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勇者? 人違いです  作者: Adhen
122/128

122。ま、待て待て、ナンパじゃないぞ?


「……用はないなら行くわ」


 差し出された手をチラ見した後、レイアはそう言って踵を返す。


「まあまあ、そう急ぐなーー」


「……」


「ま、待て待て、ナンパじゃないぞ?」


 なんだ、結局ナンパじゃない、と止められたレイアのジッと目からそういうメッセージを受け取ったネヴァテオは慌てて自分の薬指を見せる。


「愛するかみさんいるから安心してくれ!」


「……どうだか」


 ネヴァテオは結婚しているとわかってもレイアは油断しない。


「はぁーまあいい……お前に依頼したい事がある」


「断る」


「まだ何も言ってないだろうが……」


 即座に断るレイアにネヴァテオは肩を落とした。


「他の依頼で忙しいからあんたを手伝う暇はないね」


 別に嘘じゃない。


 レイアはアンナたちからフェルを見つける任務で忙しいのだ。


「そうだったのーー待て、ギルド記録から暇だとわかってるぞ!?」


 まあ、ネヴァテオは一応探検者ギルドリーブリ支部のギルド長だから、その権限で探検者の記録とか見れるのだ。それで彼は事前にレイアの任務記録を閲覧して、彼女は現在何も任務を受けていないと分かった。


「全部は全部でギルドの任務じゃないって事よ」


 任務と言ったら必ずしも探検者ギルドからの任務じゃない。


「まあ、そうだけど……困ったな」


 正論の前にネヴァテオは後ろ頭を掻いて困っている顔を浮かぶ。


「……それじゃ」


 話はもう終わりと言わんばかりにレイアは再び踵を返して歩き出した。


「ま、待ってくれ!」


「しつこいわね……」


「おっと、暴力はやめようぜ」


 再び止められて、流石にうんざりしてきた彼女は魔力を集めてネヴァテオを睨んで、睨まれている当のネヴァテオは余裕な態度で両手を上げた。


「なら着いて来ないで貰える?」


 撃つよ? と言ったレイアは右手を持ち上げて、ファイアボールを具現化する。


「お、お前にとって損しない任務になるはずだ」


「すごい自信ね」


 一瞬で発動されたレイアの魔法を見てたじろいだネヴァテオはこりゃあ証明しないと聞いて貰えないな、と思って、切り札を出した。


「一年前の光」


「……」



 その言葉でファイアボールは消えた。







「それなりに目撃者はあるはずですが、時間帯のせいにもあって誰も気に留めなかったでしょう」


「確かに昼間だったからね……」


 と、レイアは天井を見上げて呟いた。


「光線を見た、とうろ覚えの情報しかありません」


「……」


 それを聞いて、彼女は自分のグラスに視線を落とした。


「……飛ぶ去った方向は?」


「その件に付いて色んな情報ありますが、情報屋としてあまりにも不確かな物だから共有できません」


 そう、彼女がさっきから話している相手、男は情報屋だ。隣り合って、お互いを見ずに彼女たちは会話している。


「そっか……」


 矜持という物は厄介ね、とどんな些細な情報でもいいと思っているレイアは溜め息を吐いた。


「じゃあ情報屋じゃなく、ただの知り合いとして共有できる?」


「……ふん、それならーー」


 と自分のグラスを持ち上げて、軽く揺らしてから情報屋は一口飲んだあと自分が知っている事を話した。


「……確かに頼りにならない話ね」


「言いましたよ」


 聞かされた話はあまりにもバラバラすぎて、纏まりはなく、全部調べ尽くすと骨が折れてしまうだろうと思ったレイアはまた溜め息を吐いた。


「ところで、リーブリ支部の探検者ギルド、ギルド長のネヴァテオの事知ってる?」


「情報ならあります」


 小さく笑ったレイアは一番重要な事だけ、と情報屋を促した。


「そうですね……領主と繋がりを持っています」


「……その領主について何かある?」


 突然知らない人物の話は出てきたから、きっと何かあるだろうと推測したレイアは更に情報を求める。


「ありますがーー」


「あー、フィリーのツケにして」


「分かりました」


 帰ったら怒られるだろうね、と内心で友人に謝ったレイアは気を取り直して情報屋の話に耳を傾けた。


「リーブリの領主はすごく領民に親しくされて、人望厚い人物です」


 民思い、正義感が強い、出来るリーダーという、様々な褒め言葉はあって、それらは領民から貰っている領主だ。


「でも?」


 評判は非常にいい、あまりにも良いすぎる。


 そういう人に限って何か裏があるだろうとレイアは思って続きを促した。


「……あくまで噂ですが、領主は人間売買しているそうです」


「へぇ……その噂を基づける事は?」


 まあ、火がない所に煙は立たないと人は言うからな。


「そうですね……定期的に人が消える、まるで神隠しされたかのように痕跡一つもない、というのはどうでしょう?」


「なるほどね」


 ここ数年間リーブリに人は突然いなくなった、という奇妙な事件が起こっている。


「それであのギルド長は一枚噛んでるかもしれないと?」


「という可能性があります」


 覚えておくわ、と言ったレイアは急に思い出した。


「そういえばこの前変んな噂を耳にしたけど」


「変な噂、ですか?」


「うん。魔族が攫われた、とか」


 これはこの前酒場で酔っ払いさんが口にした話だ。


「……これは探る必要ありますね」


 初耳ですね、とこれは儲かるチャンスと思っている情報屋はしばらく考えたあと決断した。


「助かるわ」


 知りたい事は聞けたし、依頼も出した。これ以上長居する必要はないレイアは立ち上がって、酒場を後にした。


「はぁ~、牛乳飲みすぎた……」



 あれ牛乳だったのか!?

レイア「次は水を頼もうかな……」

情報屋「酒じゃなくて水ですね……」


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