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勇者? 人違いです  作者: Adhen
109/128

109。なんかプロっぽいかなと

2025年9月1日 視点変更(物語に影響なし)


「うーん……」


 フェルは手組みして考え込む。


「もむもごごもぐごぐもごごー?」


「……何言ってるか全然わからん」


 そんなフェルにレイアは口いっぱいでなんか言った……。


「レイアちゃん、はしたないですよ?」


「……」


「しゃべるのを捨てやがったな?」


 そしてルナに注意されると彼女は黙り込んで、食べる事に集中した。


「〝何難し顔してんの?〟 ですわよ、フェルさん」


「え? かわかるのか?」


 いやいや、流石にそれはなーー


「ゴクーー何でわかるの!?」


 当たったのかよ!? やっぱり母の能力を受け継いだんじゃないのか、アンナ?


「それでフェルさん、何か悩み事でも?」


 驚愕しているレイアとフェルにただ笑みを浮かべたアンナはそのままフェルに質問を投げた。


「あ、ああ、二日前西からレヴァスタの斥候隊は侵入しようとしただろう?」


「結界に引っかかった奴らだな?」


「あれから両方(・・)から動きがないんだ」


 そう。


 話は少し勇者たちが進軍する前に遡って、フェルはレヴァスタ王国とマセリア帝国の動きに悩ませている。


「いい事でしょう?」


 とセルディは言った。


 ……この前の出来事からずっと王城にいる彼女は完全に王城に住む気だろう。


「いや、いつ襲ってくるか分からないからずっと警戒しなければいけない。兵士たちは交代でずっと警戒しているが、体力は少しずつ削られているのだ」


 さすが女王の弟子、フェルが言っている状況はどう兵士たちに影響するかちゃんと理解している。


「いっそ襲われて敵を撃退した方が遥かにましだ」


 まあ確かに。精霊王国マナフルにその力あるしな。


「ですが両軍はこっちの様子を窺えませんので、その可能性は低いと思います」


 ルナの言う通り、結界によってレヴァスタ王国もマセリア帝国も精霊王国マナフルの動きを探れないのだ。


「こっちから動くのはどうですか、王?」


「いや、襲われたという事実が欲しいからそうはいかないよ」


 もし自分たちから仕掛けたらレヴァスタ王国とマセリア王国は世界中に〝ただ軍事訓練していたのに襲われた〟と言いふらして、精霊王国マナフルを悪者にするだろう。


「まあ、ゆっくり、まったり待つしかーー」


「失礼します」


 今考えても無駄と思い直してフェルは食事を再開しようとするとレーダスは食堂に入って、まっすぐにフェルの所に来た。


「フェル様、両軍は動き出したと報告を受けました」


 スーツ姿の執事であるレダスは小声でそう報告した。


「……なぁ、レダス、何で小声?」


「なんかプロっぽいかなと」



 確かにプロ執事っぽい!







