表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/351

第10話 新米捜査員は、敵を待ち構える。

「では3人の事、宜しくお願い致します」

「はい、エレンウェ様。この(おぼろ)にお任せ下さいませ」


 僕達は捕まえた襲撃犯3人を朧に任せ、一路帝都へと向かった。

 ナナによると朧は異空間をコントロールする力に長け、別位相空間に別荘的なものを作る事が可能らしい。

 そこに襲撃犯を収容し、死なない程度にもてなすそうな。


「で、今晩逗留するカリアリで姫様を回収に来るバカを捕まえるんですよね」

「ええ、そのつもりなの。さて、どんなのが引っかかるのかしら?」


 マムは随分とノリノリだ。


「では、僕達は何処で仮眠しましょうか?」

「そうねぇ。宿屋は危険だけれども、街中で車中泊というのもねぇ」


 予定外の街での逗留は危険が多くなる。

 特に今回は確実に敵に会うから、すぐに逃げられ、かつ安全な休憩所が欲しい。


「だったら、また朧さん呼ぶの! 異空間ラウンジの一部貸して貰おうよ。どうせ襲撃犯以外誰も居ないんだし」

「お姉ちゃん、それグットアイデア。わたしたちも良くこの手使ったよね!」


 異種族姉妹は、魔神使いが荒いらしい。


「また私の出番ですか? まあ、お2人の安全の為にも私の『別荘』を使うほうが安全ですので、どうぞ」

「朧さん、いっつもありがとー!」


 突然、走行中の4WDの天井に空間跳躍してくる朧。

 もうこのくらいでは、僕も慌てはしない。


「何から何まですいませんです、朧さん。本来は僕達の仕事なのに、ご無理言いまして。チエ様やコウタ様には宜しくお伝え下さいませ」

「いえいえ、私でお役に立てるのなら嬉しい事です。チエ様達にもお話お伝え致します」


 実に有能な執事系魔神、僕もこういう味方が欲しいものだ。


「タケや。味方に頼るのは良いのじゃが、自分も強くなるのじゃぞ」

「うん、それは分かっています。自分に出来る事、出来ない事を考えて色々努力してみます。ずっとリーヤさんを守っていくためにもね」


 ……コウタさんは、そのお人好しな活動で、敵すらもどんどん味方にしてゆき、自らの力も強くしていったそうだ。僕が同じように出来るかは不明だけれども、皆を、リーヤさんを守れるくらいには強くなりたい。


 僕はリーヤに、強くなる誓いを立てた。


「ちょ、後にギャラリーが居る中で此方に告白じみた事を言うのは、恥ずかしいのじゃ!」

「あら、リーヤちゃん。嬉しいのに恥ずかしがるんだ。ボク、2人を応援するよ」

「うん、わたしもリーヤちゃんとタケシお兄ちゃんを応援するの!」

「険しき道でありましょうが、お2人ともご精進なさってくださいませ。では、私はこれで」


 姉妹だけで無く魔神からも励まされた僕。

 その魔神は僕達に話した後、再び空間跳躍し居なくなった。


 ……朧さん、ややこしくなりそうだから逃げたのね。


「タケ、こっちにも通信繋がりっぱなしだから、発言に注意してね」


 ……あう、作戦行動中だから回線繋ぎっぱなしだったよ。


 僕が、この後ウチのメンバー達にもずっとからかわれてしまったのは、お約束である。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「この店は、何が旨い?」


 ここは、カリアイにある「あまり」上品では無い酒場。

 そんなところに、場違いな上質な服装の男が入り、入り口近くの席に大柄な狼系獣人と2人並んで据わっていた、室内なのに羽が付いた帽子を被っている少年に尋ねた。


ウサギ肉(ラパン)のグリルかな」


 決してそんな上品な料理が出るはずもない店で、そんな答えを聞いた上品な男は少し疑問に思ったのか、黒髪の少年に聞く。


「キミ達がそうか。店の名前や目印の羽帽子、そして合言葉があるから間違いないとは思うのだが、聞いていた風貌や人数と一致しない。何よりキミみたいな子供と獣人がなんで一緒なのか?」


