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勇者? 人違いです  作者: Adhen
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28。妻言ったらぶっ潰すわよ?

2025年4月20日 視点変更(物語に影響なし)


「うわぁ……ミシーより大きいね」


「そりゃそうだろう、王都だから」


 翌日フェルはルナとディアをロダール女王国の王都、ギーフに連れて彼らは今はギーフの門前にいる。


「そうですね、王都ケルテインより立派な壁です」


 ロダール女王国は小さな国だけど、決して乏しい国ではない。


 その証拠はフェルたちの目の前にある異常に高い白い城壁とその上に置かれている大砲(たいほう)だ。


 要塞だと思われるほど立派な城壁ってわけだ。


「よくあんな高い所で平然としてるなぁ……」


 大砲の隣に待機している兵士を見て、フェルは思わず身震いした。


「な〜に? もしかしてあんた、高所恐怖症こうしょきょうふしょうなの?」


「べべ、別に!?」


「ふふ、意外と可愛いとこありますね」


 さっきまで壁を見ているレイアたちはそんなフェルの意外な一面を知って、ニヤニヤしている。


「ほ、ほら、行くぞ!」


 仕方ねぇだろう!? 怖いものは怖いなんだよ! とフェルは内心で叫んで、先を促した。


「逃げますね」


「逃げねぇよ」


「いいのよ、素直になれば?」


「うるせえなぁ……」


 先に歩き出したフェルにくすくすとレイアたちは笑いながら付いていく。


「止まれ! 身分証を提出してくれ!」


 やがて検問場まで来た彼らの進行は門番に阻まれた。


「これでいいか?」


「……こ、これは!? し、失礼致しました! すぐに馬車を用意します!」


「「え?」」


 出された身分証を拝見した門番の急な態度変化に後ろにいるレイアたちは驚いた。


「あーいや、いい。王城に向かいがてら街を見るつもりだ」


「はっ! 畏まりました!」


「それとこの二人は俺のつーー」


「妻言ったらぶっ潰すわよ?」


 指をポキポキ鳴らしているレイアを見て、フェルは一瞬黙ったあと言葉を続ける。


「……俺の連れだ、身分は俺が保証する」


「はぁ……あ、いや、了解しました!」



 訳がわからなくてフェルたちのやりとりに混乱されている門番だった……。







「あんた貴族なの?」


 初めてギーフに来るレイアたちのために観光でもしようかなと思ったフェルは案内役として先頭に歩いていて、しばらくあちこち見回っていると彼の真後ろに付いてきているレイアは門番の態度を思い出した。


