第50話 最終決戦! その4: 決戦、血戦!
「次の角を右に曲がって、まっすぐ100m。その先に広い空間があって、その向こうに反応炉ありますぅ!」
「了解なのじゃ。ソナーでは、広間に敵が満載なのじゃ。油断するで無いのじゃ!」
僕達は途中何回も戦闘をしながら、やっと要塞中心部へと脚を踏み入れた。
分断された陛下達もシグナルは健在、残る補助炉へと徐々にだが近づいている。
「リーヤさん、行くよ!」
「此方、タケと一緒なら怖く無いのじゃ!」
僕達は、ホバーで機体を広間へと進めた。
「こ、これがラスボスなのじゃな。きついのじゃぁ」
「皆、散開! 2機で背後を守りあうの!」
チエが思わず愚痴を呟き、マムが指示を出す。
「いくわよ!」
マユコが飛び出して、残っていたLAHATミサイルを全弾撒き散らした。
直径200m程の空間には、ゴレムが10体、そして中央に巨大なサソリモドキが居た。
爆炎に照らされて銀色に輝くソレは、背に大型砲、おそらく粒子ビーム砲を、二本のハサミ腕にもレーザー砲らしきものを持ち、8本の脚で走り回り周囲にビームを撒き散らした。
「かたーい!」
各機体からバラ撒かれる25mm弾はゴレムには通用するが、サソリの装甲には通用しない。
正面からは赤熱化したハサミを振り回し、横腹から更にレーザー砲を露出させて、僕達を狙う。
そして誰かが立ち止まれば、背中の大型ビーム砲がそれを狙う。
ビーム等の光速の攻撃は見てからでは避けられないので、砲口から予想される射線をAIによる自動乱数回避で、僕達は避ける。
そして外れたビームは要塞の壁に当たり、壁は赤熱化して熔解した。
「ゴレムは片付いたのじゃが、サソリが手ごわいのじゃ!」
……これは不味いかも!
ツインスティックを握る手が汗で濡れる。
僕は、ここ一番が勝負どころと判断した。
◆ ◇ ◆ ◇
「陛下、大丈夫ですか?」
「うむ。機体は大丈夫だが、ガトリングが弾切れだ」
補助炉に向かった3機も補助炉直前で苦戦をしていた。
尽きること無いゴレムの集団。
一機一機は楽に倒せる相手だが、無限に相手をするとなれば、いつかはミスをし、弾も切れる。
「ふぅふぅ。拙者はマダマダでござるよ!」
「アタイ、負けないよ!」
片腕を失い、頭部バイザーが破損、カメラを直接見せる漆黒の4号機。
無理やり振るう日本刀型ソードも傷だらけだ。
「では、余も接近戦をしようぞ。ヒロ、フォロー頼むぞ!」
「はい。何処までもお供致します」
背部ガトリングをパージした8号機、右手に銃剣付きのアサルトカービン、左手篭手から高周波ナイフを出す。
「わたしもお供しますわ。帝国皇帝陛下と共に戦えますのは光栄ですの!」
「俺もまけねー!」
黄色の6号機は、銃剣が折れ弾切れの右手カービンを廃棄し、腰からハチェット型の大型ナイフを抜く。
そして左手カービンを敵に向けて引き金を引いた。
◆ ◇ ◆ ◇
「タケ、それに皆よ。余はこれまでの様だ」
少年皇帝から哀しげな通信が繋がる。
「陛下!」
「アヤメとヴェイッコは、先ほど突撃を敢行したのだ。余は補助炉室には入れたのだが、弾切れの上に両腕が欠損、足も半分千切れておるのだ」
イルミネーターには陛下の乗る8号機のシステム状態が表示されるが、両腕など欠損部分が真っ黒、残る部分も真っ赤になっている。
僕は、サソリの攻撃を避けながら叫ぶ。
「ヒロ、なんとかならないの!」
「うーん。僕でも、もう無理だね。突撃した2機にしても、もうボロボロ。あ、今2人とも取り付かれちゃった」
4号機、6号機のシステム表示も真っ赤から黒い部分が増えていく。
「拙者達は、ここまででござるが、作戦は成功でござる」
「アタイも十分頑張ったよ」
「マムさん、すいません。陛下を守りきれませんでした」
「コウタ兄貴、そっちは御願いします」
