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勇者? 人違いです  作者: Adhen
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3。魔法使いの天職って穴掘りなんじゃ……

2021年2月20日 マイナー編集

2021年3月20日 マイナー編集

2025年2月20日 視点変更(物語に影響なし)


「うぅ……身体がだるい……」


 数時間後、意識を取り戻して目が覚めた男は身体が重たいと思っていても起き上がって、すっかり暗くなった星々に飾られている空を見ながら彼は思考の海へ旅立った。


(さっきのはたぶん魔力切れってやつだな……)


 魔法使いが自分の魔力を全部使ったら意識を失うという話はファンタジーにはよくあることだ。


 そして男には同じ事起こっていた。


 ファイアボールを発動に成功した彼は全くその魔法をコントロールできなかった、魔法が段々体内の魔力を吸って大きくなったまでだ。


 つまりーー


(魔法が暴走した、だな……)


 そういうことだ。


 そして魔力は精神力に反映されるという説もあって、男は今凄く怠いと感じている。腹が減っているが、あまりにもだるくて飯探しに行く気が男にまったく起きないくらいだ。


(……寝るか)


 そして何もやりたくない男は寝転がって、目を瞑った。


(空腹、痛み、苦労感……夢にも感じるのか?)


 それはないと思いたい、と男は今日自分に起こっていた事、感じていた事を思い返して自分が本当に昏睡状態にあるかないか疑いし始めた。


(リアルすぎる夢、か……もしかしてーー)




 ここで死んだら、本当に死ぬのか?




 という嫌な予感がして男は上半身を起こして頭をフル回転する。


(死んだら終わり。現実だと当たり前だけどここは夢だろう? だけど痛みとか感じれる夢なんてあるのか……?)


 あるかもしれないけど聞いたことない。だけど昏睡状態で夢の中に黄泉(よみ)へ旅立ったら現実にも同じく死ぬという話は良くある、映画にだけどな。


(あまり無茶をしない方が良さそうだな……例えば大木を全力でパンチーー忘れよう、あれは黒歴史だ)


 ここから慎重にやると決めて、昼間に自分がやった事を思い出して急に恥ずかしくなった男は考えをやめて寝ることにした。







「ブヒー!」


「待てぇいー!」


 数日後、男はイノシシもどきを追っている。


 何故〝もどき〟? それはイノシシの頭に二本の角が付いているからだ。それに図体も普通のイノシシよりずっと大きい、男の身長三分の二だ。


 それにーー


「図体の割に速ぇなお前!」


 追っても追いつけれないくらい。


「アイスニードル!」


 数日間を掛けて色んな事を試し、検証そして練習した男は様々な魔法を出せるようになった。


 その一つは今彼が発動しようとしている〝アイスニードル〟だ。


 空気に含まれている水素と酸素の化学反応によって作られた水を氷柱(つらら)の形にして一気に氷結するまで温度を下げる。そして水が完全に氷になったらその氷の後ろに圧縮された魔力を一気に爆発して超高速で氷を飛ばす。


 以上がアイスニードルの原理である。


 男は右手を突き、遥か前に氷の針が現れた直後力強く突き出した手を左から右へ振った!


「ブヒッ!」


 それで氷の針がイノシシもどき……イノシシに直撃したあと、イノシシの動きが段々鈍くなっている。


(あれ……針は?)


 やがてイノシシが倒れて、イノシシの元に掛けつけた男はあるはずの物がない事に首を傾げた。


(あ、やりすぎた?)


 氷結された水を飛ばすための魔力を使いすぎたのだ。そのせいで氷が予想以上の速度で飛んでイノシシを完全に貫いた。


 もし後ろに誰か居たら危険極まらない。


 それに気付いた男はーー


(ま、まあとにかく拠点に戻ろう)


 魔法のコントロールがまだまだ甘いと自覚はしているけどスルーしようと決めて、倒れたイノシシを拠点に運ぶ。



 現実逃避である……。







「あああぁぁぁ! 全く分からん!!!」


 持ち帰ったのはいいものの、処理方法が分からない男は頭を抱えている。


 平和な世界で生きている者は屠畜場(とちくじょう)で働かない限り動物の処理方法など分かるはずがない。


 その知識をわざわざ身に付けない限りな。


「とりあえず頭! 高周波ブーー高周波棒!!!」


 さっき拾った枝を掲げて、男は〝高周波〟という魔法を発動すると枝は灰色のオーラに包まれた。


 魔力で物体を包めその魔力の量を変更する。これによって周波が生じて、それを高速で変更し続けたら高い周波数を得られる。


 だから〝高周波〟だ。


 んで、周波数が高かったら物体の原子結合力を弱めれてーー


 シュバッ!!!


 と男はイノシシの頭に枝を振った。結果はーー




「うぶっ! おおぉえええぇ!」




 吐いた!


 いや、吐いたじゃなくイノシシの頭が綺麗に斬られたのが結果だ。吐いたのは男がグロ耐性がないから。


「く、くっそぉ~」


 急な切断だからイノシシの体内にある血が飛び散って、男の顔に掛かった。


(血と食えない部分の処分を考えないとな……)


 森の中だからもし血と食えない部分をそのまま放置したら猛獣が匂いに釣られて現れるかもしれない。だからそれらを、いや、血の匂いを消せなければならないのだ。


 これを成し遂げるには幾つかの方法はあるけど無難なのは川に流す。しかしこれは環境に、川に良くない、っというかその行為そのものが良くないと男はしっかり理解している。


 だから彼はーー


「腰いてえええぇぇ!」


 数時間を掛けてずっと屈んでいた。


 彼は一体何をやっていた?


「魔法使いの天職って穴掘りなんじゃ……」


 そう、穴を掘っていたのだ。その穴にイノシシの血と食えない部分を埋めた。


 魔法でやったら楽じゃないかと思うかもしれないけれど魔法の性質、原理を理解しなければ使えないという謎のルールによってそうはいかないのだよ。


 何せ男はーー


「土魔法使えるようになりたなぁ……」


 そうなったら腰が健康になるだろうなぁ……と腰を(さす)りながら土魔法の原理を理解しなければと男は決意した。


 では、どうやって土を掘った?


 答えは〝高周波〟だ。


 シャベルの代わりに木の枝を高周波で包め、地道に掘ったのだ。


 腰にくるだのも仕方ないな。


「久々の肉だ!」


 だけど数日間果物しか食べていなかった男にとってその痛みの報いは大きい。


「何にしようかな~」



 足元が軽くなっていた男は色んな肉料理を考えながら焚き火を準備し始めた。

男「氷しっかり受け止めろよ!」

イノシシ「ブヒッ! したから死んだのだ!」

男「……確かに!」


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