 少年は答える。


「そりゃ、相手が手ごわかったからさ。アンタが言っているのはオレのオジサン達だけれど、敵にやられて全員オタブツさ。小鬼(ゴブリン)達も全滅して、オレは今わの際のオジサンに後を頼まれてエルフの姫さんだけ拉致して逃げたんだ。この獣人は姫さんを運ぶのがオレ1人じゃ出来なかったら、後から雇っただけさ」


「なら良い。で、姫は何処に?」

「そりゃ、連れまわせねぇから別の場所に隠してある。おっさん、付いてきな?」


 少年は机に銅貨を数枚置いて、獣人を連れて酒場を出る。

 酒場を出た少年の後を、上品な男は付いていった。


「おっさん、あんた1人か? 馬車でも無いと姫を連れ出せねえぞ」

「今、馬車を呼んだところだ。姫様が居るのは、ここから遠いのか?」


 上品な男はスマホを操作し、どこかへ連絡をした。


「街外れの廃屋に姫を隠してある。それより金は、ちゃんとくれるんだろうな? オジサンの家族にも金渡さなきゃならねーんだ」

「ああ、馬車に積んであるから大丈夫だ」


 少年のすぐ後を、大柄な獣人は黙って付いてゆく。


「くっそ。このケモノがいると簡単に終わらないぞ」

「ん? 何か言ったか?」

「いや、こっちのことだ」


 上品な男は、小さな声で毒付いた。


「ここが、そうさ。中に入れや」


 そのうち、郊外にある廃屋に着く。

 そこは昔、地域の大商人が使っていた別荘跡で、大災害時に商人が死亡した後は放置されていて、今では浮浪者や犯罪組織が隠れ場所に使っている。


「姫さん、待たせたな」


 荒れ果てた部屋の中、小さなランプが置かれており、その灯りに照らされて耳の長いエルフ女性が毛布を敷いた床に転がされているのが、男の眼に見えた。


「確かにエルフだな。では、ご苦労だった。金を渡すから待っていろ」


 男はスマホで連絡をすると、廃屋にどやどやと多くの武装した兵士が入ってきた。


「こ、これはどういう事だい?」

「ははは! お前達は、もう用済みなのさ。姫さえ貰えば、こちらは問題ない。『トカゲの尻尾切り』という事だよ」


 上品な男は、それまでのすました顔を邪悪な笑みで崩した。


「あーあ。やっぱり予想どーりなんですね。ワンパターンというか困った事ですよねぇ、マム」

「ええ、全く予想通りすぎて困っちゃうくらいね」

「拙者、先程から笑うのを辛抱するのがやっとでござったよ」


 少年は今までとは全く違う丁寧な口調でエルフ女性と話し、獣人も笑いをかみ締めるような表情で話し出した。

 上品な男は、少年や獣人、そして姫が意味不明な事を話すのを聞き、驚いた。


「何!? お前ら、一体なにを言っている? まさか、姫じゃないのか?」

「あら、ありがとうございます。わたくし、そんなに若く見えるのかしら。嬉しいわぁ」

「マム、おふざけはイイ加減に」


 姫だったはずのエルフ女性は、縛られていた筈の縄を自分で解き、笑顔で男に礼を言うが、それを少年に(たしな)められた。


「ま、まさか! お前達は!?」

「はい、その通りです。貴方達の目の上のたんこぶ、ポータム異界技術捜査室ですの!」


 そして、廃屋が強烈な照明に照らされた。

 タケ君、日本人の間でも未青年に見られがちなので、地中海系白人が多い異世界ではよく子供扱いされます。

 今回は、それを逆手に取って少年に化けて囮捜査しました。


 では、ブックマークなど頂けたら嬉しいので、宜しくです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