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勇者? 人違いです  作者: Adhen
43/128

43。マジかあああぁぁぁ!?

2025年6月7日 視点変更(物語に影響なし)


「全員、止まれ!」


 ディアがフィリーたちと無事合流出来てから約一ヶ月間が経った。


 避難者は沢山いるだけあって、移動に時間がかかったけど彼らは順調にレヴァスタ王国とエンダール王国の国境(こっきょう)まで進んだ。


 途中で補給(ほきゅう)するためにいくつかの町と村を訪れて、そこで何人かの避難者は滞在することに決めたから、最初より今の人数は少ないのだ。


 そんな集団の陣形の先端を任されたディアは突然指示を出した。


「人が倒れてるね……」


 ディアの背後からフィリーは呟いた。


 周囲に茂みと木々があって、フィリーの言う通り道路の真ん中には一人ボロボロな服を着ている男が倒れている。


 それを見たディアはーー




「全員、戦闘準備だ! 戦える奴は陣形の外側へ! 子供、女性と老人は真ん中に隠れろ! 早く!」




 彼女の的確な指示に従い、全員は予め用意した作戦通りに動いた。


「ようわかったな、嬢ちゃん」


 その声と共に一人の男は道端にある木の後ろから出てきた。


「……間抜けな演技でよく言うな」


 左目に傷跡があって、大剣を背負っているその巨体を見て男は普通の盗賊ではないとディアは悟った。


「ハッハッハ! 間抜けだってよ?」


「ひでーなぁ、おぉいーーお? 別嬪さんだな、ヘッヘッヘ」


 倒れるふりをしている男は立ち上がって、ディアを見るといやらしい笑みを浮かべた。


(男って、それしか考えないのか?)


 それは違う。ディアの場合男に運がないだけだ。


「どーしたぁ? 怖えか、えぇっ? ヒッヒッヒ」


「ボス! 後ろにいる女もかわいいぞぉ!? こりゃあいい獲物だ! ヒャハハ!」


 他の盗賊も茂みや木の後ろからぞろぞろと出てきた!


(どうする?)

 

 人数的にはほぼ同じだけど、戦える者は圧倒的に少ないディアたちにとってこの状況は良くない。


「ぎゃあっ!」


「きゃあ! あ、あなた!」


 とディアは頭をフル回転して策を考えていると陣形の中心から突然悲鳴が聞こえた。


「投げナイフよ! あの木の上から!」


「盗賊のくせにっ! シッ!」


 フィリーが指差した左前の木の上に一人の盗賊は上手く身を隠していたけど、ナイフを投げたせいで木が少し揺らいで、ディアは直ぐに盗賊の位置を捉え、素早く魔法ポーチからナイフを取り出して投げた!


「ぐうああぁ!」


「ちっ! かかれっ!」


 その盗賊が木から落ちて動かなくなった同時に、盗賊達は一斉に襲ってきた!


「まずい! 避難者たちをーーっ!」


「おいおい、舐められたもんだな!」


 気が逸らされたディアの右側から盗賊たちの頭である大きな男は接近して大剣を振るう!


「ーーなっ!」


(ーーっ、今のは!?)


 ちょうどその時二人は激しい目眩に襲われて、攻撃を中断した盗賊頭はディアから距離を取った!


「何者だぁ!? ただの女じゃなえぇな!」


(勘違いしているっ!?)


 しかしディア本人も今の現象の原因について心当たりはなく、盗賊頭が勘違いしている事にすぐ気付いた彼女はその状況を利用する事にした!


「今なら見逃してやる、さっさと去れ!」


「けっ! こっちは人数が揃ってる!」


 威嚇されて引くかと思ったディアだったけど、それは間違いで逆効果になった!


「魔剣グランドブレイズ、我が敵を焼きーー」


「〝魔剣〟だと!? させるか!」


 魔剣というのは魔法を秘めている剣の事だ。特定のキーワードを唱える事でその力を発動できて、今盗賊頭がやろうとしているのはまさにそれだ。


 盗賊頭が高く掲げている魔剣はどんな力を持っているかディアは知らないけど、フェルとの戦いまで魔剣を使っていた彼女はその脅威を充分理解している。


 だから盗賊頭がキーワードを言い終える前に彼女は攻撃を仕掛けて邪魔したのだ。


「くぅ! やるじゃねえか!」


「驚いたな、私の攻撃を防げるとは!」


 しかし盗賊頭もかなりの腕持ちで、ディアの高速技、一閃をギリギリ大剣で防いだ!


