23。く、繰り返しとる……
2021年9月25日 マイナー編集
2025年4月1日 視点変更(物語に影響なし)
「お、おかあしゃん! あやしいひと!」
「な、なに!? この俺が怪しいだと!?」
「……自覚なかったの?」
大きな屋敷の前に転移したフェル一行は小さな女の子に怪しい人扱いされた。
「ちょっと! フェルのみでしょ!?」
あ、はい、すみませんでした!
「……レイア嬢ちゃんどうしたかのう?」
「さあ?」
……コホン!
大きな屋敷の前に転移したフェルは小さな女の子に怪しい人扱いされた。
ーーこれで良いっすか、レイアさん!?
「オッケーよ!」
「待ていぃぃー! お前も含まれてるぞ!」
ショックから復活したフェルはレイアに抗議を入れた!
「「?」」
そんなレイアとフェルのやりとりを見ているドライアードとりゅうじぃはただ首を傾げた。
「ぬぅあにいぃぃ!? 娘から離れろおおぉぉ!!!」
二人が口喧嘩している間に屋敷の中から一人の男は出てきて、小さな女の子に一番近くにいるフェル目掛けにドロップキックする!
「アイスプリズン!」
指定するエリアを氷漬けにする魔法を発動して、跳んでいる男は一瞬で氷漬けにされた……。
「ほわあぁぁー! しゅうごい〜!」
氷漬けにされた男をキラキラな目で見て、女の子は興味深そうにコンコンっとアイスを叩く。
「おうおう! もっと讃えろ! フッハハハ!」
「王……」
「フェル坊……」
「情けないわね……」
上機嫌なフェルにドライアードたちは呆れている。
「ソフィマーーってフェル様!?」
「おかあしゃん! あやしいひと!」
またも屋敷から人が、今度はメイド服を着ている綺麗な女性が出た。
彼女の姿を見る刹那、女の子は彼女の方へトテトテと走って彼女の後ろに隠れながら、フェルを指差した。
「ほら! やっぱりあんただけじゃない!」
とレイアは満足そうに頷いた。
「あ、あの、フェル様、申し訳ありません。後で躾しますから、どうか……」
女性は真っ青な顔でフェルに頭を下げている。
「あ、やっぱりダルミアの子供か、つまりこっちはレダスだな?」
氷漬けにされた執事服を着ている男をフェルが指差すと女性、改めてダルミアは本当に申し訳なさそうで狐耳とふさふさな尻尾を垂れてまたフェルに頭を下げた。
「はい、申し訳ありません。娘の事になると夫はいつもああなりますので……」
ダルミアに頭が撫でられた女の子、ソフィマは目を細くして気持ちよさそうに尻尾を揺らしている。
「なるほど。とにかく部屋の準備を頼む、二室だ」
「畏まりました……あの、フェル様、夫を」
「あ、そうだった」
パチン! とフェルが指パチンすると男、レダスに纏っている氷が崩れた。
「あいったっ!……ささささ、さむっ!」
解放されたレダスは地面に落ちて、寒そうにガタガタと震えて自分の尻尾を抱く。
「よお、レダス」
「ふ、ふふふ、フェルさ、ささささま!?」
「笑うか俺を呼ぶかどっちかにしろよ」
それは仕方がないのだ。
何せ今氷漬けされたばかりだから寒さであまりよく喋れないだろう。
「も、ももももも申し訳ああああありません!」
「あー、気にするな」
何に対しての謝罪か分からないフェルはとりあえずその謝罪を受けた。
「ととと、ところでふふふフェル様、そその女性は? そそそそしてこここの者たちは?」
フェルが抱えているルナと彼の後ろにいる他の連中を見てレダスは問いかけたけどーー
「……あー、分かり辛えぇな! とりあえず体を温めていけ!」
「は、ははは、はい!」
「今笑ったな!?」
「ち、ちちがいます!」
聞くだけならまあ、確かに笑ったな……。
「とにかくダルミア、早く部屋を。腕がそろそろやばいぞ……」
結構長い間ずっとルナを姫様抱っこのポジションで抱えているからフェルの腕はもうすぐ限界だ。
決してルナが重いからではない、フェルのためにそれだけ言っておこう!
「は、はい! ほら行くよ、ソフィマ」
「あやしいひとは?」
「こ、こら、怪しい人じゃーー」
そんな会話をしながら娘を連れて屋敷の中に入ったダルミアに続いて、フェルたちも屋敷に入る。
ところでソフィマちゃん、いつまでフェルを怪しい人扱いするのだ?
