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閑話 猫娘は、幸せ一杯。

「フォルちゃん、これのデータ整理御願いね」


「はいですぅ!」


 わたし、フォルトゥーナ・フェーリスは、マムから送ってもらったデータをパソコン上で操作・整理する。


「フォルちゃんや、其方(そなた)よー(良く)そういうの分かるのじゃな? 此方も日本語は少しは読めるのじゃが漢字はダメじゃし、英語はちんぷんかんぷんじゃ。『きーぼーど』とやらも指一本打ちがやっとじゃ」


 リーヤお姉さん、隣領の領主次女でお姫様。

 本当なら、わたしがお話出来る様な人ではない。

 でもわたしにはいつも気軽に話してくれるし、可愛くて頼りになるお姉さんだ。


「わたし、皆さんの様に戦う才能は無いし、魔法もダメです。だから、このくらいしか皆さんのお役に立てませんですぅ」


 わたしには、魔力が殆ど無いし、運動能力も種族の平均以下。

 どんくさいと幼い頃親からも良く言われたものだ。


「いや、十分役に立っていると思うのじゃ。此方のお父様の時もフォルちゃんがシームルグ号(機動要塞指揮車)でオペレートしてくれたおかげで助かったのじゃし、鉱山の時はオートマトンで大活躍だったのじゃ!」


 わたしは、複数の情報を同時に把握・指揮する事に才能が有ったらしい。

 これはマムにC3システムを任されて、自分でも始めて知った事だ。


「うーん、わたしもどうしてこういうのが出来るのかは分からないの。確かにチェスとか将棋は得意なんだけどぉ」


 わたしが学校に行った時、流行っていた地球産のボードゲーム。

 こちらでも似たようなゲームは沢山あったけど、わたしがそういうものに触れたのは学校に行った時が初めてだった。


「此方は、もうゲームではフォルちゃんには勝てないのじゃ。此方は、『りゅーおう』にはなれぬのじゃ!」

「でもわたしはリーヤお姉さんには、一杯勝てない事あるもん。お互い様ですよね」

「そうじゃな!」


 わたしが、この捜査室に来た切っ掛け、それは9年前の次元融合大災害に始まる。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おかーさん、おとーさん、どこー!」


 街が炎に包まれて、建物が瓦礫の山になっている。

 8歳のわたしは、もっと幼い妹と弟を抱えて、逃げ回っていた。


「うわーん、だれか助けてー!」


 わたしは周囲の大人に助けを求めた。

 しかし、誰も彼も逃げるので精一杯、自分の身を守るのがやっとで貧民街の獣人の子だったわたし達に眼をくれる人なんて何処にもいなかった。


 そして、わたし達の目の前に見たことも無い四本腕のバケモノが現れた。


「ひぃぃ!」


 ソレは縦に割れた口から涎を流しながら、二本の腕から生やした四本の前腕でわたし達を捕まえようとしていた。


「おかーさーん!」


 わたしは妹弟を強く胸に抱き、眼を瞑った。


 ……もうダメ、わたしはどうなっても良いから、妹弟は誰か助けて!


 しかし、いつまでたってもわたし達はバケモノに捕まれて食べられる事は無かった。

 わたしは、怖わごわ眼を開けた。


「え!」


 そこには真っ二つに切り倒されたバケモノと、妙な形の大きな剣、いや刀を持った黒髪の若い男の人、お兄ちゃんがいた。


「******?」


 そのお兄ちゃんは、それまで聞いた事が無い言葉を話し、笑顔でわたし達に手を伸ばした。

 わたしは、ナニが何か分からず、妹弟を抱きしめて固まってしった。


「******、***********!」


 すぐに後から来た女の子が、わたしの様子を見てお兄ちゃんを叱っていた。

 お兄ちゃんは、女の子に頭が上がらないように見えた。


 ……あんなに強いのに可笑しいの。


 そして後からエルフの綺麗な女の子、わたしくらいの女の子、そして綺麗なお姉さん達が沢山来て、わたし達を戦場から助け出してくれた。

 そのお兄ちゃんはもちろん、女の子達もすごく強かった。

 どんどんバケモノを、わたし達の目の前で簡単に退治していった。

 そしてわたし達が怖がらないように笑顔で接してくれた。


 わたし達姉妹弟(きょうだい)は、その後帝国騎士団に保護された。

 後から聞いた話では、そのお兄ちゃんが皇帝陛下やリーヤお姉さんのお父様達と一緒になってバケモノの親玉を退治したんだそうだ。


 その後、保護されたわたし達は施設に収容され、そこから学校へ行けるようになった。

 お父さんやお母さんは、結局見つからなかった。


 貧民街出身のわたしは始めて見る学校が珍しいし、教えてもらえる事が楽しくてたまらなかった。

 そして一杯勉強していくうちに、どんどん上の学年の勉強もこなして、地球の大学へも行ける様になった。

 そこでも一杯勉強したわたしは、あっというまに大学の勉強も飛び級で習得してしまった。

 どうもわたしには言語と情報系に才能があったらしく、共通語だけでなく、エルフ語、ドワーフ語の他、地球の言葉、英語・日本語をマスターした。

 そして分かったの、英雄のお兄ちゃん達が最初に何をわたし達に言ってくれていたのかを。


「だいじょうぶ?」

「おにーちゃん、怖がらせてどうするの!」


 そのお兄ちゃんは災害を鎮圧した後、皇帝陛下に認められてイヤイヤながら辺境伯となった。

 冒険やら探検をして宇宙を飛び回りたかったお兄ちゃんは、困り顔だったと聞いている。

 最近では、頭が上がらない妹さん的な女の子と結婚もしたそうだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「フォルちゃん、どうしたのかや? 何か考え事か?」

「うん、ちょっと昔の事考えていたの」


 タケお兄さんやリーヤお姉さんは、辺境伯の事を知りたいらしい。

 でも、わたしはお兄ちゃんから口止めされているし、お兄ちゃんの正体を知っているはずのマムも知らん振りだ。


「ここで働かせてもらっているから、わたしは妹弟の面倒を見れているの。それに皆優しくてイイ人ばかり。わたし、今が一番幸せ!」

「幸せなら、それが一番なのじゃ!」


 リーヤお姉さんが、とっても可愛い笑顔をしてくれる。


「うん、一番!」


 もう少しタケお兄さんやリーヤお姉さんには、お兄ちゃんの事は内緒かな?

 フォルちゃん視点での次元融合大災害時の話をちょっと書いてみました。

 ええ、辺境伯ってカレです。

 妹たる彼女には永遠に頭が上がらないし、デバガメする悪魔幼女にも、若つくりの叔母さんにも、ゴシップ大好きな後輩の女の子にも勝てない、ある意味情けないけど強い魔剣使いの勇者です。

 次の第5章では、マムの話になりますが、帝国中央の話になりますので、ウフフです。


 では、一日お休みを頂いて、5月23日より始まります第5章をお楽しみに!


 ブックマーク、感想、評価、レビューは作者の大好物です。

 どうかお恵み下さいませ。

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[良い点] 作品中や注釈で書かれている化学や銃火器の蘊蓄には舌を巻いた。 なろう作家でこれだけ知っている作者もそうそういないだろう。 [気になる点] 作品の看板には偽りアリ、といった印象。 作者は…
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