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勇者? 人違いです  作者: Adhen
106/128

106。俺の忠実なアンナどこ行った……

2025年9月1日 視点変更(物語に影響なし)


「ーーその際に頼んだわよ」


「畏まりました」


「ーーーー」


「ふぅー……フェルのやつ、少しでも手伝いなさいよ」


 仲介役って思ったより大変だわ……とレイアは内心で思った。


 彼女はさっきまで戦争の時国民はどう、何をすればいいかについて精霊の代理と人間の代理と会議していた。


 精霊の方は理解が早くて彼女にとってありがたいけど、人間の方はずっと難しいのだ。


 当然だ、人間は何ていうか、自分の身がかわいいっていうのかな? 助けたいなら言う事素直に聞けばいいのにとレイアは何度も思った。


(……話し合い無事に終わったし、今日はゆっくりしーー)


 コンコン。


(ーーないよねぇ……はぁ、あたしの休み〜)


 不憫なレイアはここ最近ずっと事務所に篭っている。


「……入っていいわよ」


「失礼します」


 許可が降りた直後一人の衛兵は入ってきた。


「レイア様、マナ学園の校長は謁見を願いたいと仰いました。どうなさいますか?」


 マナ学園というのはフェルが現代の教育制度を元にして建てられた教育施設の事だ。


 基本知識だけじゃなく、探検者、研究者、魔法士、衛兵、この世界に置いて初の色んな職業の基礎知識を学ばせる施設だ。


「通してあげて」


「畏まりました」


 戦争の事はまだ公開されていないからその学園の最高責任者である校長が訪ねる理由は別にあるだろうと推測したレイアはそう言った。


 コンコン。


「はい」


「失礼します。レイア様、キーダフリナー様を連れて参りました」


「ご苦労様、下がっていいわよ」


 はっ! と衛兵は退出した代わりに一人の女性は入って来た。


「ご機嫌よう、レイア様」


「ご機嫌よう、キーダフリナー校長、お掛けください」


 お辞儀するその女性みたいにレイアも敬意を見せてそうしたけどーー


(この話し方全然慣れないわね……)


 自覚あっていい事だな。


「本日はどのようなご用件で?」


 女性に席を薦めた後、レイアは座ってから話を切り出した。


「はい。学校に新たな学科を開こうと思いまして、こうしてご相談に参りました」


「なるほど。どういった学科でその理由も聞かせてくれませんか?」


「もちろんです。まずは理由からーー」


 校長の話を纏めると、エルフ族はそれなりにいるから精霊学科という精霊使いを育つために新たな学科を開きたい。


 確かにエルリン王国と同盟を結んでからしばらく経った今、エルフはそれなりにいる、当然エルフの子供もだ。


「いい案だと思います」


 精霊使いであるレイアもその提案に賛成し、この学科は是非成功させたいと思っている。


「校長はここに来るというと準備がすでに整いましたよね?」


「ええ、あとは許可だけです」


「わかりました、後で王様に相談します」


 レイアは今すぐ許可を下したいけど一応フェルの意見を聞かないといけないし、彼の判子も必要だからそうはいかない。


「ありがとうございます。それではーー」


「あー、それと一つ伝えたいことがあります」


「はい?」



 席を立とうとしているキーダフリナ校長はレイアに引き留められた。







「畏まりました。注文はそれでよろしいですね? 少々お待ちくださいね」


 来客から注文を取って、フィリーは忙しく店内で動き回っている。


 精霊王国マナフルがエルリン王国と同盟を結んだ以降、彼女が親と営業している宿は大忙しくなった。


 まあ、精霊が多いこの国はエルフ族にとっていい観光先だからな。


 王都には少ないけど。


 キリンキリン!


 と、そこで来客を知らせる鈴の音が鳴いた。


「お待たせしました。お泊まりですか? 食事ですか?」


「えーと、部屋五〇五号室を空いてますか?」


 部屋を取ろうとしてもあまりにも変なリクエストだから、フィリーは一瞬首を傾げた。


「……すみません、その部屋は既に予約されています」


「そうですか……では上階の方で八号室を」


「あー、今回の使いはあなたか」


「はい、上層部から情報を扱ってます」


 そういう事だ。


 やたら特定の部屋を取ろうとしているこの客、実はフィリーのコネの部下だ。


「分かったわ。支払いはいつもの方法で、とりあえず情報を」


 そう言われると客ーーいや、情報屋は一枚の紙をフィリーに差し出した。


 ん? さっきのやりとり? 予めフィリーと情報屋の上層部が決めた暗号だよ、暗号。


「さてーーん? これいつ?」


「二、三週間前ですかね」


(ということはフェルさんがエルリン王国から帰った頃か)


