女は難しい顔になった。


「……正直言うとあたしあまり賛成できない」


「レイアちゃん……」


「ほう? 理由は?」


 レイアのその答えを聞いて悲しい顔になったルナを無視して、フェルは先を促した。


「ルナさんはともかく、彼女はレヴァスタ王国の手先かもしれないのよ? どうもレヴァスタ王国の人間には信用できないのよ」


 まあ、レイアは元々レヴァスタ王国を信用していない。それに彼女はレヴァスタ王国がやった事と幻想の森の事件の真実を知っているから、なおさら信用しないだろう。


「な、なによ?」


 じーっと目でフェルに見つめられているレイアはたじろいだ。


「いや、レヴァスタ王国の人間のお前が何言ってるんだと思ってるだけだ」


「何よ? 別にいでしょ?」


「まあ、いいけど。それよりレイアに賛成だ、目的が分からないーー」


「目的なら分かります」


 遮って、ルナはさらに続ける。


「私を探していたのです」


 そのくらいならフェルも知っている。


「死んだはずのお前を?」


 彼が知りたいのはその理由だ。なぜ戦死と認定されたルナを探していた、と。


「はい。幻想の森で私の死体が見つかりませんでしたので、まだ生きていると信じて私を、あなたを探していたのです」


「なるほど、だからあの時俺のところに来たのか」


 死体を残すべきだったなあ……と納得する同時にフェルは後悔した。


「……まあ話は分かった。彼女は今どこに?」


「宿のロビーにいます」


「呼んでくれないか?」


「はい」


 頷いて、ルナは部屋を出る。


「二人とも、すまないがソフィマを連れてしばらく街で過ごしてくれないか?」


「うん?」


 ソフィマは首を傾げてフェルを見る。


「ソフィマ、お姉ちゃん達と一緒に夜の街を堪能したいか?」


「言葉!」


 立ち上がってソフィマの頭を撫でながらそう訊いているフェルにレイアはツッコんだ。


 まあ普通に言葉選びのミスだな!


「うん! したい!」


「よろしいですの?」


 いい返事をもらって、フェルはアンナに頷く。


「はぁ……昼みたいにやりすぎないようにね」


「見たのか?」


「あれほど魔力を放ったのよ? 商会の上空は暗かったのよ」


 魔力を目視できるレイアは昼に何があったかは知らないものの、誰がやったかは知っている。


「……気を付ける」


「うん。じゃあ行こう、アンナ」


「ええ、ではフェルさん、一時間後で戻ってもよろしいですの?」


「ああ、ありがとう、そうしてくれ」


 フェルがしようとしていること分かっているレイアとアンナは彼の願いを聞き入れた。


「おねえちゃん、どこいくの?」


「そうね、食べ歩きでもしよっか?」


「ふとーーなんでもありません!」


 こんな時間食べ歩きしたら太るに違いないと常識で注意しようとしたフェルだったけど、女性陣に睨まれて反射的に誤った……。


「ソフィマちゃん、夜の街はどんなものか気になりませんの?」


「だから言葉!」


 流石フェルの女性型! 言葉選びが全く同じ!


「うん! きになりゅ!」


「それじゃあ北の商店街(しょうてんがい)にいい屋台がーー」


「いや、北はさすがに遠いぞ……?」



 彼女たちの会話を聞いていながらフェルはちょっと引き攣った笑みで三人を見送った。







 コンコン。


「入れ」


「……? ディアを連れてきました」


 部屋にレイアたちがいないことに気になるルナは首を少し傾げた。


「ああ、二人とも座ってくれ」


 そんなルナを無視して、フェルは席を勧めた。


「さて、話はルナから聞いたが、もう一度確認させてもらう」


 真っ直ぐディアの目を見ているフェルは少し間を置いたあと彼女に質問を投げた。


「お前の目的はなんだ?」


「っ!」


 高密な魔力と共に放たれた言葉を受け止めたディアはこわばった顔になった!