「んなわけないだろう?」


「ですが門番の反応は異常でしたよ?」


 門番の急な態度変化は誰が見ても異常だった。あれは偉い人に対しての態度だとレイアたちは思っている。


「まあ、別にどうでもいいだろう?」


「またそうやって……ねぇ、なんで馬車を使わないの?」


 訊いても答えてくれないだろうと悟ったレイアは諦めて、別の気になる事を訊くことにした。


「そりゃあお前、注目されたいのか? こんな人混みに?」


 馬車で移動すれば楽に出来るだろうとレイアは思っているけど、回はその逆だ。


「用意された馬車に必ず国の紋章がありますからね、王族かと間違われますよ」


 王都だけあって人は沢山いる。その中に王家紋章付きの馬車を乗ったらセレブみたいに注目されるに違いない。


 最悪の場合囲まれて碌に進めないのだ。


「そっかぁ、残念」


 理由を聞いたレイアは肩を落とした。


「まあ、せっかくだしゆっくり街を見て回ろう」


「ふふ、お優しいこと」


「よーし、ルナ、ちょっと話そうか?」


 余計な事を言ったことに後悔してやるよ! と言わんばかりにフェルはルナに拳を見せた。


「嫌ですね。それより行きましょう、レイアちゃん」


 全く動じないルナは笑顔をみせて、レイアの手を引いて逃げ出した。


「ちょっと待ってくれよ、先頭は俺だろう!?」



 その後彼らはしばらく街中回っていた。







「「「お帰りなさいませ、フェル様!」」」


 王城に着いたフェルたちは兵士にドアを開けてもらって、中に入った途端一人の執事老人と彼の後ろに控えている六人のメイドが一斉に頭を下げた。


「うわっ! 何これ!? 王族なの!?」


「ま、待て、説明するから」


 その光景を見たレイアに問い詰められたフェルは引きつった笑顔で弁明を試みる。


「この人たちは以前国から屋敷に派遣された使用人だよ、でも俺家に滅多にいないだろう?」


「〝だろう〟と言われましてもね」


 彼女たちにとってフェルは謎に包まれている人物だから、〝だろう〟と言われてもピンと来るはずがない。


「だからなに? 説明になってないわよ?」


「と、とにかく、そういう事なんだよ。断ったはずだがーー」


「はい。ですがここにいらっしゃっている間、女王様の命により私たちはあなた様の使用人として派遣されました」


 老人からそう説明を受けたフェルはいやそうな顔になって、額に左手をやった彼は溜息を吐いた後使用人たちを見渡す。


「お前ら、普段誰に仕えるんだ?」


「アンナ王女様でございます」


 えっ!? 王女様の専属使用人!? と老人の答えにレイアとルナは内心で驚きの声を上げた。


「ならアンナのところに戻れ、後で女王に説明するから」


「で、ですがーー」




「うるせえぇぇ!!!」




 老人が抗議をしかけているけど、突然の大声によって遮られた。


「邪魔だ、使用人の風情が!」


「「「も、申し訳ございません」」」


 そう言ったのは使用人たちの後ろから現れた金髪イケメン男だ。彼の後ろに護衛らしき者が二人付いている。


 どこかの貴族でしょう、とルナは身なりが良く、アクセサリーを派手に身に着けている男の外見から推測した。


「ほう? 使用人にして中々いい体してんな、貴様ら」


 これに関して実はルナもそう思っている。まるでフェルのために美人しか用意されていないような、そう女王が仕向けたと彼女は思っている。


 まあでも老人もいるから、それはどうかな?


「よし! 俺の部屋に来い、可愛がってやるよ」


 男はそう告げて一人のメイドに近付いていく。


 イケメンなのにこの性格はちょっと女にとって好ましくはないだろう。


 そしてメイドたちもそう思っている。


「あ、い、いや……」


「あぁ!? 何だって!?」


 身を引いているメイドは男に大声で威圧される事に思う所があるルナは流石にこれは見過ごせないと思って動こうとした時ーー




「そこまでにしてくれないか?」




 さっきまでルナたちの前にいるフェルは突然男とメイドの間に入った。


「あぁ? なんだ、貴様? ガキがこんな所でうろつくんじゃねぇ!」


「ぷふっ!」


 彼の姿を目にした男は彼を(あざけ)って、それを聞いたルナの側にいるレイアは笑いを堪えて肩をガタガタと震わしている。


「あんたみたいなクズよりガキでいいや」


「なにっ!? よ〜し、貴様を殺した後、ここにいる女全員俺のものにして、飽きたら性奴隷にーー」


「次にその汚い口を開いたらーー」


 聞くに耐え難い事をフェルだけに聞こえるよう、小声で言っている男に我慢できなかったフェルは男を遮って、静かに、小声で言う。




「ーーぶっ潰す」




 その言葉が彼の口から出た瞬間、場の空気が変わった!


「ガ、ガランド、様……」


 目の前にいるガキの雰囲気が変わったと気付いた男の護衛の一人は男を守るために前に出ようとしたけど、身動き一つもとれなくて男、ガランドを呼ぶに精一杯だった。


(な、何ですか、この感覚!? 魔力!?)


「う、うぅ……」


 一方ルナは突然空気に感じる魔力の量に驚かされて、レイアに至ってはさっきと違う意味で震えている。


「レ、レイアちゃん、だ、大丈夫、ですか?」


 自分もかなりキツイのにルナは今にも倒れそうなレイアを支えて、彼女の顔色を伺う。


「は、はぁー、ル、ルナ、さーー」


 重い溜息を吐いたレイアはフェルを見て何か言おうとすると意識を失ってしまった!


「レ、レイアちゃん! フェル、レイアちゃんが!」


 ルナは慌ててフェルを呼んだその瞬間、場を支配している威圧感が消えた。


「……っ! き、貴様! このガランド様をーー」


「何事だ!?」


 さっきから恐怖に支配されていたガランドは何か言おうとしたけど、城の奥から女性の声がして最後まで言い終えなかった。


 声に釣られてみんなは声の方向へ視線を動かすとそこには一人の女性と一人のメイドの姿があった。


「じょ、女王様!」


 その女性、この国の女王を見た瞬間ガランドは驚愕の声を上げて、フェルから距離を取った。


(……さてフェル、どうしましょう?)



 悪化になる一方この状況からどう抜けるか心配しているルナだった。

レイア「ガキだってさ」

フェル「う、うるせぇなぁ」

ルナ「あら、拗ねちゃいましたね」


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