32。男は誰でも惚れるだろう?
2022年8月22日 マイナー編集
2025年4月26日 視点変更(物語に影響なし)
翌日、フェルたちは女王と国のお偉いさんたちと謁見するために謁見間にやってきた。
「今回の訪問は幻想の森の件か?」
王座からそう訊いた女王は足を組み直して、ひじかけに頬杖をする。
「……」
「フェ、フェル! 跪かないの!?」
国の一番偉い人の前にただ突っ立ているフェルの右に跪いているレイアは青白い顔で囁いた。
「見えそうなんだよ……」
「……こんな場所までそんな事を考えているのですか?」
その行動の理由を聞いた彼の左に跪いているルナは呆れた顔で彼を見上げる。
「いや、これ、気を遣ってるんだよ!」
人の善意を何だと思ってる? 見たいな顔をしているフェルに彼女は更に呆れて溜め息を吐く。
「コホン! いいのだ、他の二人も楽にして構わない」
ひそひそ喋ってるフェルたちにわざとらしく咳払いで女王は遮った。
「えっと、そうだな、それもあるんだが一番重要なのはここにいるルナ・エアネスの事だ」
ざわざわ! とルナの名前を聞いた瞬間、待機しているお偉いさんたちはざわめく。
「他国の一魔法使いをここに連れてきたとはな……」
「お前、けっこう有名だな」
と女王の視線を受けたフェルはそのままルナを見る。
「この部屋にいる者全員知っているだろう」
え? マジで!? と驚いたフェルは謁見間を見渡して頷いているみんなを見て本当にそうだと納得してーー
「……」
「……」
レイアに目が止まってしまって、二人はしばらく見つめ合っていると彼女は赤面になって顔を背けた!
(こいつ知らないぞ!)
よかったな、フェル! 同士がいて!
「え、えっと、ルナはレヴァスタ王国にどう扱いされてるか聞きたい」
「知ってどうする?」
「何も? 彼女自身が決めることだ」
他人の人生をどうこう言える立場じゃないからな、とフェルは加えた。
「……良かろう。ジェーナ!」
「はっ! よろしいのですか、女王様?」
女王の呼び声に答えて、短い茶髪の女性は左のお偉いさんたちの列から出て確認を取った。
「ルナ・エアネスは幻想の森の事件で戦死と認定されました」
女王に頷かれた後、彼女の翠色の瞳がルナをとらえて、ジューナ・カシュははっきりと告げた。
「……」
「……確かなのか?」
「はい、確かです」
そのニュースを聞いて黙ってしまったルナの代わりにフェルは確認するとジューナは彼に向いて頷いた後、さらに、と続ける。
「事件の原因はフェルという一人の男だと披露しました」
「なるほど……」
ジューナ・カシュはロダール女王国の情報部隊の隊長だ。彼女の事を知っている事もあるけど、彼女の肩書きと能力を信頼しているからフェルは今の情報を信頼する事にした。
「……ふふ、レヴァスタ王国のやり方らしいですね」
それらの情報を聞いたルナは頭を垂れて力なく呟いた。
「指名手配は?」
「もちろん出ています」
「大罪人じゃねぇか……」
一つの大森林、そして無数の命と市町村の消滅の原因とされているから、そりゃあ大罪人だろうな。
「数ヶ月後レヴァスタ王国から使者が訪れるだろう」
「……」
女王の言葉を聞いて、何でロダール女王国にいる事が向こうにバレてる? とフェルは疑問を覚えている。
レヴァスタ王国みたいな大きな国が遠い所に、遥か大陸の北にあるロダール女王国みたいな小さな国を訪れる事は大事な用事、要件がない限りまずないのだ。
そして今この場で女王はその国の使者が来るだろうと予言したから、自分に関係があるだろうとフェルはある程度確信を持っているけど、その理由が思いつけない。
「身分証だ、フェル」
黙って考え込んでいる彼を見て、女王は告げた。
「そうか、門番に身分証を見せたしなぁ……迂闊だった」
ミシーの門番に身分証を見せたから、その時の記録があるのだ。
「フェル様をレヴァスタ王国に引き渡したら国際問題を回避できますがーー」
「内乱が起こるぞ、プリム」
右の列からメガネをかけるミディアム黒髪の若い女性、プリム・セー・ナディセラは話に割り込んだ。
「はい、我が国の勇者を犯罪者扱いすると民は黙っていられないでしょう」
メガネを右手の中指で押し上げたプリムはフェルに視線を動かした。
「……なぁ、ジューナ、使者は必ず来るだろうな?」
「すでにこっちへ赴いています。部下の報告によると四ヶ月後に着きますね」
「案外早いな……」
ロダール女王国とレヴァスタ王国の間にかなりの距離がある。
この世界の現在最速移動手段である馬車でさえも半年くらい必要なのに、レヴァスタ王国の使者はそれをたった四ヶ月に絞るつもりだ。
よっぽど急いでいるだろう。
「メンバーは?」
「勇者三人、騎士数十名です」
まるで戦争布告しに来るような構成にフェルは思わず頭を抑えたくなった。
でもそれ以上にーー
「よかったな、ディアはその中にいないようだぜ」
隣にいるルナにこのいい知らせを伝える方が彼にとって重要だ。
「っ……! そう、ですね」
笑顔でその朗報言った彼にルナは一瞬驚いて、目を伏せて笑みを浮かべた。
「さて! プリム、宰相のお前ならどうする?」
「そうですね……フェル様はこの国の者ではないと証明すればいいじゃありませんか?」
「あー、それは無理かな」
当然だ。フェルはミシーで使っていた身分証はロダール女王国の女王直々発行された物なのだ。
分かる人には分かるだろう。
「まあもっとシンプルな方法あるぞ?」
「ほう? 聞こうじゃないか、フェルよ?」
さっきも言ったけど、フェルは既にいくつのアイデアを思いついて、それに対して女王は興味深そうに反応した。
反応したけどーー
(いや、お前心を読めるからもう分かるだろう?)