2機からの連絡があった直後、シグナルが消える。
そして僕達の元にも振動と爆音が伝わった。
「2機が自爆をして敵を破壊したのだ。その時間を余は使わねばならぬ」
「タケ。後は頼むよ!」
通信越しにスラスターの起動音がした直後、鈍い衝撃音がし、通信が途絶した。
「陛下!!」
そして先ほどよりも大きな爆発音と衝撃が要塞を振るわせた。
データ表示には、8号機が補助炉に体当たりをして自爆したとある。
「ち、ちきしょー!!」
◆ ◇ ◆ ◇
「そろそろチェックメイトですね。機体も半分は撃破。そしてこちらのスコーピオニクスは無敵。流石は要塞と同じ文明の破壊兵器。彼らでは勝てるはずも無いです」
「ええ、これで倒してしまうのは私としては悲しいです。直接、対決して倒したかったですね」
「のう、デビットや。これはわらわ達の読みが甘かったのかもなのじゃ!」
魔神女帝は、驚いてモニターを見た。
◆ ◇ ◆ ◇
僕は怒りに燃えて、サソリモドキの腹レーザー砲門を一機ずつ潰していった。
「コウちゃん、いくわよ! タケシ君、チエちゃん、わたし達2人でサソリを足止めするから勝負よ!」
「うん、おかーさん!」
「おうよ! ナナ、いくぞ!」
「うん、コウ兄ぃ!」
マユコは、撃ちつくした背部ミサイルランチャーをパージし、ガトリングドリルを前に突撃し、コウタもその後ろから日本刀を前にして突っ込む。
「タケ殿。ワシらは氷結呪文をブッパするのじゃ。脆くなった装甲を撃ち抜くのじゃ!」
「わたし、いっくよー!」
「わたくしは支援します!」
「皆さん、情報支援任せてですぅ」
マムは魔法少女型7号機の前に立ちはだかり、60mmグレネードや25mmアサルトで支援射撃をする。
「リーヤさん、行きます!」
「のじゃ!」
僕は、1号機のスラスターを全開にした。
真紅の2号機が、がちりとサソリの右ハサミと真っ向から打ち合う。
片方のドリルはハサミに千切られたが、もう片方のドリルを刺して接射、ハサミが爆発をする。
そして青緑の3号機は、ハサミ攻撃を回りこんで避け、左ハサミ付け根に日本刀型単分子カッターを切りつけた。
日本刀が折れるが、ハサミも機体から千切れ飛ぶ。
こうして2機が命がけで作った隙に、7号機は杖から蒼白い魔力弾を発射した。
「氷結烈波-!!」
リタのコールした呪文による氷はハサミと組み合っている2機を巻き込みながらも、サソリの足や胴体を氷結させていく。
「もらったぁ!」
僕は、潜在能力「魔弾の射手」を開放、脳内クロックアップ、視界を白黒にさせてスラスタージャンプを使用、動きが鈍ったサソリの背に乗る。
しかし、サソリは悪あがきにと背中のビーム砲を振り回して僕を弾き飛ばそうとする。
「甘い!」
僕はそんな行動を一瞬で読みきり、ビーム砲基部に蹴りをして、無理やり機体固定用の火薬パイルを打ち込んだ。
がきりと異音をさせてビーム砲の動きが止まる。
「これでチェックメイト! リーヤさん、ランチャーを!」
「のじゃ!」
僕は刺さったままのパイルを爆破ボルトで外し、75mmランチャーを足元にいるサソリの背部装甲に密着させた。
「いっけー!」
僕は、トリガーを引いた。
「陛下がぁ。ヴェイッコ殿、ギーゼラ殿にアヤメ殿、タクト殿までが犠牲になるとはぁぁ」
こういう要塞戦ではお約束、味方が倒れていく中、一歩ずつ前に進んで作戦成功を目指しますね。
「作者殿は悲しくないのかや! 作者殿からすれば子供たちが死んだのじゃぞ!」
え、誰も死なないように遠隔操縦機体使ったのはチエちゃんでしょ?
「あ、そうなのじゃ! 機体が破壊されても別空間におるコクピットは無事なのじゃ! タケ殿が怒りに燃えたのに、騙されてしもうたのじゃ!」
ということで、次回は要塞戦集結。
そして、本当の最終戦開始です。
では、明日をお楽しみに!




