12。幕間 落ちたな、探検者協会は!
2025年3月3日 視点変更(物語に影響なし)
ルーガン達がミシーに戻ってからニ週間くらいが過ぎた。
ここはレヴァスタ王国の王都ケルテインで、王城の会議室である。
部屋の中に大きな丸いテーブルを囲んで話し合っている八人がいる。
「ーーなんだと!? 回収が失敗だと!?」
身なりのいい青年が驚いて自分の向かいの席に座っている女性を睨む。
「そうよ。探検者ギルドミシー支部のギルド長から手紙が届いたわ、ケル殿下」
ケル殿下と呼ばれる男性の視線に気付いて、手にある一枚の紙を揺らしながら答えたのは神官の格好をしていて、法衣の左胸に左右に羽がついている剣の紋章がある女性だった。
「ちっ! これだから探検者は信用できんのだ!」
ケルの隣にごつい体格で鎧を着ている中年の男性がうんざりしている顔で言った。
「それは聞き捨てられない発言です、ジョル団長」
黒スーツを着ている、身長がやや高い女性はそれを聞いて中年、ジョルを睨む。
「まあまあ、落ち着いてください、ディア様。それよりシャリー様、続きを」
短い肩だしワンピースの上にカーディガンを着ている女性が話を促して、テーブルに置かれたお茶を口にした。
手紙を手にしている女性、シャリーは戸惑っていながらも手紙の内容をざっと説明する。
「え、ええ。手紙によると聖剣フォレティアを回収しようとした探検者パーティーは一人の少年に邪魔されたそうよ」
「はっ! 一人の小僧の相手も出来ないとは、落ちたな、探検者ギルドは!」
「なにをーー」
「ジョル団長、いい加減その口を閉じろ、話が進めん」
「っ……! 申し訳ありません、陛下」
ジョルの口叩きに身を乗り出したディアを遮って、陛下と呼ばれた中年の男性がシャリーに訊く。
「それで、シャリー教会長、その少年について手紙に記述されていないか?」
「……白肌で身長はやや低い、白髪混じりの黒髪が印象的」
この時点でこの部屋にいる全ての人は普通だなと思っている。
シャリーの次の言葉まで。
「転移魔法使いで精霊の王らしい」
「「「なに!?」」」
「ふふ、転移魔法使い、しかも精霊王ですか」
それらを聞いた三人の男性は驚愕していて、お茶を飲んでいる女性は興奮を示してい。
「この手紙を読んだ後、ミシーまで行ってその探検者パーティーから直接事情を聞かされました」
「うむ、それで?」
「はい、どうも嘘ではありません。手紙に載った男には会えませんでしたが幻想の森に確かに人が住んでいる痕跡がありました」
席に再び着いたディアはシャリーの説明をフォローして、自らミシーまで足を運んで調査の結果を報告した。
「森の中心に向かおうとしましたが、何かに妨害されました。件の探検者パーティーの話によると結界かもしれません、と」
「なるほど、結界か。宮廷魔術師としてどう思う、ルナさん?」
さっきから興奮している女性、ルナに問いかけるケル。
「そうですね、転移魔法使いだけではなく結界魔法も使えるなんて相当なやり手ですよ。是非会ってみたいですね」
「はっ! あんたもそれくらい出来るだろう?」
「ふふふ、残念ですが、出来ませんよ? 結界はともかく転移魔法は無理です」
「くっ……」
ジョルが自分が仕えている国の宮廷魔術もそれだけなら、と張り合ってルナに確認したけど興奮を隠す気まったくないルナが正直に言って、ジョルは再び黙ってしまった。
「クレス宰相、どう思う?」
「ふむ……ディア様、探検者ギルドに件の少年の情報を集める依頼の手配を、報酬はこちらで提供します。ルナ様は幻想の森に赴いて結界の調査をお願いします。ジョル団長、ルナ様の護衛として騎士団から腕の立つ数名の団員を派遣して下さい。そしてシャリー様とマリア様は次の召喚に取り掛かってください。如何ですか、グレン陛下?」
「……いいだろう。シャリー教会長、聖女マリア、格納にある聖剣を召喚の触媒として提供してやろう」
「あら、ありがと」
「ありがとうございます」
的確な指示を出したひょろ長い中年、この国の宰相をやっているクレスの言葉にレヴァスタ王国の国王、グレンは立派な髭を撫でながらさっきから黙っている神官の格好をしている聖女マリアとシャリーに言った。
「では、今回の話し合いはこれにて終わります。皆様、出席してありがとうございました」
クレスはそう言って、会議の幕を閉じた。
シャーリー「ふぅー、私の体をジロジロ見ないで欲しいわね」
マリア「……服装変えたら」
シャーリー「いやよ! いつ素敵な殿方が現れるか分からないから油断禁物よ」
マリア「……」
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