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勇者? 人違いです  作者: Adhen
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17。悪い奴じゃないアピール?

2025年3月23日 視点変更(物語に影響なし)


「アースバインド! サンダーシザース!」


 フェルの両足首をアースバインドで地面に固着して、ルナは彼の前に大きな開いた雷のハサミを作った。


「おっと! アースウオール!」


 しかしそのハサミはフェルによって作られた土の壁に阻まれて閉じる事はなかった。


「魔法の使い方が上手いですね!」


「そりゃあどーも」


 魔法には相性があるのだ。例えば水魔法は火魔法に強いけど風に弱いとか、地魔法は風魔法に強いけど火魔法に弱いとか。


 ルナが発動した魔法の属性は雷、そして雷魔法は土魔法に弱い。それをちゃんと意識して一瞬魔法を発動したフェルにルナは感心した。


「サンダースピア!」


 左右に邪魔が入ったら別方面から攻めるまで、と妥当な判断をしたルナはフェルの正面に雷槍(らいそう)を作った!


(貰いましたね!)


 流石に足が留められた状態で迫って来ている魔法を避けられないとルナはこの戦いの勝者は自分たちだと確信した。


 しかしそうは簡単にいかない!


「ちっ! ファイアスピア!」


 槍を見て舌打ちしたフェルは火槍(かそう)を飛ばしました!


 二つの魔法がぶつかってーー



 ドゴーン!




 爆発が起こった!


 二つの魔法がぶつかった事によって爆発が起こして、辺りに土煙が舞い上がった。


「ふぅー、危なかった」


 土煙が舞い上がって、その中から出てきたフェルは無傷。


「……やりますね」


「ん? あぁ、いやいや、さっきの連撃は見事だったよ。本当にヒヤッとしたのさ」


 ルナの呟きを聞いて、フェルは苦笑する。


「彼はあれでやられるような奴ではないぞ、ルナさん」


 フェルを睨んでいるルナの前にディアは出た。


「お? もう完治したか?」


「ええ、おかげさまで」


「ディア様、ご無事でしたか!?」


 質問に頷いたディアはフェルに向き直して、訊いた。


「なんのつもりだ?」


 そして剣を抜いて構えを取る。


「そうだな……悪い奴じゃないアピール?」


「……ふざけているのか?」


「いやいや、ほーー」


「ふざけんなぁ!!!」




 ズッシン!




 何か言いかけていたフェルは鋼同士のぶつかる音と共に飛ばされました!


「勇者である俺様が、世界の為に力を得ようとしてそれを邪魔してるテメェが悪に決まってるだろうがぁ!」


 今までその存在感が全くなかった勇者サトウは急に現れて、さらにディアたちに言う。


「おい、お前ら! 奴の戯言に耳を傾けるな!」


「勇者様の言う通りです! アイツは危険です! ここで排除しなければいけません!」


 続いて護衛の代表は勇者の言葉に同意してフォローした。


「なに……? 排除だと?」


「……」


 それを聞いたディアは驚いてルナに振り向いた。


「どういうことだ、ルナさん?」


「……ディア様、今はーー」




「なんだ? 仲間割れか?」




「っ! サンダーショット!」


「っ! このっ!」


 流石姉妹だと言えるほどルナとディアはほぼ同じタイミングで突然二人の間に現れたフェルを攻撃した。


「ルーンブレイカー」


「なに!? ルーンブレイカーだと!? お前、どこでーー」


 ディアの攻撃を避けるために後方へ跳躍したフェルは、いつの間にか左手に短剣を握って彼女の魔剣技でルナの魔法を消した。


 彼もルーンブレイカーを使えることに驚かされたディアは問いただそうとした時ーー




 パッシュッ!




 フェルの左方(さほう)から1本の矢が迫って、彼はそれを短剣を振り上げる事で払いのけた。


「もらった!」


「死ね!」


 だがそれは気を散らすための囮だった!


 矢を払ったその直後、彼の背後と右から護衛の代表と一人の若い騎士が攻撃を仕掛けた。


「しつこいなぁ! 烈風斬!」


「「ぎゃああぁぁ!」」


 流石に鬱陶しくなってきたフェルは前へ跳躍し、空中で横回転しながらやや力を込めて剣を一薙ぎした。


 それだけで襲ってきた二人の騎士は逆に攻撃を食らって吹き飛ばされた!


(強い、強すぎます……!)


 あんまりの強さの前にルナはこの前ディアが言っていた言葉を思い出した。


「ぶっとべ! ソニックトラスト!」


「くっ!」


 一足で一瞬距離を縮めた勇者サトウはフェルのみぞおちに凄まじい速さで剣を突き刺した!


 まだ烈風斬の動作の途中で、空中に居るせいで回避出来なかったフェルは辛うじて自分の短剣の肌で勇者の攻撃を防いで、上空へ飛ばされた!


