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第2話 新米捜査員は、エルフの姫様に驚く。

「あら、姫様何かありましたの? ウチの若い子達が何かしましたか?」


「いえ、お2人の様子がちょっと可笑しかったもので。そういえばエレンウェ様にお聞きしたい事がありますの。こちらの捜査室の皆様は地球の言葉、特に日本語が分かると聞いていますが、どうですか?」


 くすりと上品に笑うリタ姫、何の脈絡も無い事をマムに通訳経由で聞いてきた。


「はい、その通りです。後にいるタケ、いえモリベ保安官は地球は日本出身ですし、他のメンバーも日本語会話に問題はありませんわ」


「そうですか。では……」


 そう言った後、(はかな)げながら凛としていたリタ姫の雰囲気が変わった。


「ナナお姉ちゃん、もうイイよね。わたし、神聖語(ドイツ語)よりも日本語の方が楽なんだもん」

「あのね、リタちゃん。いきなりそういう訳にもいけないでしょ。ね、ルーペットさん」

「はいですじゃ。姫様は、すぐに気を抜こうとする悪い癖があるのですじゃ」

「だってぇ、わたしこの間まで日本でじょしだいせーだったんだよ。いきなり外交なんて出来る訳ないよぉ」


 僕達は唖然とする。

 さっきまで高貴なイメージだった姫様は、日本語で若い女の子っぽい会話をし始めた。

 通訳の女の子に対してお姉ちゃんと呼び、しゃんとしていた姿勢を崩し、文句を言っている。


「あ、あのぉ。これは一体?」


 マムも、つられて日本語で聞く。


「はい、エレンウェ様。申し訳ありません。ウチの義妹(いもうと)がこんな有様で。」


 通訳の女の子がマムに頭を下げる。


「妹? あのどう見ても貴方はヒト族なのですが、どうしてエルフの姫が妹なのですか?」


 マムは頭をかしげて女の子に聞いた。


「あ、名乗っていませんでしたね。ボ、いやわたしは(おか)、ああんちがう。功刀(くぬぎ) 奈々(なな)と申します。この子リタちゃんは、地球名では岡本(おかもと)リタ、わたしの旧姓は岡本ですが、私の義理の妹としてもう10年以上一緒に暮らしているんです」


 通訳の女の子ナナは、リタ姫との関係を話すが、どう聞いていてもチンプンカンプン。


「な、何がどうなってそのような事になったのですか? もし良かったら教えて頂けませんか?」

此方(こなた)も知りたいのじゃ!」


 マムだけでなく、リーヤも前にのめり出してナナに聞く。


「あら、そちらの女の子さん。サイズといい話し方といいチエ姉ぇにそっくりね。魔力が高いのも」


 ナナ、魔力を見る力もあるらしい。


 ……小さな女の子がお姉さん? 分からん?


「なんじゃ、そのチエというのは?」


「そうね、わたしたちのお姉ちゃん。すっごく強くてすっごく賢くてすっごく優しい人なの。こっちに来たがっていたんだけれども、別の急用で今は遠い星でお仕事中ね」


 ……ますます分からん?


「じゃあ、わ、んっもう良いや。昔の事を話すからボクで話すね。ボク達はね……」


 ボクっ子だったナナから話された話は、ある英雄の長い長い冒険談だった。


「でね、そのコウお兄ちゃん、とボク。この間やっと結婚したの。でもね、また他所の星の冒険だ、人助けだって言って、すぐにいなくなっちゃった。せっかく結婚したのに寂しいの」

「うん、わたしもさみしいよ。コウ兄ちゃんに立派な姿見せたかったのに」

「姫様、もう手遅れですが威厳や可憐さをお忘れなく」


 もう諦め顔のエルフ老人(ルーペット)を前に、乙女の顔で話す異種族姉妹。


「マム、もう確定です。話に出ているコウタさんが辺境伯なのですよね」


「……もう隠している意味は無いわね。その通りなの。コウタ・クヌギこそモエシア辺境伯ね」

「納得の話じゃ。そこなるお人好しの辺境伯。タケもイイ加減お人よしじゃが、更に上回るのぉ。それに納得の強さじゃ、敵が異界の邪神だったとはのぉ」


 マムは、やっと僕達に答えを言ってくれた。

 ザハール様の言った、辺境領以外の出身、英雄。

 そしてレディが言った、地球出身のお人好し。

 全ての条件が一致する。


「魔剣をお使いになられる英雄ですか、辺境伯は。あ、ではナナさんは伯爵夫人では無いですか?」


 僕はナナに直接話してみた。


「えー、言われて見たらそうなんですけど、ボクはそんな立派な女性でも無いですよ。大卒2年目でやっと通訳の仕事を出来始めたばかりですもの」


 女子大生くらいに見えた彼女、童顔の僕が言うのもなんだけれども、僕より1つ下の24歳、若奥様なのだ。


「第一、旦那は宇宙を飛び回って帰ってこないし、貴族の身分なんてイヤだって逃げてばかり。この間も別の星で名誉村長だの、永久騎士にさせられたって文句言ってたし。今晩も電話しなきゃ。」

「だよねぇ、コウ兄ちゃんには早くお姉ちゃんと子供作って欲しいよ。じゃないと私が譲ってあげたの、後悔しそうになるもん」


 どうやら姉妹でコウタを取り合っていた様だ。

 でもその言葉と裏腹で仲良さそうに話す異種族の姉妹は綺麗に見えた。


「リタ様はエルフですから年齢が地球人とは取り方が違うのでしょう? わたくしは、これでも150歳は越えていますが」


 マムはリタに年齢を聞く。

 同じエルフの血を継ぐものとして気になるらしい。


「いいえ、わたしはナナお姉ちゃんの一つ歳下の23歳です。先ほどもお話したとおり、昨年日本の大学の政経学科を卒業して、今年から外交デビューなんです。お母さんの話によると、私の星アルフに住むエルフ族は別の惑星から移住してきた移民の生き残りで、地元や地求人の方々との長年の配偶で寿命が地球人よりも少し長いくらいになっているんですの」


 そういえば、以前日本に入り浸りするエルフの姫様の話を聞いた事があったけれども、それがリタ姫だったのか。


「お母様とは?」

「はい、ボクの母で元医療関係者なんです。最近は、もう1人の妹も9歳になったので、また職場復帰しています」


 僕の問いに答えてくれたナナ。

 すっかり彼女たちの勢いになんか圧倒されっぱなしの僕達であった。

 答え合せです。

 彼女たちは、私の作品を読んでいる人にはお馴染みの子達、「功刀康太の遺跡探訪」のヒロイン、リタちゃんとナナちゃんです。

 少し成長し、大人になっての登場になりますね。

 ここから、前作との繋がりもどんどん増えてきるので、「あちら」も「こちら」も宜しくお願い致します。


「オイ、ワシの出番はマダなのか? はよう準備するのじゃ!」


 もう1人の「のじゃ悪魔っこ」、第四の壁を無視できる彼女は、今も私を脅してくれています。


「皆の衆、ワシの出番を楽しみに待つのじゃ! キャラかぶりするのを生み出すとは、作者にも困るのじゃ! ワシこそがオリジナルなのじゃぞ!」


 はいはい、チエちゃん。

 もうちょっと待っててね。(苦笑)


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