「フェ、フェル……」


「……さあ、答えろ」


 頭を右手で押さえているルナをチラ見して、フェルはディアを促した。

 

 魔力に敏感なルナは可哀想と思っているフェルだけど、全ては彼女自身の安全だと自分に言い聞かせて心を鬼にした。


「……!」


「……さあ、答えろ」


 しかしディアは何も答えてくれない!


 なぜならーー




(そう言われても答えないだろう!? 喋れないんだよ!)

 



 そういうことだ。


 身動きを一つも取れない状態下で話せるわけがない。


 しかしフェルはそれに気付いていなくてディアに圧をかけ続ける。


「フェ、ル……」


「はぁ……」


 そして息苦しく自分を呼んでいるルナを見て、フェルはしばらく黙ると溜息を吐いた。


 その瞬間、部屋を支配している威圧感は消えた。


「んで? 答えは?」


「はぁ、はぁ……あ、姉を探していた、だけだ」


「……」


 その答えにフェルはしばらくディアの目を見て、目を閉じる。


「……いいだろう」


「あ、ありがーー」


「だが!」


 許可が下され、ディアはお礼を言おうとした時フェルは再びは目を開いてさらに続ける。




 パッチン!




「きゃっ!」


 彼は指パッチンした瞬間、ディアの隣に座っているルナは消えて、彼の両腕の中に現れた!


「ル、ルナねーー」


「こいつを悲しませることをしてみろ! それがお前の最期となる、いいな!?」


「ーーっ!」


 強く、まあ、魔力を込めたからそりゃあ強いけど……とにかく! 強くそう言ったフェルに睨まれているディアは息を呑んでしまって、同時に彼は本気で姉の事を思っていると理解した。


「フェ、ルさん……」


 そして姫様抱っこされているルナは赤面でフェルを見ている。


「あー、悪い悪い、最後の確認をしたーー」


「ーーっ! バ、バカ! 何魔力を放ったのですか!? おろしてください!」


 格好良く笑みをルナに見せるつもりだったけぞ、フェルが威圧を消した瞬間彼女は素早く平手打ちして暴れ出す!


 そのせいでルナを支えるために彼女の脇の少し下に配置されているフェルの手は少しずれてーー


「ちょ! どこを触っているのですか!?」


 彼女の豊富な胸に当たってしまって、代わりの平手打ちが放たれた!


「いたっ! ま、待て、今のはお前のせいだろう!?」


「いいから早くおろしてください!」


 一応フェルは抗議を試みたけど、ルナはそれを許すはずがなく更に暴れ出した。


(さすがに今はルナねぇが悪いんだよ……)


 ディアもルナのせいだと思っているけど、あえて口にはしない。


「いてぇ、だがさっきの感触幸せだ……けどいてぇ……」


 ルナをおろして、右手を開閉(かいへい)しているフェルは忙しく表情を変えている。


「ル、ルナ! どうしよう!? 感触がーー」




 パシン!




 また平手打ちが放たれた!


「いいってええぇぇ! 何すんだーー」


「バカですか!? バカですね!」


 顔を真っ赤にして自分の身を抱いて距離をとるルナ。


「……」


 そんな姉の姿にディアはただポカーンとしている。


「お、落ち着け! さっきは事故だ! 後で改めて感触をーー」


「させるわけないでしょう!? レイアちゃんに殺されたいのですか!?」


 言いつけますよ!? とルナは脅しをした!


「ま、待て! 頼む! それだけ勘弁してくれ!」


 その効果は抜群だ!


 レイアの名前を聞いたフェルは素早く頭を下げて頭上に両手を合わせたのだ!


「……一体どんな人なんだ?」


 とそんなフェルを見て、ディアは小さく呟いた。


 あのフェルを脅かせるほどの人だ、ディアは気になっても仕方がない。



 その後も二人の騒ぎはしばらく続いて、最後にフェルはルナの言うことを一つだけ何でも聞いてあげると約束した。

ルナ「レイアに言いつけますね!」

フェル「……じゃあ触らせろ!」

ルナ「な、なんでですか!?」

フェル「どうせ殺されるなら最後に幸せな気持ちになりたい! さぁ、触らせろ!」

ルナ「い、いやああぁぁ」


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