(こういうのは大事よ、フェルさん)
(あー、はいはい、分かってるよ)
「どうした、フェル?」
お前、演技うまいな! と恨めしそうな眼差しで女王を見ているフェルは咳払いした。
「……ならこれはどうだ?」
そう前置きして、フェルは自分の考えを言った。
▽
コンコン。
「フェルだ、アンナを連れてきたぞ」
「入って」
謁見が終わったその日の夜、女王の命令によってフェルはアンナを連れて彼女の私室を訪れた。
「……なあ、アンナ、母に学んだ方がいいんじゃないか?」
「……趣味じゃありませんけど、フェルさんがこんなのが好きでしたらそうしますわ」
大きな部屋に入った二人の視界に入ったのは女王の姿だった。
女王の姿なのだがーー
「いや、このような透け感があるレースランジェリーを見せられたら男は誰でも惚れるぞ?」
現在女王は白いレースランジェリーを着ていて、白い下着が丸見えだ。
優れた美貌といいプロポーションの体を持っている女王の下着しか来ていないことにほぼ同じ状態の姿だ、フェルにとって、いや、男にとってかなりの眼福だ。
「うむ、ナイスボディ!」
体に自信があるからこそ大胆なものを着ているのだろう、女王は。
「むぅ……」
「あら〜拗ねちゃったね」
ぐっ! と親指を立ててすごい笑顔を浮かべているフェルを見てアンナは自分の母親に嫉妬していて頬を膨らませた。
「それより、こんな時間でどうしたんだ?」
さっさと要件を済ませて部屋に戻りたい、それがフェルの今一番やりたい事だ。
……女王のあの動くたびに揺れるモノの迫力が半端ないのだ!
「ええ、とりあえず座って」
勧められたソファーに腰をかけるとアンナはフェルに密着するように彼の側に座った。
「あのなぁ、他の席あるだろう?」
別に密着して座る必要はないんじゃない? という顔をしているフェルに対して女王はーー
「その調子よ、アンナ」
「母親が何言ってんだ?」
自分の娘を激励している。
「まあまあ、いいじゃない」
呆れるフェルの視線を何とも思わない女王は咳払いした後話を切り出した。
「実は先日マセリア帝国の皇子が来たのよ」
マセリア帝国とはロダール女王国の東南にある国力が高い国だ。
「昨日フェルさんともめていたガランド皇子の事だよ」
そう、先日のガランドはそこの皇子なのだ。
「……んで? 要件は?」
「縁談よ」
「やっぱりか……」
ロダール〝女〟王国という国はただ女性に君臨されている国ではない。この国には女王はもちろんだけど、使用人まで美女美少女揃いなのだ。
他国からの縁談はもちろん沢山届いている。
だけど女王がわざわざフェルとアンナを呼んだというとーー
「こいつとか?」
「ふえ?」
ポンとアンナの頭に手を置き、フェルは女王に訊いてみると頷かれた。
「フェ、フェルさん……」
今の話初めて聞いたアンナは不安になってきて、フェルを見る。
「うーん……」
そんな彼女の表情を見たフェルは腕を組んでしばらく考えていると結論に出た。
「ならーー」
自分の考えを女王に伝えた後、フェルたちは自分の部屋に戻った。
……ちなみにアンナを自分の部屋に帰すのは大変だった。
アンナ「もう帰りたくありませんの!」
フェル「帰れ! こっちは寝たいんだよ!」
アンナ「ではご一緒させてもらいますわ!」
フェル「女としての自覚を持て!」
よかったらぜひブックマークと評価を。