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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第2章 捜査その2:領主暗殺未遂並びに美幼女誘拐事件
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第17話 新米保安官は、幼女を探す!

「では、その主従契約のパスを使ってリーヤを探すのですか、保安官殿?」


「ですから、マム。僕をもて遊ぶのは、そのくらいにしてくださいよぉ。僕にそんな高度魔法使えるわけないじゃないですか! いいところ、近くになったら分かる位ですって」


「あら、残念」


 決して残念そうに見えない顔をするマム。

 どうやらリーヤが無事なのを確認出来たので、僕を遊ぶ余裕が出てきた様だ。


「なので、今回は科学的方法を使いますね。ギーゼラさん、ユーリは大量出血をしていたんですよね」


「うん、あの手傷でどーやって動いているのか分からねーくらいだったね。途中で身隠しのマント使われちまったから、完全に見失っちまったよ」


 光学迷彩を行う「身隠しのマント」。

 しかし、電磁波全域をカバーは出来ないし、音は消せないから対人レーダーやエコーでは見える。


「じゃあ、ユーリは出血跡を残していっていたのですよね?」


「そうだね。最後に見失ったところまでは、はっきりと」


 ……よし、ならそこから先だ。


「なら、そこまで僕を連れて行ってくれませんか? 出来たらヴェイッコさんも一緒に。マム、良いですか?」


「あら、保安官はタケよ。わたくしに命令権や決定権は無いのだけれども」

「マムぅぅ! ここで拗ねたりふざけないで下さいよぉ」


「えー、だってぇ」


 まだまだ僕を遊ぶマム。

 その様子を見て笑っている領主夫婦。


 ……あれ? もしかして領主夫婦を和ます為にワザとやっているのかな? なら最後までお付き合いしますか。


「はい、じゃあ分かりました。エレンウェ・ルーシエン異界技術捜査室長マムに命じます。貴方の部下をお貸し願えませんか? そして貴方には領主夫妻の護衛を命じます」


「了解よ。そう最初から言って下さい、タケ。だって、ここじゃあ貴方の方が立場上ですもの。じゃあ、タケにプレゼント。怪我をしたところ、見せて」


「はい、マム」

「じゃあ、痛いの痛いの、飛んでけー」


 マムが僕の傷口に触ると、優しい光が傷跡の上を覆う。


「はい、もう治ったわよ」


「え? あ、痛くないです。マム、ありがとうございます!」


 僕は怪我をした側の足を踏みしめたが、全く痛くないし違和感も無い。


 ……これがマムの力なんだ。確か寺院でもごく一部の超高位治療術師らしいけど。


「いえいえ、保安官殿には活躍してもらわないといけないですからね」


 ……この期に及んで、まだボクを弄るマム。しかし、なんで治療魔法の呪文が「痛いの飛んでけ」なのぉ?


「はいはい。という訳だから、お願いします皆さん。キャロリンさんは看護兼緊急時の運転手で。フォルちゃんは引き続きC3システムのオペレートを」

「らじゃー!!」


 さあ、追跡だ。

 待っててよ、リーヤさん。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ここだよ、アタイがユーリを見失ったのは」


 そこはスラム街への入り口付近、周囲には多くのゴミが溢れ、()え臭い匂いで充満している。


「拙者の鼻では、ここの匂いで追えないでござるよ」


「多分、獣人族の鼻も警戒して匂いが酷いところを通ったんだと思います。では、ここを紫外線で見てみましょうか」


 悪臭で顔を歪ませるヴェイッコを横目に、僕はALSランプを取り出してユーリを見失った辺りの地面を照射した。

 オレンジ色に変色させたイルミネーターのグラス越しに照射した地面を見ると、立ち止まったであろう箇所に大きな、また動き出した方向にぽつぽつと落ちた血痕がはっきりと見える。