 紙にはレヴァスタ王国の軍は西方から、マセリア帝国は北方の海から進軍している姿が確認されたとの事だ。


「ありがとうーーはい、これはあなたの部屋。今日はゆっくりしててね」


「ありがとうございます」



 一枚の紙を手にして、フィリーは台所の方に消えた。







「あ〜暇ね」


 みんなは戦争の準備で忙しくしている頃、セルディは暇を余している。


「やることない……」


 トボトボと街を歩いている彼女はとても退屈にしているのだ。


 だけどそれは仕方ない。彼女は引っ越したばかりだから。


 一応フェルに尋ねたけど〝散歩でもしてこい〟と言われた。


「はぁーーん?」


 当てもなく歩いている彼女は公園に着くと、木下のベンチに座っている意外な人の姿を見かけてその人物に近付く。


「何しているのですか?」


「ん? おぉ、セルディか。いや、王に追い出されたのだな」


「……何やっているのですか、あの馬鹿?」


 さっきまで目を閉じていて静かにしていたドライアードはそう答えるとセルディは思わずそう言ってしまった。


「ワレに出来る事ないかと訊いたら〝散歩でもしてこい〟と言われてな』


 思わぬ所に同志に出会って、セルディは驚愕している。


「その顔、お主もか?」


「え? あ、はい、まったく同じことを言われました……」


「王、せめて言い方を変えてくださいよ……」


 そこ!? と危うくツッコんだフィリーは何とか堪えて内心に留めた。


 しかし自分に出来きる事はないとちゃんと理解しているドライアードは別に散歩にいけと言われても傷つかない、何とも思わまいのだ。


「まあよい、お主も座ったらどうだ?」


「し、失礼します」


 と、勧められた空いているスペースにセルディは腰をかけた。


「……」


「……」


 き、気まずい! とセルディは内心で焦っている!


 まあドライアードは口数が少ないからな、仕方ないのだ。


「ド、ドライアード様はフェルの妻ですよね?」


 必死に考えていたセルディはやがて話題を思い付いて、自分も気になる事だから早速ドライアードに訊いてみた。


「そうだ」


「となるとドライアード様は精霊の女王、ですか?」


「うむ、そうなるな」


 精霊界は現世と違って王位はない。精霊王と呼ばれたマクス爺もそれはあくまで人間が作った称号に過ぎない。


 その証拠に〝精霊の女王〟なんて誰も、エルフ族であるセルディでさえも聞いたことない。


「あの、精霊界も王族とかいるのですか?」


「ん? いないが?」


「え? じゃあドライアード様が精霊の女王ってのは?」


 いないと言いながら自分は精霊の女王だと肯定したドライアードにセルディは新たな質問を出した。


「そうだな……これも王の影響かもしれんな」


「フェルの影響?」


「まあ、話せないことはあるが話せることを話そうか、暇だしな」


「そうですねぇ……」



 まあ、時間はたっぷりあるよな……二人の暇人に。







「さーて、報告を聞こうか!」


 数日が過ぎて、フェルたちは城の会議室に集まった。


「今日芝居やらないわね」


「芝居と言うな! っていうかレイア、芝居やりたのかそ?」


 自分も芝居言っている……。


「そんなわけないでしょう? ボケてないから心配してるだけよ」


「おいおい、人がいつもボケてるような言い方はよせ」


「いつもの事でしょう?」


 まあ、確かに。


「はいはい、二人とも今日は真面目にやりましょうね」


 とそこでルナはフェルとレイアの会話に割り込んだ


「「いつも真面目だから」」


「……レイアさんならともかく、フェルさんは嘘ですわね」


「な、にっ!?」


 アンナの言葉に全員はうんうんと頷いて、それを見たフェル額を抑える。


「俺の忠実なアンナどこ行った……」


「〝俺の〟……うふ、ふふふ」


「アンナ様、戻ってください」


「ほらフェル、お前のせいだぞ?」


 頭の中にずっと響いているフェルの言葉のせいでアンナはだらしない顔になった……。


「王! 私はいつも王に忠実です!」


「あ、うん、分かってるから落ち着こうな……。」


 そしてドライアードも負けないと言わんばかり身を乗り出してフェルに迫った!


「ねぇ、フィリーさん」


「何でしょう、セルディさん?」



「大丈夫、この国?」



 戦争を前にしてこういうテンションだ……心配になるよな。

レイア「っていうかあんた今まで何してたの?」

フェル「……えっとーー」

ルナ「ギルティ」

フェル「ま、待ってくれ!」


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