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勇者? 人違いです  作者: Adhen
127/128

127。いや、胡散臭いと思わないか?


(こいつらどこへ行くの?)


 レイアは目の前に走っている馬車を追いながら内心でそう思っている。


(結構リーブリから離れたけど……)


 リーブリから出てすでに数十分が経って、その間に馬車はずっと走っているのだ。


(ディアたちに鍛えされてよかったわ)


 国の経営があるから長い間離れないディアたちはフェルを探す旅に出たくてもできなくて、精霊と人間の仲介役であるドライアードとレイアだけど、唯一離れる人はレイアだった。


 まあ、ドライアードに行ってもらっても多分上手くいかないだろうな……。


 コホン! えー、話を戻す。


 経験はともかく、レイアの強さは足りなくて一人旅にさせたら安心できないディアたちは彼女を鍛えると決めた、レイアが旅に出たまで、一年間。


 戦闘はドライアードとディアとルナ、知識はアンナ、サバイバルはセルディ、情報収集のやり方はフィリー、というそれぞれの得意分野を担当して、彼女たちはレイアが自分が思っている最低限の基準に到達するまで鍛えた。


(……過保護者もう一人いたわぁ)


 レイアが言っている人はディアだ。


 彼女の基準は高く、レイアがそれを超えるまで結構時間が掛かった。


(でもおかげで助かったわ)


 しかしその結果は大きい。


 既に数十分馬車のペースに合わせて走っているけど、自分に掛けた身体強化魔法でもあるがレイアはまだ息を上がっていない!


 今の彼女の体力は以前と比べ物にならないのだ!


(ーーっと、あれは目的地かな?)


 どれだけ厳しい訓練だったか回想に入って思い出しているレイアは視界に入った洞窟に現実に引き戻された。


(結構大きいね……)


 追っている馬車はそのまま洞窟に入って、それを目撃者したレイアは改ね洞窟を観察した。


 森の中にある洞窟とほぼ変わらない。違いがあるとすればその入り口の大きさだ。


(……入るか)


 追っている馬車は中にあるから、このまま外にいたら何のためにここまで付いてきたって話になるからレイアは入ることにした。


「ーーら言っただろう?」


「仕方ないじゃない」


 と大分中へ進んで、耳に男女の声が入る事によってレイアは今以上に身を潜めて声の方法へ近付く事にした。


「こいつはいい素材だから」


「……前から思ってたけど、それどこからの知識だ?」


 呆れた男は肩をすくめた。


「とある医師から聞いたのよ」


「いや、胡散臭いと思わないか?」


「思っているわよ? けど私にこれ以外の方法はないの……」


「そっか……」


 思い詰めている顔で言っている女に男はそれ以上何も言わなくて目の前にある檻に視線を向かせた。


「魔族たちにああ言ったのになぁ」


 檻の中にいるモノを見て、男はそう呆れた。


「仕方ないでしょう? ああでもしないと落ち着かないから」


「悪い領主だな」


「今更よ」


 そう、レイアが尾行した馬車は領主の物で、女は領主だった。


(……やっぱり領主黒いね)


 会話している人物の姿はまだ見えないが、情報屋や老婆たちに聞かされた話、そして街での出来事からレイアの領主に対しての疑惑は確定に変わった。


(もっと近付きたいわね……)


 周囲の音を拾って記録する魔法道具テープを取り出して、身を潜める体制をキープしながらレイアは慎重に領主たちがいる所に近付く。


 なぜそうする必要がある? それはーー


(環境音がうるさすぎるわぁ)


 洞窟だけあって様々な音が壁に反射されてうるさいからだ。結構近付かないと魔法道具に環境音しか記録されかねない。


 ただでさえ数が限られているのに、無駄に使うわけにはいかないとレイアは思っている。


「それで? こいつに何をする気なんだ?」


「ちょっと待ってね……」


 視線を檻に固定するまま男はそう訊いて、その質問を答えるために領主は荷物の中からメモ帳を取り出した。


「えー、角は薬効があって、心臓は体にいいって」


「……は? 動物と間違えたんじゃねの?」


 あー、地球のサイの角に薬効があるという、科学目線からないと断言されたよく分からない知識はこの世界にもあるのだ。


「似たような物じゃない?」


「酷いこと言うなぁ」


 檻の中にいる存在を見て、男は苦笑した。


「さあ準備始めて」


「へいへい」


 と領主に促された男は肩をすくめながら洞窟の奥へ行った。


(……ん? 一人いないね)


 ちょっと遅れて領主たちがいる洞窟の中にある広場に着いたレイアは男がいない事に警戒心を強めた。


(やっぱここからだと見えないな……)


 どうしようかな……と暗い檻の中に何かあるか確認したいレイアは考えながら周りを見渡す。


(魔法は……まだ発動しているね)


 そう、魔法だ。なぜ尾行がバレないともしかして皆さん思うかもしれないけど、理由は魔法だ。


 自分に当たっている光を魔力で加工し姿を周囲の環境に溶け込む魔法、〝インビジブル〟を移動中からレイアはずっと自分に賭け続けている。


 ちなみにヴァリヌーを尾行した時も彼女はこの魔法を使っていた。


(よし、あそこにしよう)


 話を戻してーーその魔法は今も作動していることを確認したレイアはやがて檻から一番近い、そこそこ大きい木箱の影に隠れる事に決めて慎重に移動し始めた。


(あれは……!)


 十分に近付いて檻の中を確認できた彼女は眉間(みけん)に皺を寄せた。


(あの領主を何とかしないと……)


 未だに檻の付近にいる領主の存在は今からやろうとする事の邪魔になると思っているレイアは何かないかと頭を回転している。


「おおいいい、領主! 道具見つからんぞ!」


「は? そこにあるでしょう!?」


「ないって! ちょっと来てくれ!」


 ちょうどその時洞窟の奥から男の声がして、領主は言われた通り奥へ進んだ!


(チャンス!)


 これは好機と思ったレイアは忍び足で檻に近付いてから魔法を解いた!


「ねぇあんた! 起きなさい!」


 と中にいる存在に声を掛けながらどうにかして扉を開けないか彼女は檻を観察している。


(この鍵をこわーーいや、そうしたら音がバレる!)


 (じょう)を壊したら扉開けるけど、大きい音出るだろう。


(……とりあえず魔法を)


 やれる事は今のところないと結論に着いたレイアは自分にまたインビジブルを掛け直すーー




「おっと、そこまでだっ!」




「カハッ!」


 ーーつもりだったけど後ろから戻ってきた男に殴られた!


「あん、た……っ!」


 意識が完全に飛ぶ前に自分を殴った人の姿を見て、レイアは信じられないと言わんばかりに男を睨んで、意識を手放してしまった!


「……すまんな、レイアさん(・・・・・)



 そしてそんな彼女に殴った本人は小さく謝った。

レイア「痛かったわよ!?」

男「気絶するつもりでやったからそれは当然だろう?」

レイア「くっ! 覚えてね!」

男「悪役はこっちなのに……」


よかったらぜひブックマークと評価を。

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