第1話 新米捜査員は、別世界のエルフの姫様に会う。
さあ、新たな物語の始まりです。
第5章、帝都を襲う影とタケ君たちは戦います。
今回はゲストキャラも沢山登場しますよ!
更に40話、10万字以上の大長編ですので、乞うご期待!
「わたくし、リタ・フォン・エスターライヒと申します。今回は異界技術捜査室の皆様にご足労をおかけして申しわけございません」
僕達の前に、凛として高貴な雰囲気を纏う美しい姫がいる。
「いえいえ、リタ様のお国と帝国の国交樹立のお手伝いが出来るのですもの。わたくし達、全力で姫様のお役に立てたらと思います」
マムと姫様、エルフの美女同士が、応接間の席に座り向かい合って話している。
僕とリーヤは保安官としてマムの後方に立ち、エルフの姫様の後方には若い東洋系の成人したばかりくらいに見える女の子と老齢のエルフが立ち、姫様に通訳をしている。
マムは金髪碧眼、姫様は白髪に近いプラチナブロンドに翠の目。
後の通訳の子も、長い黒髪をワンレンに流し、黒い目のスレンダー可愛い系美人
実に目の保養になる。
……エルフといってもマムとは星も違うし、華奢で可愛い感じなんだよね、姫様。でもあの会話、どう聞いてもドイツ語に聞こえてくる。どうして違う星の人が地球のドイツ語を話すのだろうか? それにあの通訳の子、どう見ても日本人の女子大生っぽいんだよね。左手の薬指に指輪しているから、決まった彼氏いるっぽいけど。
「痛た!」
僕は、突然足に痛みを感じて足元を見る。
そこにはジト目で僕を睨み、僕の足をヒールで踏んづけているリーヤがいた。
「其方、美女に現を抜かし、此方の婚約者である事を忘れたのではなかろうな?」
こそっと小声の日本語で話すリーヤ。
……確か、僕は重婚Okって話じゃなかったっけ? エルフの国のお姫様ならリーヤさんよりも格上だから心配しているのか、それともただの焼餅なのか?
「あのね、まさか僕がエルフの姫様と『どーと』なるなんて無いでしょ。僕にはリーヤさんがいるんだし」
「なら、イイのじゃ。じゃが、鼻を伸ばすような下品な顔はせぬようにな。此方の婚約者として威厳を持つのじゃ!」
小声の日本語で話し合う僕達に、通訳の女性だけで無く姫様もぴくりと反応をしている。
……あれ? まさか、この2人日本語が分かるの? 違う星の人なんでしょ? どうして?
ここから始まる冒険が、どれだけ大変な事になるのか。
この時の僕は思いもよらなかったのである。
◆ ◇ ◆ ◇
「皆さんにお話があります。このたび、わたくし達に帝国皇帝陛下から命令が来ましたの。近日中に帝都で行われます領主会議及び近隣諸国・地球との会議において、新たな友好国いえ、友好星として加入した国の代表代理のお姫様の帝都への送迎及び警護の任務です」
きりっとした表情のマムが、捜査室全員を集めてブリーフィングを行う。
「質問じゃ。まずどうしてその国のお姫様を此方人等が送迎に警護をするのじゃ? 普通は、向こうから来る人が警護をするものじゃろ。それになんでポータムから移動するのじゃ? ヨソの星から来るのじゃから直接帝都に行けばいいじゃろ?」
リーヤがマムに質問する。
「そうですよね。二度手間になりますよね。何か意味があるんですか、マム?」
僕もマムに質問を重ねた。
「本当なら任務ですから、理由ナシに受けてもらうのですけれど、わたくしの権限で情報開示しますわ。何も分からずに姫様を警護するのはイヤでしょ」
マムは、真剣な表情を崩して話す。
「この情報は公式発表があるまで秘匿情報とします。他言無用よ。その姫様、リタ様というのですが、彼女の星は帝都やこの星とは直接ゲートでは繋がっていないのです」
異世界とも言われる、この惑星。
超古代に異形の種族「古のもの」によって構築された全宇宙規模の転送システムのハブ惑星である。
様々な星々とのゲートがいたるところにあり、帝都の地下深くに基幹システムがあるという。
9年前の次元融合大災害、この宇宙規模のシステムを悪用し、外宇宙からナニかを呼び出そうとした「神」を名乗るものが起こした災害で、地球もそれに巻き込まれた。
そして邪な「神」は皇帝と英雄により討たれ、その際に地球との永続的なゲートが開いたと聞いている。
「では、どうやってこの星へやってくるのですか? まさか超光速の恒星間宇宙船を既に開発しているのですか?」
「それはSFアニメの世界じゃな? でも本当なら此方は宇宙船を見たいのじゃ!」
リーヤが、面白そうに僕の発言に食いつく。
「タケが何を言おうとしているのか、わたくしには分かりませんが、違いますよ」
マムは、苦笑いで僕の回答を否定した。
「その星、アルフとは地球との間にゲートが存在するの。なので姫様は地球経由でこちらに来られるのよ」
納得の理由である。
地球経由なら、こちらに来るのはポータムのゲート経由。
しかし、何故僕達なのかという疑問が残る。
「ポータムから帝都へ行くというのは理解できました。では、何故僕達が警護をするのですか? 向こう側の警護は?」
「それはね、あちらはまだまだ復興途上なの。次元融合大災害の被害は無かったのだけれども、それ以前。姫様が幼い頃に別惑星からの侵略を受けて、一度は壊滅状態までなってしまったの。その際に姫様のお父様は亡くなり、姫様も一時は命の危機に陥ったのですけれども、ある英雄の活躍で敵の撃破、母星の奪取に成功したそうよ」
……なんか何処かで聞いた話だよね。ウチでも災害鎮圧時に英雄が活躍したって話だし。
「まさか、その英雄さんって?」
「さ、さあ。わたくしもどんな方か詳細は知らないの」
マムは、どこか焦って誤魔化す。
……これは実に怪しい。まさか英雄は、こちらの星や地球を救った英雄と同一人物じゃないのか。つまり、辺境伯の正体では無いのか? もしかして、星の海を渡る様な大英雄なのか?
「こちらに送れる兵士さんはいないから、わたくし達に守って欲しいって。ちょうどウチには自動車もあるから送迎は出来るって話なのよ」
一応は納得出来るけれども、何か裏がある気がしてならない。
またマムが裏で暗躍しているような気がビンビンとする。
「同行者は通訳の女性と姫様の補佐をする側仕えさんの2人だそうよ、皆さん御願いね」
こうして僕達の新たな任務が始まった。




