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第18話 新米捜査員は、皇帝陛下と作戦会議をする。その1

「さて、お遊びは終わりだ。各方面から集まった情報を元に、明日からの領主会議への対策をしたいと思う。皆の衆、身分等はこの際どうでも良い、忌憚(きたん)無い意見を言ってくれ」


 今は、市場で陛下と一緒に「暴れん坊将軍」&「水戸黄門」ごっこをしてきた後の夕方。

 ちゃんと市場で夕食の材料を買い込んできたのだけれども……。


「すいません。なんで2日連続、陛下が神殿で僕の作った料理を食べているのでしょうか?」


 僕は、美味しそうに食事をしている陛下を見て呆れる。


 ……陛下って外見の年齢どおり食べ盛りで、欠食児童なんだろうか?


「悪いか? タケの料理は毒見が必要ない上に美味しい。また神殿は余所者が入らないから秘密の会談にはぴったり。どこに問題があるのやら?」


 悪びれもせずに、僕が作った水餃子を美味しそうに食べる陛下。


 ……マムに頑張ってもらって沢山挽肉作ったのが良かったよ。後、神殿の料理担当のお兄ちゃんが、美味しいスープストックを大量に作ってくれていたので、ラッキーでした。


「それはそうなのですが……。僕達は良いとして神殿関係者は、緊張でご飯が喉を通りませんよ」


 2日目とはいえ、粗相が許されない最高権力者と一緒の食事というのは普通は有り得ない。

 比較的、貴族との付き合いが多い神殿関係者でもキツイだろうと僕は思う。


「そうか? まあ、細かいところは余は気にせぬぞ。余に害が無い限り、少々の不都合や粗相は気にせぬ。賑やかな食事、結構! 一人で冷めた食事をするのは、余も好まぬからな」


 端正な顔を少し曇らせる陛下。

 貴族社会では、いつ何時(なんどき)暗殺が迫るか分からない。

 リーヤでも嫌がるのだ。

 更に危険が多い陛下なら、その気苦労も普通ではあるまい。


「タケのご飯は美味しい、それで構わないという事じゃ! 陛下、そうですよね」

「うむ、リリーヤよ。その通りだ! ははは!」


 妙に意気投合する陛下とリーヤ。

 この2人、案外お似合いなのかもしれない。


「陛下、先に申しておきますが、タケは此方(こなた)に一生使えてくれると申してくれており、仮ながらも此方と婚約をしております。ですので、陛下にはタケはやらぬのじゃ!」


 リーヤは、いつものドヤ顔で僕の所有権が自分にある事をアピールした。


「はいはい、その辺りは存分に判っておる。エレといい、リーヤといい、よほどタケを大事にしておるのだな。タケよ、2人の期待に存分に答えるが良い。ついでに余にも、そのおこぼれを貰えたら嬉しいぞ」

「はっ!」


 僕は、食卓から立ち、陛下の方へ向き直り、膝を付き顔を伏せて返答をした。


「よいよい、そんな堅苦しいのはナシだ。余と、いや僕とタケは、時代劇ごっごをした遊び仲間だからね」


 僕は陛下の言葉に顔を上げると、そこには外見どおり「くったく」のない少年の笑顔があった。


 ……ああ、この(皇帝陛下)も身分に固められて苦労をしているんだ。僕は、その身分から一切関係ないから陛下も気にせずに遊んだんだ。


「あ、ありがたき幸せにございます、陛下」

「だから、もーそういうのは良い! タケ、事件が解決したら、また遊んでくれるし、ご馳走も一杯作ってくれるよな?」

「当然です。陛下には、また旨いぞと吼えさせて頂きます!」


 僕は立ち上がり、席に戻ってニッコリと陛下に笑い返した。


「それを言うのなら、此方も陛下の遊び仲間じゃ! 遊び仲間を困らせる悪党は此方人等こちとらが、ぶっとばすのじゃ!」

「リーヤ、今後とも頼んだぞ!」

「了解なのじゃ!!」


 なお、言うまでもなく欠食乙女の異種族姉妹(ナナとリタ)は、陛下を見ることも無くモクモクと水餃子を食べていたとさ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「で、問題は以下の方々ですね?」


 流石に困っていたマムのご両親ら神殿関係者は食事後退席して頂き、作戦会議が行われた。


 僕達は、陛下や側近の方から聞いた話、マムからの情報など等をフォルがまとめた書類を見ている。


「うむ、ポータムにゲートが開かれる以前に国内で最大の税収を得ていたが、現在では時代に取り残された領主、まだ災害からの復興途上で割をくっている領主、そして周辺諸国と怪しげな通じ方をしている領主だ。最近では、地球とも怪しげな関係を繋ごうとしている者もいるらしい。彼らが、余やアンテキオキーア伯、モエシア辺境伯に対して悪感情を持っておる」


 陛下の説明からして、基本的に味方の方が少ないと思っていた方が良いらしい。


「僕から意見具申宜しいですか?」

「ああ、奇策を頼むぞ!」


 妙に期待されている僕であった。


 ……ちょい、困るんですけどぉ……。


「まずですね、完全に敵に回りそうな方々と、どちらにつくか考え中の方々を分けて考えるところからだと思います」

「それは、こちらでも考えてはいるところだ。さてタケはここからどうする?」


 乗り出すように僕の方へ顔を近づける陛下。

 僕を値踏みするような雰囲気をも感じてしまう。


「敵になるのは、もうしょうがないので痛い目を見てもらう様にします。しかし、考え中の方々には、こちらに付けば得をすると理解願えれば良いのでは無いですか?」


 コウタは、敵を味方にする事で戦力を増やしたと聞く。

 僕には敵まで引き込む度量も甘さも無い……はず。

 とにかく味方を増やす、少なくとも敵対するのを防ぐだけでも話は変わってくるだろう。


「となると、何かエサを目の前に出すと? 余もそこまでは考えたが、そこまで魅力的なエサが見つからなかったのだ。ただ、金をばら撒くのでは不正が増えるだけだからな」


 金権政治は不正まみれになるのは、世の流れだ。

 しかし、単純には金にならぬとも長期的に金になるものをチラつかせればどうだろう?


「地球技術の開示を、エサに使うのはどうですか? すでに農業関係では一部導入されていると聞きます。他にも喉から手が出る情報、知識がありますでしょう。それらを陛下経由で開示するのです。地球の企業や国家も一旦陛下経由で各地へ参入するようにすれば、今のようにモエシアだけ潤うという事は少なくなると思います」

「ほう、金で無く、技術や情報を諸侯へ与えると」

 どうも陛下とのパートは食事シーンが多くなりますです。

 外見どおり食べ盛りの欠食児童の様です。(笑)


 では、明日の更新をお楽しみに!

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