「は、はっはっは!」


 さて、現在に話を戻す。


 一瞬護衛隊長は何言っているのか理解できなかったフェルはまさか自分がスカウトされると思わなくて、笑い出した。


「阿呆かお前?」


「な、何?」


「いい待遇だぁ? ないない、これ以上いい待遇はないさ」


 厄介事に自分から首を突っ込んで、自由、そして優しく接触している妻たち、さらにお金ーーはあまりないけどそれでもフェルは幸せに暮らしているのだ。


 それらを〝それなりにいい待遇〟と交換すると? 当然そんな選択肢はフェルの中にない。


 それにーー


「国王がそうするわけがないだろう?」


「「「なっ!?」」」


 そう。彼は自分の国を見捨てる訳がない。


「貴様がこの国の国王だと!?」


「このガキが!?」


 まさか自分の目の前にいるちっこいガキは攻めようとしている国の国王だと誰も思わない。


「というわけでその提案に乗らないから帰れ」


 これで何回目かもう分からない。フェルももううんざりしている。


「おいおい、ますます帰れねぇだろう?」


「お前を倒せば任務クリアだからな」


 せっかく攻めようとしている国の統一者が目の前にいるのだ、勇者一行は逃すわけがない。


「……なぜそんなに俺を殺そうとしてるんだ?」


 世界のためじゃないのがわかりきっているけどフェルは一応訊いてみた。


「は? そりゃ世界のためだろうが」


「犯罪者を匿ってしかも他人の物を掻っ攫った人を放置するわけにはいかないからな」


 そしてやっぱり勇者たちは正直に答えてくれなくて、だいぶ回復し二人は聖剣を握り直して再び前に出た。


「はぁ……先輩として一つの助言だ」


 そう前置きして二人の勇者の目を見ながらフェルは続ける。


「召喚された勇者だからってあまり調子を乗るなよ。お前らはただこの世界の神々の駒に過ぎない」


「「この世界……?」」


 二人の勇者にまるで数多な世界を知っているような言い方だろう。


 まあ、フェルもわざとそんな言い方しているし、実際にこの世界と自分がいた日本、地球知っているから間違いじゃないけど。


 なぜ勇者ミウラたちはそう思っているのかって? 一つ以上の物の中からどれの話をするかは〝あの〟とか〝この〟とかという特定言葉を使うからだ。


 フェルは〝この世界〟と言った。つまり彼は他の世界は存在すると知っている。


「約四年前勇者召喚は行われたって知ってるか?」


「失敗に終わっただろう? だから俺たちは召喚されたんだよ」


 それについて教会は別に隠すつもりはないから当然勇者ミウラたち勇者は知っている。


「失敗じゃなかったと言ったら?」


「っ! 貴様、まさかーー」


「さあ? 想像に任せるよ」


 さっきからフェルが並び出した言葉から一早く彼の正体に気付いた勇者ミウラは隊長に訊く。


「おい、隊長、失敗に終わったんじゃないのかよ!?」


「教会の召喚の間に何も現れなかったことは確かなのです!」


 そりゃそうだろう。フェルは森の中にいたからな。


 自分は召喚の間というところに現れたら何をされるかわかるもんじゃないと思って、フェルは内心で安堵の溜め息を吐いた。


「さーて、そこの指揮官に質問!」


「……」


「お前とお前の部下はそこの勇者二人に勝ったことある?」


「……ある!」


「ねぇよ!」


「ないな」


 実際にないな。


 何度も言うけど、勇者の強さは普通の人間より優れているのだ。


 ディアくらいのクラスじゃないと勝てない。


「勇者様、こいつの自信を折るためにここは嘘でもあると言いましょうよ!」


「「「……」」」


 小声で言うつもりだけど、隊長の抗議は全然フェルたちに聞こえた。


「……コホン! 過去の話はどうでもいい。貴様には二択用意しよう」


 この場にいる全員の視線に気付いて、隊長は仕切り直した。


「大人しく捕まえるか、ここで殺されるか、どっちが良い?」


 どっちも結局同じだ。


 もしフェルが捕まえたら殺されるだろう。


「……高校生のお前らはどうする? 人を殺せるか?」


「はっ! 出来るに決まってーー待てよ、さっきはなんて?」


「〝高校生〟と言ったぞ、こいつ!」


 チンピラの格好をしてるのに勇者ナリタは意外と鋭い!


 人は見かけによらぬものだな!


「今の日本はどうなってんだ?」


 四年前の日本しか知らないからフェルは一応気になる。


 VRMMOは開発されたか? ダイブ機とかは? それと前世で自分が担当した土地はどうなっているか全部フェルは知りたくて、わざとその言い方にした。


「チッ! マジで俺たちと同じだな!」


「おい、隊長! どうなってんだ!? 勇者は俺たちだけじゃねぇのかよ!? このガキは明らかに異世界人だぞ!?」


 そしてやっとフェルの正体に気付いた勇者二人は警戒を上げた。


 相手は同じ異世界人、言い換えれば同じ勇者だから油断はならないと二人は思ったのだ。


「惑わされないでください、勇者様! こいつの嘘に決まっています!」


「俺たちの元いた国の名前知ってるんだぞ!?」


「オメェらですら知らねぇことを知ってんだぞ!?」


「そ、それは……」


 この世界に〝日本〟についての記録はないの。以前フェルも調べたけど見つからなかった。


 昔の勇者はもしかして日本人じゃない、もしくはわざと正体を隠しただろう。


「それで? 日本人同士だが、やるか?」


「「……」」


「やるに決まっている!」



 いや、なんでお前が答えたのだ、隊長?

勇者ミウラ「VRはまだ開発中らしいだぞ」

フェル「何だと!? 進展遅すぎるだろう!」

勇者ミウラ「俺に言うなよ!」


よかったらぜひブックマークと評価を。

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