▽
「うわぁ、なにこれ?」
長い一日だけあって屋敷に着いた一行は一眠を取るに余儀なくされた。
そして夕食の時間がやってきて食堂に着いた途端レイアは声を上げた。
長いテーブルの上にここのメンバーだけで完食できない程の食物がたくさん載せられているから、その反応は仕方ないのだ。
「よし、食事の前にまず紹介しよう」
それぞれ席に着いた後、フェルは皆の顔を見渡してレダスたちを紹介し始めた。
ちなみにレダス達はフェルの後ろに待機している。
「こっちはレダス、奥さんのダルミア、そして娘のソフィマだ。見ての通り狐人だ」
フェルは金色の耳と尻尾の先端が黒色に染まっている狐家族を指差ししながら指しながら紹介した。
レダスとダルミアの身長はフェルより高く、それぞれイケメンと美人であり、とってもお似合い夫婦だ。そして彼らの四歳の娘であるソフィマは可愛くて、将来はきっと母親のように美人になるだろう。
「「よろしくお願いします」」
「? おねあいしましゅ」
両親の間に挟まれているソフィマは何事かと分からないけど、両親を真似して頭を下げた。
「か、かわいい……」
……早速レイアがその可愛さにやられた!
「コホン! そしてこの美人なお姉さんはドライアード、俺の最愛の妻でーー」
「お、王! ワレは王の妻ではありません!」
フェルの隣に座っているドライアードが抗議した。
「そうよ! ドライアード様はあんたなんかと釣り合わないわ!」
聞き捨てられないと言わんばかりにレイアは食卓を叩いて見乗り出した!
「そういう問題ではない!」
そうドライアードはレイアに言ったけど、じゃあ何が問題だ? とこの時食堂にいる他の連中は内心で思っている。
「まあ、冗談はさておき、この美人はドライアード。そっちのかわいい女性はレイア、そして彼女の隣の気のいい爺はりゅうじぃだ」
「ほっほっほ、口が上手くなったのう」
白い髪と同じ色の立派な髭を撫でながら褒めてきたりゅうじぃ。
ちなみにルナはまだ目覚めていないからここにはいない。
「いやあ〜、それほどでも」
「何照れてんの?」
後ろ頭を掻いているフェルに、再び席に着いたレイアは呆れる。
「褒められたからに決まってんだろう!?」
「馬鹿じゃないの!?」
「なんだと!?」
「レイア! その発言聞き捨てられない!」
「ですが、ドライアード様ーー」
「み、皆様、どうか落ち着いてください」
状況が段々混沌になっているからダルミアは慌てて介入した。
「そうだぞ! ちょっと黙ってろ、レイア」
「フェル様もちょっと黙ってください!」
「えええええ!?」
ショックを受けているけど、怒られたのは当然だな!
「ほっほっほ、賑やかでいいのう」
ずっと森の中で住んでいるりゅうじぃにとってこの人だらけで賑やかな空間は新鮮だ。
「……ま、まあいい。とりあえず飯だ」
「そうね、この件は後できっちり話すわ」
「……お前、何しに来た?」
あー、確かにレイアの目的は未だ不明だな。でも今の件のために付いてきたわけじゃないのが確かだ。
「まあいい。お前らも食えよ」
「い、いえ、俺たちはーー」
さっきから自分の後に待機してる三人にフェルは言ったけど、流石に主人と同じ食卓で食べるなんて恐れが多くてレダスたちには出来る訳がない。
しかし元日本人で庶民であるフェルはそんな事気にしない。
「いいから席につけ、みんなで一緒に食事する方がいいだろう」
「「は、はい!」」
断ろうとした狐夫婦はフェルの命令通り、娘をつれてドライアードの隣の席に着いた。
「よし、ではーー」
「「「「いただきます(しゅ)」」」」
狐家族とフェルは自分たちの胸の前に両手を合わせた。
「む? お主ら、どこでそんな習慣ならった?」
「どこって昔からそう教わったんだが?」
「私たちはフェル様に教わったのです」
「そうか……」
その動作を見たりゅうじぃはちょっと驚いて、答えを聞いた後髭を撫でて黙り込んだ。
「どうした、りゅうじぃ?」
「いや、何でもないわい」
そして彼も同じく両手を合わせて食事を始めた。
「う、うまい!」
とスープを口にしたレイアは驚きを隠せなかった。
「そうだろうそうだろう?」
「なんであんたが嬉しそうに頷いてるのよ!?」
「褒められたからに決まってんだろう!?」
「馬鹿じゃないの!?」
「なんだと!?」
「レイア! その発言聞き捨てられない!」
「み、皆様、落ち着いてください!」
「く、繰り返しとる……」
こうしてフェルたちは賑やかな夕食を過ごしていた。
ソフィマ「あやしいひと?」
ダルミア「こ、こら! フェル様は怪しい人じゃないよ」
フェル「あー、別に構わないよ、ダルミア」
ダルミア「あ、ありがとうございます、フェル様」
ソフィマ「うん? あいがとーおざいましゅ、おっしゃん」
フェル「!?」
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