第3話 新米捜査員は、エルフの姫様に更に驚く。
「フォルちゃん、久しぶりぃ」
「にゃんこちゃん、元気してましたか?」
「ナナお姉ちゃん、リタお姉ちゃん、久しぶりですぅ」
応接間から事務所へ来たリタ姫達は、きゃぴきゃぴとフォルと仲良さそうに話す。
「あれ? フォルちゃんは、お2人と知り合いなの?」
「はい、タケお兄さん。わたし、昔コウタお兄ちゃんやお姉ちゃん達に命を助けてもらったんですぅ。その後も色々と助けてもらって、日本の大学に通う際にも援助やらしてもらっていたんですぅ」
人の縁とは不思議なもの、世間は案外狭い。
「あれ? じゃあフォルちゃんも辺境伯の正体知っていたんだ」
「はい、そうですぅ。お兄ちゃんから口止めされてましたぁ」
……命の恩人から頼まれたらしょうがないか。しっかし、どんだけお人好しでお節介焼きなんだろうか、コウタさんって。僕は、そこまでお人好しじゃいられないよ。
「タケ、英雄殿と自分を比べてもしょうがないのじゃ。人それぞれに役目がある。タケは、此方の役に立てばイイのじゃ!」
「ありがとうね、リーヤさん」
僕の顔色を見て考えている事を察して励ましてくれるリーヤ。
僕には、もったいない女性だ。
「モリベさん、人はそれぞれですよ。コウ兄ちゃん私生活はダメダメだし、優柔不断だし、損してばっかりだし、お姉ちゃんやわたしを大事にはしてくれるけれど、すぐに何処かへ飛んで行っちゃうんだよ。貴方は貴方らしくしていたらイイと思いますの」
「そうそう、ボクみたいな可愛い嫁を放置はしちゃ駄目だよねぇ。モリベさんはリーヤさんを大事にしてあげてね」
2人も僕に対してフォローしてくれる。
早速ボクとリーヤの関係を見抜いているのだ。
2人の花のような、そう「ひまわり」を連想させる温かくて優しい笑顔がとてもステキだ。
「ありがとうございます。まさかお2人からそんなお言葉を頂けるなんて」
「此方からも礼を申します。わたくしもタケを大事にしたいと存じます」
リーヤも礼儀正しく貴族令嬢として2人に返礼をした。
「あらぁ、リーヤ。今日は大人しいのね。さっきまでの焼餅はどうしたのかしら」
「えー、それ気になるねぇ。リーヤん、タケっち取られたくなかったのかい? 後、姫様の日本語、とっても可愛いですね。アタイはどーも女の子っぽい話し方できないんだ」
「拙者は、何故に姫様が日本通となられたのか知りたいでござる」
「アタクシ、姫様達に何処かシンパシーを感じますの。失礼ながらオタク属性おありですか?」
ウチの面子は、姫様を囲って好き放題言い出した。
「皆様の質問にお答えしますから、ちょっとお待ち下さいませ。お姉ちゃん、やっぱり通訳無しで話せるの楽でいいね」
「リタちゃん、語学は大事だよ。わたしが通訳なら安心だけれども、他の人が悪意持って翻訳したら外交は大変になるんだからね。だから勉強は大事なの!」
姫様達も笑いながら皆と談笑している。
「はあ、姫様。気を抜きすぎでございます。日本語が通じるとなると、すぐに気品がなくなるのは以前から困った事です。今後、日本政府との会談が思いやられますぞ」
老執事が愚痴っているが、変に気取っているよりも親しみがって僕はいいと思う。
さっきまではちゃんと外交もこなせそうにしていたし、スイッチのオンオフが出来るのなら大丈夫だろう。
……そうか、僕達が警護・送迎役に選ばれた理由の一つが日本語が話せるからなのか。秘密会議も出来るし、気心も分かりやすいから。