「あ、これすげーなぁ。見えなかった血痕がはっきりと見えるじゃねーか」


「そうでござる。拙者では分からないでござるよ」


「これはね、ALS(特定波長ランプ)といってある決まった『色』の光をあててモノを浮かび上がらせるものなんです。今回は波長385nm(ナノメートル)、紫外線の光ですね」


 紫外線を受けて血痕内のタンパク質が励起して光る。

 それをオレンジ色のフィルターを通してみたら、血痕は淡く光って見えるのだ。


「じゃあ、このまま血痕を追いかけますね。多分、この血痕の間隔だとそう遠くはないですね」


 僕達は見えない血痕を見えるようにして、リーヤさんが隠されている場所を探した。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「この建物ですね。血痕は一度玄関のところで大きくなって、そこで消えていますから」


 僕達はイルミネーターのグラスを透明に戻し、戦闘の準備をした。


「じゃあ、アタイが見失った汚名をここで挽回、もとい返上するね。先に中入って調べるから、ちょっち待ってて」


 そう言ってギーゼラは影に潜り込み、そのまま建物の中に進入した。


「うん、リーヤさんの魔力を感じるよ。間違いない、ここだ!」


「良かったでござるよ。では、拙者が先に突入するでござる」


 ヴェイッコは、僕を庇って先に突入したいらしい。


「いや、ここは僕にやらせてくれないですか? どうしてもアイツと決着付けたいんです!」


「ほう、タケ殿も(オノコ)であられたか。では、拙者、最大限のフォローをするでござるよ!」


 ヴェイッコは、サムアップしつつニヤリと凄みのある笑みで僕に答えてくれた。


 ……リーヤさんを奪ったアイツだけは許せない。刺し違えても倒す! でも、刺し違えちゃったらリーヤさん、悲しむよな。ヨシ、作戦変更! 死ななない程度頑張って倒す!!


「ありがとう、ヴェイッコさん!」


 僕もサムアップで答えた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「左部屋、クリアーでござる」

「右部屋、クリアーっちゃ」

「正面、クリアー」


 僕達はユーリの隠れ家に突入した。

 そこは廃屋、いつ崩れても可笑しくないくらい破損が進んでいる。


「もう探せるところ全部見たでござるよ」

「アタイも影の中から探したけど見えないぞ」


 2人は一生懸命探してはくれたけど、今だリーヤは見つからない。


 ……でも、リーヤさんの魔力は、僕には「はっきり」と分かるんだ。絶対、この中だ!


「どこかに隠し部屋があるんです。血痕からしてこの部屋の何処かだと思うのですが?」


 2人は途方にくれた、しかし諦めていない顔をする


「拙者はタケ殿の感覚を信じるし、リーヤ姉さんの香りを少し感じるでござる。確かに、この中でござるよ!」

「アタイ、絶対リーヤっちを探すんだ。もうミスは絶対しないぞ!」


 カタン!


 その時、玄関が開く音がした。


「これは……?」

「……でござるよ」

「じゃあ、跡を付けてで……」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「全くこんなあばら家に姫様を隠す必要もあるまいに」

「すいやせん。ユーリ様が酷い怪我なさっていて、どうにもならねーで逃げてきたんでさ」


 みすぼらしい格好の男、そして貴族の側仕えらしいきちんとした男の2人が大きな袋を抱えて部屋の中を進む。


「こちらでごぜいやす」


 みすぼらしい男は、そう言って壁にある蝋燭立てを握り下に動かした。


 ギギギィ!


 大きく軋む音を立てて、壁が動く。

 そして地下へと続く階段が現れた。


「では、旦那行きましょ……!?」


 みすぼらしい男が振り返ったところ、側仕えらしき男は床に倒れていた。


「う!」


 そして次の瞬間、みすぼらしい男の意識も消えた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 僕達の前に隠し階段が見える。

 そして床には2人の男達が転がる。


「では、こやつらを縛っておいて突入でござるよ」


「うん、あ、ここ勝手に締まらないように家具をつっかい棒にしましょう」


「それは良いアイデアだね、さすがタケっち!」


 僕達は万全の準備をして地下へ進んだ。

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