焼き肉冷凍ファーム、営業中
ツッコミ「(王子様風の声) 庶民どもの間で、今、悪役令嬢がブームだという」
ボケ「えっ? いきなりお前どんなご身分? 貴族なの? お前」
ツッコミ「(王子風) そう、悪役令嬢ブーム。私はこの国の王子。そしてお前は悪役令嬢。(普段の声) ま、やってみれば分かるから。(声のトーンを一段下げて教師風) えぇー、では始めまぁーす」
ボケ「(生徒風、幼く) 気を付けっ、礼っ、お願いします♪」
ツッコミ「(王子風) お前との婚約を破棄する」
ボケ「(以降全て高飛車なお嬢様風)えっ!? 蒟蒻を廃棄する?」
ツッコミ「(普段) いや、期限切れでも余剰在庫でもないから。婚約破棄だよ、婚約破棄」
ボケ「納豆が行き渡りませんわ。わたくしは幼き頃より貴方様の高菜漬け。順を追って説明してくださるかしら」
ツッコミ「(店員風) 確かに納豆は免疫力アップの期待から売り場では品切れ状態となりご家庭に行き渡りにくなっておりまして……。高菜漬けは在庫がございますが、納豆と同じ理由でキムチも品薄状態となっております…… (普段) って俺はスーパーの定員か。食品の在庫状況を順を追って説明してどうする?」
ボケ「美容と健康に食は密接に関わりますもの。どうぞ、マルシェの話をお続けになって」
ツッコミ「(普段) 続けてどうする。(咳払い) コホン、コホン。(王子風) で、えぇー、お前は婚約破棄に納得がいかないのだな。で、お前は私の許嫁であるわけだが。(咳払い) コホン。えぇー、婚約破棄は勿論理由あってのことだ」
ボケ「まぁ、どのような鶏油かしわ?」
ツッコミ「(普段) 親鳥の油じゃねぇーっつの。ちなみに、鶏の油、チーユは中華料理やラーメンスープによく使われます。(咳払い) コホン。(王子風) で、えぇー、婚約破棄の理由であるが、私の後ろにいる令嬢をいびり倒したことだ」
ボケ「まぁ(失礼なっぽく)、捜査令状を炙出ししたなどと」
ツッコミ「(普段) そう、お前は恐喝、傷害の容疑で……って違うわ。そして何故、炙り出し」
ボケ「ふふん。構わなくってよ。わたくしは極悪令嬢。凶悪犯罪どんと来いですわ」
ツッコミ「(普段) いやいや、極悪って。凶悪犯罪とか、ほんと駄目なやつだから。普通の悪役令嬢でいいから。ちなみに、炙り出しはミカンの汁で出来ます」
ボケ「わたくしはただ、善意で話しかけて差し上げただけですわ。ドレスの表裏と前後ろが間違っておいででしたもの」
ツッコミ「しかし、こちらの令嬢は人前で大恥をかかされたと申しておる」
ボケ「表裏と前後ろを違えた状態のドレスで人前にいる時点で大恥でございましょう? それに、そちらの方が先に、わたくしに原価を割ったのですわ」
ツッコミ「(定員風) 原価を割ったら赤字ですので、スーパーの経営が非常に苦しくなり…… (普段) ってまたスーパーかい」
ボケ「マルシェと言ってくださる?」
ツッコミ「(普段) マルシェ! お前、悪役令嬢はまり過ぎだろ。(咳払い) コホン。(王子風) えぇー、では、お前はこちらの令嬢が喧嘩を売ったと申すか?」
ボケ「ええ。ドレスに葡萄酒をかけられたのですわ」
ツッコミ「(王子風)たまたまかもしれぬではないか」
ボケ「ドレスは淑女の普段着であり戦闘服。それに酒をかける行いは宣戦布告と同じこと。なので、魚粉を一掴み振りかけてやりましたわ」
ツッコミ「(王子風) ギャフンと一泡吹かせたのだな。はぁ、お前の激しい言い違いには通訳が必要だ。お前の言葉を正しく理解できるの私だけかもしれぬ。幼き頃より許嫁である、お前の最大の理解者は私……ということか」
ボケ「えっ? 出前のパッタイのジャンバラヤ?」
ツッコミ「(普段) お前の最大の理解者。ちなみにパッタイはタイ料理。ジャンバラヤはアメリカのルイジアナ州の代表的料理で、スペインのパエリアが起源と言われています」
ボケ「出前は空輸かしら?」
ツッコミ「(普段) 出前とか無理だから。輸送費、高過ぎるだろ。王子に無駄遣いさせると国民が不満を持つから。(咳払い) コホン、コホン。(王子風) えぇー、今回のことは……婚約破棄の件は水に流そう。お前が料理への造詣が深いと、私は初めて知った。お前が料理する様子が目に浮かぶようだった。惚れ直したぞ、我が許嫁よ」
ボケ「浸け直したの? また高菜漬けを?」
ツッコミ「(普段) いいなづけ。もーえーわー」
2人「有り難うございました」←ボケは足をクロスさせてドレス端を持って腰を落とすお嬢様風のお辞儀で