「ヘッ! だが迂闊したな! 野郎ども、好機だ!」


「「「ヒャッハー!」」」


「しまった!」


 魔剣の発動を阻止したものの、陣形の先端ががら空きになった!


「おっと、背を見せていいのか!? そらぁ!」


 陣形に走って戻ろうとしいたディアの背中に盗賊頭は切り掛かっている!


「っ! ミラージュ!」


 もはや普通の回避は間に合わないと分かったディアは一瞬で身体の速度を上昇する魔法、ミラージュを発動して盗賊達をすり抜けて陣形に戻った!


「ディア!」


「はあ……だ、だいじょう、だ……ルーガンたちは?」


「後方で盗賊の相手をしてる!」


 無事戻れたけどその代償は決して安くない! 今のミラージュでディアの体力と魔力はガッポリと持っていかれたのだ!


(このままだとーー)


「ディア! あいつ(・・・)が来るまで持ちこたえて!」


 全滅の未来しか待っていないとディアは思っているとネアは後方から叫んだ。


「みんな! 守りを固めろ!」


 そして彼女に続いてルーガンは避難者たちに指示を出した。


「はあ……ふぅ……そう言われても……」


 こんな何もない広い草原の近くに町はもちろんだけど、村もないからネアたちの行動は無意味だとディアは思っている。


「ハッハッハ! 無駄無駄! 助けなんて来ねぇんだよ!」


 盗賊頭もそれを分かってこの場所で待ち伏せをしていたのだ。


「魔剣グランドブレイズ、我が敵を焼き尽くせ!」


「……下がれっ!」


 魔剣のキーワードが唱え切られた!


「これで終わりだ! おおおおりゃあああああ!」


 勝ち誇った顔で盗賊頭は炎に纏っている大剣を高く掲げて叫んだ後、それを左腰の前にもって、左から右へと全力で薙ぎ払った!


「ううおおぉ! やべえー! 逃げろ!」


「お頭に焼かれるぞぉ! いそげえええぇ!」


 赤い波が現れてディアたちに迫って来ている同時に、陣形の近くにいる盗賊達は素早く離れた。


(まずい! ルーンブレイカーでは消しきれない!)


 魔法を打ち消すディアの技は小規模の魔法にしか効かないから、今迫っている大きな波をどうこうする事は出来ないのだ。




「アースウォール!!!」




 どうするとディアは考えていると突然数メートル先に土壁が現れた。


 ドゴーン!


 火の波が壁にぶつかると大きな音がして同時に壁に亀裂が入った!


「ネア! もう一回だ!」


「む、むり〜! 魔力はもうーー」


「いいからやれ!」


 そう。土壁を作ったのはいつの間にかディアの後ろまで来たネアだった。


 そして彼女と一緒に来たルーガンは壁が壊されるのが時間の問題だと悟って、無理とわかっても彼女に同じ魔法をもう一度やれと命令した。


「もう〜! アースウォール!!!」


 流石にネアもまだ死にたくないから、渋々しながらも彼女は木から出来た杖をルーガンに預けて、両手を壁に突き魔法を発動ーー




「……あ、あれ? 不発?」




「マジかあああぁぁぁ!?」


 ーーしなかった!


 両手を突いているまま首を傾げたネアに対して、ルーガンは杖を投げて彼女の両肩を掴め、彼女を揺さぶる!


「しししし仕方ないいいぃぃもおぉん! まま魔力がががが足りないいぃいぃのぉ〜!」


 ドゴーン!


「あんたたち緊張感ないのか!?」


 ルーガンたちを見てツッコミを入れたディアは亀裂がますます大きくなっている事に焦りを覚えた。


「まだ来ないのか!?」


「分かんないよ! あいつの魔力なんて感知できないでしょう!?」


 しかし当の二人はまだ言い合っている!




 ドゴーン!




「フィリー! 私の後ろに!」


 そして三度目の衝撃! 壁はもう破壊される寸前! 


 せめてフィリーだけ助けたいと思ってディアは彼女の前に立ってルーンブレイカーを使うつもりだったけどーー


「フィリー!?」


「ーーーー」


 フィリーは全く微動だにせずただ俯いていて何か呟いている。


「フィリー! はやーー」




 ドッカアアアン!




 そしてついに壁が破壊され、火の波は壁の瓦礫と共に彼女たちを呑み込んだ!

盗賊頭「オラオラオラオラー!」

盗賊A「お頭、メッチャ気入れてね?」

盗賊B「ああ〜また収穫なしか……」

盗賊C「品物が焼かれてるぅ!」


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