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第17話 新米保安官は、犯人を追い詰める!

「マム、こちらタケです。社長の乗ったトラックに追いつきました。今、街の門外で中に入ろうと暴れている状況です」


 僕はマムにイルミネーター越しに連絡をした。


「はい、お母さんです。わたくし達は後20分はかかるみたい。そちらで足止め御願いね」

「了解です! さあ、リーヤさんの出番ですよ。トラックだけ吹き飛ばしてくださいな。後は、残骸から出てくるお客様を僕が生かさず殺さず確保しますから」


 僕の心は落ち着いている。

 今なら誰も殺さずに無力化出来そうに思える。


「なんじゃ、また此方(こなた)が便利屋かや? まあ、タケの望みならやるのじゃ!」


 口ぶりは嫌そうに言っているが、その表情は満面の笑み。

 僕に、頼られて嬉しいらしい。


 ……僕達って、全てが凸凹だけれども良いコンビなのね。


 僕達の目の前では大型トラックが封鎖されている道を無理やり通ろうとして暴れている。

 兵士の方々、道に車止めを置いているけど、今にも引かれそう。

 早くなんとかしないと、最悪門なんかに体当たりしてでもトラックが突破しかねない。

 門の周辺には足止めされている一般民の方々も多いから、そろそろなんとかしたい。


「では一発撃つのじゃ。タケ、この場合は何が良いのかや?」


「そうですねぇ。トラックの燃料は軽油なのでガソリンほど引火性高くないから、爆発の危険性は低いのですが燃えるには燃えるので、直接車体を火炎系や雷撃系でというのは困ります。道を破壊するのも後で道路管理の部署から怒られますから、タイヤだけ狙いますか?」


 リーヤは僕にトラックを止める案を聞いてきたので、僕はタイヤを攻撃する案を出した。

 タイヤがパンクするなりすれば、トラックは止まる。

 うまく炎上もせずに横転でもしてくれたら御の字だ。


「なれば、『激光(レーザーブラスト)』あたりになるかのぉ?」


「それならぴったりですね。どっちか片方のタイヤを全部吹っ飛ばしてみてください。そうすればトラック止まりますよ。後は僕が無力化します」


 ……レーザーなら狙いやすいしぴったりだね。


「では、早速狙うのじゃ。此方がこっちの窓から顔と手を出すから、狙いやすいように車を付けるのじゃ!」

「了解です!」


 僕は、自動車を暴走するトラックの右やや斜め後後方に付ける。


「タケ、もう少し右、いや左、そのまま。良し、ふっとべー!」


 リーヤは掛声と共に窓から出した左手から「激光」を放った。

 そして、レーザーは無音でトラック右側タイヤ前後2本とも焼き飛ばした。


 石畳とトラックの底がぶつかり、ガガガと激しく削れる音がした。

 そしてハンドルを取られたトラックはそのまま右へと旋回してごろりと転がった。


「リーヤさんは、まだ車から出ないで下さい!」


 僕はそう言って車を止め、車体を盾に、ボンネットを2脚の置き場にしてマークスマン(HK-)ライフル(M110A1)を構えた。


「うぅ」


 呻きながらも短機関銃(サブマシンガン)を持ち出してきた兵士らしいヒト。


 ……あんまり動かないでね。じゃないと殺さないといけなくなるから。


 ぱんぱん、と僕は二連射をした。

 初弾は機関銃を持つ右手を銃ごと、そして二射目は左足の脛を打ち抜いた。


「ぎゃ!」


 兵士は倒れ付し、撃たれた箇所を押さえて、もがき暴れる。


 ……死ななかったんだから、ヨシとしてよ。


 その後、誰も倒れた車から出てこない。


「保安官として勧告します、早くそこから武器を持たずゆっくり出てください。さもなければトラック(ごと)破壊攻撃をします!」


 僕は大きな声の英語で叫んだ。


「後、10秒で攻撃します! リーヤさん、御願いします」

「ほいな!」


 リーヤは車から出て僕の横に立ち、頭上に巨大な「火炎球」を生成した。


(Nine)(Eight)7(Seven)、……」

「待て! 出て行くから撃つな!」


 その声と共に2人の白人男性がゆっくりと出てきた。


「ヒューバルト・バーンス、アントニー・ハーディだな。そのまま両手を頭につけて、両膝を地面に付け!」


 髪型や服装が酷く荒れた2人は、大人しく膝を付いた。


「警備隊の方、2人を拘束御願いします!」

「は、はい!」


 僕の掛声で、慌てていた警備隊の人達が社長達に近付く。

 僕はスコープから2人、特に社長を外さない。


「お、お前。地球人、それも日本人だろ? 俺、金を積むから見逃してくれ!」


 社長のヒューバルトは、僕に命乞いをする。


「いえ、見逃せません。貴方方のおかげで多くの命が失われています。その責任は貴方方が自分で償うしかないのです!」


 ……オマエが、いらん事するから僕は4人も殺さなきゃならなかったんだぞ!