「わたし、日本で中学校から大学まで通ったので、語彙は母国語よりも日本語の方が上なんです。後、お姉ちゃんにアニメいっぱい教えてもらったの。だから、オタクネタもいっぱい分かるよ。魔砲少女ものなんていいよね、どっかーんって。わたしの魔法も、そんな感じだし」
……気品溢れたエルフの令嬢がオタク道まっしぐら。それでいいのだろうか? まあ、こちらの魔族もずいぶんとオタク道へ進みつつあるから、しょうがないのかもしれない。
それから暫くの間、僕達は和気藹々、姫様達とお話をした。
◆ ◇ ◆ ◇
「では、参りますね。姫様」
「良しなにお願い致します」
リタ姫とナナは僕の運転する4WD車に、ルーペットはシームルグ号に乗って、一路最初の逗留地であるアンティオキーアを目指す。
「もう出発したのじゃから、気を使わんでもイイのじゃ! 車内は日本語会話で問題ないのじゃ!」
毎度助手席に座る同乗者のリーヤが、リタ姫達にくつろぐように話す。
「では、お言葉に甘えさせて頂きますわ、お姉様。リーヤちゃんて呼んでいいですか?」
「それは嬉しいのじゃ。タケも『ちゃん呼び』はしてくれぬのじゃ!」
リタ姫から、「ちゃん呼び」をされて嬉しいリーヤ。
僕の方を見て、暗に「ちゃん呼び」しろ、と言っている。
「リーヤさん、僕はいくら可愛い人でも歳上の女性を『ちゃん』とは言えないです。姫様やナナさんに対しては、歳下ですが同じです。流石に高貴な方々に『ちゃん』とは言えないですよ」
「えー、可愛いのは正義じゃないですか、タケシさん? ねえ、お姉ちゃん、リーヤちゃん」
「うん、可愛いは正義なの。のじゃ系ロリお姉様ってチエ姉ぇもそうだしステキ! ね、リーヤちゃん」
「そうじゃろ、そうじゃろ。どうもタケはオタク系に理解が薄いのじゃ! 此方はロリばばぁ枠じゃと以前から言っておろう!」
女性が3人寄れば姦しいという。
その通り、僕は綺麗どころ3人に圧倒された。
「ちょ、ちょっと僕をあまり責めないでくださいな。こんなペーペー、皆様の権力の前ではどうにもなりません」
「ほう、タケや。権力では勝てぬが、この3人に戦闘では勝てると思うてか?」
「わたしも、そこそこ強いよ。魔砲一発で小山ひとつくらいは吹っ飛ばせるし。ね、お姉ちゃん」
「そうね、ボクもコウお兄ちゃん、いやコウタさん程じゃないけど、そこそこやるよ。女の子だからって舐めないでね」
笑いながら半分冗談で話しているけれども、3人から溢れる魔力は相当のもの。
リーヤの力は存分に理解しているが、残る2人の魔力も僕なんて比較対象にもならないレベル。
……うん、この子達は敵に回したらいけない人達。可愛くて強いって最強だよね。
「は、はい。皆様には私め如きでは勝てるはずもございませんです」
「でもアテにはしておるのじゃ、タケよ」
「そうですわね。御願いしますね、タケシお兄ちゃん!」
「妹を御願いね、タケシさん!」
「はい!」
可愛い女の子達から頼りにされる事は、千人力!
存分に戦うべし。
「タケ、通信が繋がりっぱなしだから、あんまりバカな事は言わないでね。マムからの忠告よ」
「タケシ様、姫をくれぐれも宜しくお願いしますぞ」
……あう、そりゃ困った。後からルーペットさんに謝らないと。
前作最終回以降の流れを少しだけ書いて見ました。
やっとナナちゃんと結婚したコウタ。
ナナちゃんが24だから、コウタは34の男盛り。
そろそろ子供考えないと、成人前に還暦になっちゃうぞ。
と、後6年くらいで還暦になる作者は怖いです。
「オイ、まだワシの出番無いのじゃ!」
はいはい、チエちゃん。
ちゃんと名前は出してあげたでしょ。
頼むから「第四の壁」突破して作者を虐めないでくださいな。
では、今後とも宜しくです。




