100。幕間 あぁ〜美人いなくなるよなぁ〜
2025年8月30日 視点変更(物語に影響なし)
勇者である忍者ーーじゃなく、忍者である勇者はエルリン王国での任務をしくじったその直後、神界にいるとある世界を管理している神々は集まっている。
「アルマま〜だ〜?」
椅子に座っている優雅な白いドレスを着ているふわふわ長い桃色髪の幼女は足をぶらぶらさせながら頬を膨らませている。
「もう少しい待とうね、ロヴァリータちゃん」
「話かけるな、色男!」
そんな彼女を隣の椅子に座っている長い金髪でスーツ姿の美麗な男は宥めようとしているけど、失敗に終えた。
無理もない。
この男は神界で色んな女神に手を出した神だ。そんな男に声掛けられた幼女、ロヴァリータ神としてはいい迷惑だ。
自分が次のターゲットかもしれないと思って警戒を上げてしまうのだ。
「言われてるぞ、デーダルス」
「おいおい、笑いすぎだろう、コルダン」
色男もとい娯楽の神、デーダルスをガハハハッと愉快そうに笑われているのは革鎧を着ているスキンヘッド大柄男、コルダンという力の神だった。
「……主役が遅れてどうするのだ?」
呆れてそんな事を言ったのはテーブルに肘を付いている派手な服装をしているちょっと太った短い茶髪男、商売の神、ゼーン。
「私は忙しいからな。大目に見てくれ」
そしてその台詞と共に現れたのは美しい銀色の長い髪と金の胸当てを着ている戦乙女のような女、彼女は勝利の女神、アルマ神である。
ここに集まっている神々は今フェルが住んでいる世界を治世している神々である。
「一人の人間相手に手を煩わせてるからな、大目に見てやろうではないか」
またもケタケタ笑っているコルダン神。
「まあまあ、皮肉はよしてあげてくれよ」
その通り、コルダン神が放った言葉は皮肉でしかない。だから場の空気が悪くならないようにデーダルス神はコルダン神にそう言った。
「下心が見え見えだから私には効かないぞ」
もっとも本心はそれと同じく綺麗ではないけどな。
「どうでもいいでしょう? 早く会議を始めないか?」
退屈しそうな顔でロヴァリータ神は先を促す。
「そうだな……勇者サトウはソレイ宝珠を回収できなかった」
間を置いたアルマ神の言葉はそれであった。
「完璧の計画だと言わなかった?」
前回の会議でアルマ神の言葉を思い出そうとしているデーダルス神は天井に視線をやって考えそぶりを見せた。
「精霊達に邪魔されたのだ」
「また〜?」
ロヴァリータ神が鬱陶しそうにアルマ神の言葉に反応した。
「再侵入出来ないのかね?」
「不可能だろうな。あの執念深い人間が既に手を加えただろう」
ゼーン神の質問を答えたのはコルダン神だった。
「身元不明な人間に手を煩わせているとはね〜」
真剣に話し合っている他の神を見て、ロヴァリータ神は溜め息を吐いて肩をすくめた。
「まるで神を相手にしているようだ」
「ふん、バカを言うでない」
「そうだな、精霊だからな」
呟いてデーダルス神はそう口にするとすぐにゼーン神とアルマ神に否定された。
「精霊は古代神の作品よ?」
「ガッハッハ! それはあり得ない事だ。古代神は今も眠ってるぞ?」
古代神とはフェルがいる世界をかつて治世していた神々の事で、精霊はその古代神々の眷属なのだ。
人間相手なら何でもお見通しである今世の神々だけど、同じ神とその眷属ならそうはいかなくて、結果精霊という存在はアルマ神たちにとって頭痛の種でしかない。
今アルマ神たちの計画を阻まれている人間は古代神の眷属じゃないかとロヴァリータ神は言いたいけど、古代神はとある原因で今も眠っているからコルダン神にその可能性が否定された。
「それで? 以後はどうするのかね?」
「例の国を消滅する、それだけだ」
「どうやって〜?」
ゼーン神の質問を答えたアルマ神は今度ロヴァリータ神に質問された。
「すでに手を打ってあるよ」
「戦争の事か?」
「あぁ〜美人いなくなるよなぁ〜」
コルダン神に頷いたアルマ神を見て、デーダルス神は溜め息を吐いた。
デーダルス「アルマ、このあとーー」
アルマ「断る」
デーダルス「えー、まだ何も言ってないだろう?」
アルマ「見え見えだ」
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