「く、くそう!」

「社長!」


 2人は警備隊員に身体を押さえつけられるも、抵抗をする。


「ふぅ、これで一件落着ですか?」

「なら、良いのじゃがな」


 リーヤは頭上の火炎球を消した。

 僕が一瞬リーヤの方を見た瞬間、パンという音と騒ぎ声がした。


「何!」


 僕が再び社長の方を見ると、警備隊員の1人が血を流して倒れており、社長がそこから逃げていた。


止まれ(Freeze)!」


 僕は叫ぶも、社長は止まらない。


 ……また僕は人を殺すのか。


 僕が一瞬躊躇し、社長の背中中央に照準を合わした時、急に社長は転がるようにして門の手前で入場を待っていた子供連れの親子を襲った。


「え!」


「おい、動くな。動くと、このガキの命は無いぞ!」


 小さな女の子を羽交い絞めにして、小型拳銃を押し付ける社長。

 その横には子供を奪われて蹴り転がされた母親が居る。


 ……しまった。これじゃ撃てない。


 一撃で脳幹を撃ち抜かなければ、反射で引き金を引かれて終わり。

 しかし、この距離、50m強で確実に殺す自信、僕に無い訳では無いが敵に隙が無い。

 その上、まだ僕の中で殺人への恐怖がある。


 ……殺したくないのに、バカがぁ。せめて銃を僕に向けてくれたなら、心置きなく射殺できるのに。


「おい、オマエ。まだ罪を犯すのか! ヴィム爺ちゃんだけでなく、そんな女の子まで手にかけるのかよ!!」


 その時、マム達が現場に到着し、ギーゼラの怒りの声が響いた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おい、オマエは子供や老人相手でしか戦えないのかい? アタイとサシでやらねーか? アタイも銃は捨てる。ステゴロならアンタでもアタイに勝てるだろ」


 ギーゼラは社長を挑発するように、銃や手斧を捨て両手を上げて歩み寄る。

 ヴェイッコは後方でいつでも掃射できるように準備をし、マムは指示を出すべく待機している。


「なんだ、このチビガキ。イヤ、ドワーフか。チビオンナが何判らない言葉で言っているんだ。所詮、こんなド田舎の原始人。俺のような文化人とは違う。オマエの挑発になんて乗らないぞ!」


「そうか。なら、アタイはアンタを殴る。お父ちゃん、お母ちゃん、ヴィム爺ちゃん、そして村の皆の(カタキ)を討つ。そして御白州(おしらす)の場で裁いてもらうんだ!」


 ……あれ? 御白州の場って時代劇に出てくる奉行所で裁きをする場所だよね。共通語で話しているけど、アメリカ人に意味通じないよねぇ。


 どんどん社長に近付くギーゼラ。


「ち、近付くな。それ以上近付くとガキ撃つぞ!」


 狼狽している社長。


 ……これは狙い撃つチャンスだ!


 僕は、じっとチャンスを待つ。


「ほう、アンタ何も持たねぇアタイが怖いのかい? そうか、ならもっと近付くよ。その子撃ったらアンタは絶対死ぬ。アタイが首を胴体から引き抜いてやる!」


 ギーゼラは全身に怒りを纏い、社長まで後3m程まで近付いた。


「ち、ち、ちくしょー!」


 社長は、子供に突きつけていた拳銃をギーゼラに向けた。


 ……今だ!


 僕はライフルを撃った。

 消音機のおかげで、ぱん、と軽い音をした銃弾は、目標目掛けて飛翔し、目標つまり社長の持つ小型拳銃を粉砕した。


「ひ!」

「このやろー!」


 大きく踏み込むギーゼラ。

 社長は子供を放り出して、逃げようとした。


 ……あらよっと!


 僕は再度引き金を引いた。

 そして銃弾は社長の右脛を砕く。


「ぎぃやぁぁ!」


 転げまわる社長に乗しかかり、ギーゼラは一発殴った。


「思い知りやがれー!」


 どすっと重い音がして、社長は気絶した。


「タケっち、ありがとー! 皆の敵討ちできたよー!」


 僕は、久しぶりにギーゼラの笑みを見た気がした。

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