「ディア!」


「分かっている!」


「っ! 女神アルマの名のもとにーー」


 既に走り出したディアはジャンプして、空中に居るフェルの背後から更に追加攻撃をする。


 一方、ルナはディアたちの動きをやや離れた所から見て、チャンスだと思って呪文を唱え始める。


「ちっ! エアボム!」


 もはや回避は不可能だと思ったフェルは魔法を発動した!


「ルーンブレイカー!」


 しかしそれを予測したディアはルーンブレイカーで魔法ごとフェルの背中を切った!

 

「ぐはっ!」


 攻撃が綺麗に入った!


「ルナさん!」


「ルナ! とどめだ!」


 フェルは地面に落とされて、それと勇者とディアは彼から距離を取った。


「ーーすべての悪を焼き払う!」


 高速で魔法の呪文を唱えきったルナは周りに自分の仲間がいないと確認して、魔法を発動する!


「セイクリッドフレイム!」


 その瞬間、フェルを中心にして魔法陣が現れて、その魔法陣から凄まじい勢いで炎の渦が空を貫けるかのように舞い上がった!


「ぐああああぁぁぁぁ!!!」


 痛みと異常な暑さに苦しめられているフェルは悲鳴を上げている!


〝セイクリッドフレイム〟はその名通り聖なる炎、火属性と聖属性の融合魔法だ。


 しかし聖属性の魔法には原理はなく、人間には扱えなく、神様の助けがなければ発動できない。


 神様に助けてを求め、自分の敵を倒すと祈りの代わりに詠唱して、もし神様に認められて祈りが応えられたら魔法が発動する。


 つまりこの時点でフェルはすでに神様に目を付けられ、彼を排除しようとている。


「なんてやつだ……!」


 炎の渦の中に立っている人のシルエットが外から見えて、ルナの側にまで戻ったディアはその光景を見て呟いた。


 その直後だったーー




「なめ、る、なぁぁぁ!!!」




 ドゴーン! とフェルの叫びと共に彼を中心にして爆発が起こった!


「ぐっ!」


「きゃあっ!」


「ルナさん!」


 その爆発の衝撃があまりにも大き過ぎて、周囲にいる物、人は纏めて吹き飛ばされた!


「うそ、だろう……!?」


「本当に、人間ですか……?」


 やがて爆発が収まってディアは再び前を見るとそこには立っているフェルの姿があった。


「……強すぎるっ!」


「……私たちは一体何と戦っています!?」


 最上ランクの火魔法を食らってもなおまだ立っている彼を見て、二人の姉妹は信じられないと言わんばかりに驚愕して、彼に勝てないと理解した。


「そろそろくたばれ、カスが!」


 しかし流石勇者、相手が誰であっても、どれだけ無理な事でも世界のためなら(建前だけど)決して諦める事なく立ち向かうのだ!


 動かないフェルの姿を捉えた勇者サトウは一瞬で接近して攻撃を仕掛ける!


「よせ、勇しーー」




 ジュブッ!




「ぐぁ……っ!」


「そのまま死ねぇ!」


 嫌な予感がしたディアは勇者サトウを止めようとしたけどもう遅い! 勇者サトウの剣はすでにフェルの胸を貫けたのだ。


「もう終わりです、ディアさーー」





「ブラスト……」




「ぐはああぁぁぁっ!」


 突然吹き飛ばされた勇者サトウによって、ルナの言葉は遮られた。


「まだ魔法を使えますか!?」


「立て、ルナさん!!!」


「っ! え、ええ、ありがとうございます!」


「油断しーーシッ!」


 さっきの爆発の衝撃を耐えるためにしゃがんだルナに向かって、フェルの姿を捕えているままディアは注意しようとしている時、左胸に勇者サトウの剣がまだ刺さっているままのフェルの姿が彼女の前に現れた!


 直ぐに反応して剣を振ったディアだったけどーー




 ズッシン!




「なっ! 何をした!?」


「烈風ーー」


「王!」


 構えを取って、技を発動しようとしているフェルの背後に緑光に包まれているドライアードが現れて彼を止めた!


「……ドライアードか?」


「「っ!?」」


 彼女の名を聞いたディアとルナは驚いて警戒を上げた。


 フェル一人相手に今にも負けそうなのに、もう一人現れたらもう勝ち目がないと彼女たちはちゃんと理解した。


「……準備が整いました」


「わかった……」


 しかしその未来は訪れることなく、フェルは自分の左胸に刺さっている勇者の剣を抜けた後ドライアードと共に姿を消した。


「……」


「ディア様……」


 突然の出来事に残されたディアとルナはしばらく黙っていた。


「命拾いしたな……」


 さっきまでフェルがいた場所を見ているままディアはさらに続ける。


「私たちが……」


「っ!」


 体ごと振り返って、ディアは握っている自分の剣をルナに見せた。



 彼女の手には上の半分が綺麗さっぱり無くなった、絶対に折れる事がないと言われた魔剣があった。

ルナ「何なんですか、あの男は?」

ディア「アンデッドだ」

ルナ「本当ですか!?」

フェル「勝手に人を殺すんじゃねぇよ!」



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