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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第4章 捜査その4:異世界鉱毒事件

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第9話 新米保安官は、証拠を見つける。

「では、報告を致しますわ。ヴィム氏の死因は、当初予想通り溺死でした。遺体には手足に縛られた跡があり、また電気による火傷跡もありました」


 今はポータムに帰り捜査室の中、会議室でキャロリンから報告が行われている。

 家族が心配なギーゼラと警備としてライファイゼンに残ったヴェイッコは、ネットを介した状態で報告を聞いている。


「という事は、……。どういう事じゃ?」


 さすがにシリアスな場面なので、皆はずっこけない。

 全員、空気を読まないようで、ちゃんと空気を読むのだ。


 ……僕はズッコケそうになったけどね。


「えーとですね、リーヤさん。結果から言えば、ヴィム氏はスタンガンで撃たれた後、手足を縛られて鉱山廃水に顔を押し付けられて溺死したの」


「老人相手になんて惨い事をするのじゃ!」


 生前にきつく縛られれば内出血が起きる。

 遺体を赤外線撮影すれば、最後に行われた加害の様子が分かったりするのだ。

 またスタンガンによる電気火傷も死後には発生しない。


「……で、スタンガンとは何じゃ?」


 またボケるリーヤ。

 さすがに今度はズッコケる全員。


「酷い事って分かっていて、今更スタンガンがどーとか聞きますか? って僕とキャロリンさん以外で分かっている人は……、はい僕から説明しますね」


 ……こいつら、誘いボケなんて高等技術を使うのかよ!


「スタンガンとは電気の力を使って敵を無力化する非致死性の武器です。高い電圧と死なない程度の電流を敵に流す事で、敵の筋肉、身体を動かす力を邪魔して動けなくさせます。よくフィクションではスタンガンで気絶していますが、基本的には激しい痛みと筋肉の収縮が起こるだけで気絶はしません」


「つまり電気でビリビリじゃな。此方にも同じ効果の魔法があるのじゃ!」


 リーヤは得意げな顔で自慢する。


 ……もしかして分かっていて聞いたの? 場を和ますギャグなのかなぁ?


「話を続けますわね。溺死場所が鉱山廃水だった証拠ですが、肺から採取した水は強酸性でプランクトン、微細な動植物が居ませんでしたの。ここからはタケに説明を変わりますわ」


「はい、では僕が説明を引き続けますね。御遺体の肺から採取したサンプルですが、貯め池の水とは大きく異なりました。まず、サンプルの水は強酸性、溜め池の水は弱アルカリ性でした」


「質問じゃ! 酸性とかアルカリ性とは何じゃ!」


 キャロリンから説明を変わった僕にリーヤが質問をしてくる。

 今度はボケ無しに真面目に聞いてきた。


「はい、リーヤさん、お答えします。これは化学の話になりますね。水溶液、水に塩等が溶けた液は様々な性質を持っています。その内、すっぱいもの、柑橘(かんきつ)とかお酢は酸性、逆に灰汁や石灰などの苦いもの、それと石鹸はアルカリ性に分類されます。基本的に酸は金属を溶かし、アルカリは油や肉を溶かします。先日の毒物、シアン化合物は基本アルカリ性です。そこに酸性の柑橘、クエン酸が入って反応し、シアン化水素が発生したのです」


「ふむふむ。では石鹸で手を洗うとヌルヌルするのは、アルカリで手が一部溶けておるのかや?」


「流石はリーヤさん、その通りです。この溶かす力で病気の元のバイキンを退治しているんですよ」

「うむうむ、此方(こなた)は賢いのじゃ!」


 全身で喜びを表すリーヤを微笑ましく見る皆。

 リーヤは、やはり場を和ましたかったのだろう。


「鉱山廃水は硫黄が変化した酸、硫酸がとても多いので酸性がキツイです。逆に溜め池では植物性プランクトン、水の中に居る微細な藻が光合成をして水の中にある炭酸ガス、二酸化炭素を使うので弱アルカリ性になります。あ、先に話しておきますが、炭酸水、二酸化炭素が沢山入った水は弱酸性を示しています。あのシュワシュワ感とさっぱりした感じなのは弱酸性も影響しているんです」


「光合成とは、また聞かぬ言葉じゃ。これはどういう意味じゃ?」


 再び説明を求めるリーヤ。


「これは生物の分野になりますが、植物は光のエネルギーを使って二酸化炭素と水からデンプン、糖分、炭水化物を作ります。その時、ついでに酸素も作ります。この炭水化物から植物の幹や葉、花や実を作るのです。葉っぱの緑色の部分に光合成を行う葉緑体があります」


「つまり此方人等(こちとら)は植物の作った酸素を吸い、植物から生まれたご飯を食べて生きて、此方人等が吐いた二酸化炭素が植物に使われるのじゃな」


「お見事です! そこに動植物同士の関係を加えたのが食物連鎖です」

「だって、此方はタケに気に入られるために勉強しておるのじゃからな! あ、しもうた!」


 うっかりしゃべってしまった、と口を押さえるリーヤ。


 ……前言撤回、リーヤさん僕に褒めて欲しいから、知っててもボケたのね。


「はいはい、オバカなリーヤは放置して話を続けますよ」


 マムが話を締める。


「おほん、では話を続けますね」


 僕はリーヤをジトメで見ながら話を続ける。


「肺から採取したサンプルは、鉱山廃水と一致しています。これはフォルちゃんとマムにより採取された廃水からも確認出来ています」


 僕らがアライダと話していた間に、マムは鉱山へ赴き、昨日ザハールを接待してもらった件で現地法人の代表者と話した。

 その隙にフォルは、シームルグ号から偵察ドローンを飛ばし、廃水処理施設の偵察・撮影、サンプルの採取を行っていた。


「ハイテク機器を動かすのは、わたしにおまかせですぅ!」


 マルチリンガルなだけでなく、戦術支援、ドローン操作など等ハイテクな事にに活躍するフォル。

 彼女も見た目によらず凄腕なのだ。


「フォルちゃんは偉いのじゃ!」

「リーヤお姉さん、ありがとう」


 リーヤに頭を撫でられて、ご機嫌なフォルであった。


「フォルちゃんの撮影した写真では、普通廃水処理で行われる石灰の投入が行われていません。その上、未処理の廃水をそのまま川に流す、近くの山に沁みこませる等しています。このために村の井戸や周辺区域まで汚染水が流れ込み、被害を出しています」


 皆は写真を見て、その杜撰(すさん)な対応に(いきどお)りを見せる。

 僕は周囲の仲間の顔を見て話す。


「これは保安官として見逃せぬ悪行です。中央や各領主に連絡をして、この環境破壊や殺人を行ったRHPグループの摘発・逮捕を行いたいと思います」

「意義なーし!」


 さあ、これからが本番だ!

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