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勇者? 人違いです  作者: Adhen
29/128

29。もう四〇歳以上だろう?

2025年4月21日 視点変更(物語に影響なし)


(あ、やばい、ついかっとなってしまった)


 ルナの声でフェルは我に返った。


(目の前にいる男はあまりにも失礼過ぎて一瞬冷静さを失ってしまいましたわ、ふふ)


 ……まあそれでも冷静ではないけどな、話し方が変になっている事全然気付いていないし。


「何の騒ぎだ?」


 それはともかく、やってきた女性、女王の視線はガランドとフェルの間に行き来している。


 ミディアムロングのワンカール白い髪、鋭い目つきで青い瞳、女にして身長はやや高くて、プロポーションのいい体が白い右肩だしの長いドレスに纏われて、スリットがあって右太ももを覗かせている。


 その美しさは彼女こそこの土地、女の権利を守る国を君臨するに相応しいと主張している。


 何せドライアード並みの美人なのだ!


(何でこの人こんな美しいんだ? もう四〇歳以上だろう? ばーー)


(失礼ね〜、フェ〜ルさん)


(うおっ! 急に脳内で話掛けるな! っていうか心読むな!)


 突然女王から念話(ねんわ)が入ったせいでフェルは思わず彼女を睨む。


 そう、ロダール女王は他人の心を読めるのだ。


 彼女自身の優秀さは言うまでもなく、その能力のおかげもあってロダール女王国は現在黄金時代(おうごんじだい)にあると世間に言われている。


(美人だが、人妻だよなぁ……)


(あらぁ、ありがとう)


(だから読むなって!!!)


 フェルも当然彼女の能力知っている。


「女王様! このちっこいガキは城内に迷い込んで使用人たちと騒ぎを起こしました!」


「〝ちっこい〟だと!? おい、クズ! しーー」


「黙りなさい。戦乙女を呼べ!」


「畏まりました」


 ガランドの言葉の中にフェルにとってタブーの単語があって抗議を入れようとした時、女王は威厳がある声で遮って、専属メイドに命令を出した後ガランドに言う。


「この者たちの処分は私が決める、あなたは今日宿に戻りなさい」


 そう告げて立ち去ろうとしている女王はガランドに止められた。


「王族である私を逆らったのです、処刑すべきかと!」


「聞こえなかったのか? 今日は帰りなさい、ガランド皇子」


 振り返って、女王はガランドを睨んだ後再び歩き出した。


「……分かりました。ではまた後日で」


 女王の後姿に頭を下げた後、ガランドはフェルを一睨みしてから城の入り口へ向かった。


「あ、あの、フェル様、ありがとうございました」


 さっき攫われそう(?)になったメイドはフェルに頭を下げた。


「気にするな。それより俺の部屋はそのままなのか?」


 できればルナたちを休ませてあげたいと彼は続けた。


「はい、いつでも住めるように整っております」


「なら俺の部屋で休もう、女王との謁見はあとでいい」


 老人の答えを聞いたフェルはレイアをルナから受けて、自分の部屋へ向かう。


「あの、フェル様、戦乙女は?」


 あー、女王の命令により彼女たちはフェルを捕まえに来るはずだな。


「えっと、部屋にいるって伝えてくれないか?」


「畏まりました」


 そんな事完全に頭から抜けたフェルは苦笑を浮かべた。


「あー、忙しくなるわぁ」



 と、頭を下げた使用人たちに礼を言ったフェルは部屋へ向かいながら呟いた。







「自分の部屋と思って好きに過ごしてくれ」


 豪華(ごうか)な部屋に入って、レイアをフカフカそうなベッドに寝かせるとフェルはそうルナに言った。


「そうさせてもらいます」


「うむ、いってくる」


 満足そうに頷いたフェルは部屋の外に待っている二人の女騎士と共に行った。


(城内に個人の部屋を持っているフェルって何者ですかね……)


 ほとんど城内にいる者たちはフェルのことを知っているように見える……いや、実際に知って、愛されて敬意されているとルナは何となく思う。


 さっき彼を迎えに来た女騎士も彼の事を〝様〟付で呼んでいたし、彼女はそう思っても仕方がない。


 城内の人々に特別扱いを受け、大精霊に〝王〟と呼ばれているフェルはどう考えても普通の人じゃない、ルナはそう確信している。


(私たちは一体何と戦っていたのでしょうか……?)


 彼女が聞いた報告ではフェルという少年は世界のための行動を邪魔している、悪人でしかないと。しかし悪人は人々に愛され、敬意されるわけがないから彼女はその報告を疑い始めた。


(善悪人……? 一体何を言っています、私?)


 コン、コン


 混乱している彼女は思考をクリアするために頭を軽く横に振るとドアがノックされた。


「フェルさん、アンナですけど入ってもよろしいですの?」


(アンナ? まさか、王女様!?)


 出迎えた使用人たちの話からこの国の王女の名前は〝アンナ〟だとわかったルナは来訪者の名前を聞いて、驚いた。


(まさか王女様自ら部屋を訪ねて来るとは……)


「フェルさん?」


 どうしようとルナは考えていると待っても返事がないせいでドアがまたノックされた。


(……出るしかありませんね)


 黙ったら相手が引く可能性はあるけど、もし入ったら気まずい空気になりかねないからルナは意を決めてドアを開けた。


「あ、あら? 部屋間違えましたの?」


 そうしたらそこに待っているのは女王に非常に似ている女性だった。


(女王様が若返りしているみたいですね)


 長いストレート白い髪と優れた美貌、そして女王と同じ鋭い青い瞳。それらの特徴は彼女が本当にロダール女王国の女王の娘である事を主張している。


 だからルナの感想は妥当だ。


「い、いえ、こちらはフェルの部屋で合っていますよ」


「そ、そうですか……」


 出てきたのはルナだから王女は一瞬驚いたけど、ルナの言葉を聞いて安堵の溜息を吐いて同時に悲しい表情を浮かべた。


「フェルは今留守していますが、中で待ちます?」


「え? そうですね、そうさせてもらいますわ」


 戸惑っていながらも王女は部屋に入った。


「ん? 彼女は……?」


 そしてベッドで寝ているレイアを見た彼女は再び悲しい顔をしている。


「……レイアと言います。疲れているので休ませてもらいましたよ」


 と言いながらルナはソファーに腰を掛けた。


「座りませんか?」


「……そう、ですね」


 目を閉じて深呼吸した王女はルナの向かい側のソファーに座った。


「あの、王女様ーー」


「アンナでよろしいですわ」


 話をかけるルナに王女、アンナは遮って笑みを見せる。


「は、はい、わかりました……アンナ、様、よろしければフェルについて教えてくれませんか?」


 言われた通り名前で呼んだけど、それでも〝様〟付けだからアンナはちょっと不満だけど、流石に会ったばかり、しかも王女にいきなりタメ口で話すなんて無理がある。


 アンナもそれを理解しているから諦めてスルーした。


「フェルさんについて、ですか?」


「はい。彼は一体何者ですか?」


 フェルの事あまりにも知らないルナは自分の中にある疑いを晴らすために知ってそうな人、この場合アンナに訊くことにした。


「そうですわね……その質問を答える前に、フェルさんの事どう思いますの?」


 考えそぶりを見せて、アンナは真顔で問い返した。


(……質問の意図が分かりませんね)



 どうしよう、とルナは目を閉じて息を吸い始めた。

アンナ「まさかフェルさん……女性二人をーー」

ルナ「な、何言っていますか!?」

アンナ「違いますの?」

ルナ「違います!」


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