第47話 最終決戦! その1:宇宙空間での強襲!!
何処かの恒星系にある小惑星帯。
恒星からラグランジュポイントにあるココには、惑星になりきれなかったものが多数存在し、こと金属成分が豊富なために要塞修復の為の原材料収集には最適な場所ともいえる。
「バトラー。要塞の復旧具合はどうですか?」
デビットは、金色の竜眼でグラスに入った琥珀色の液体を見ながら話す。
「おおむね50%を越えました。補機の対消滅機関4基、破壊された2機のうち1機は修復を終え、稼動を開始しました。なお、主機の相転移炉は依然未稼動です。他では装甲修復を優先させています。資材に関しましては、小惑星帯に移動して以降、素材の収集を要塞内に以前から存在した無人機を使っています。しかし、圧倒的に手数が足りません」
「まあ、手数の不足はしょうがないですね。艦内修繕にはゴレムも現在回していますが、宇宙空間用の機材や兵器は開発していませんでしたからね。ある程度治って超光速航法が出来たら、手ごろな惑星に行ってそこで治しましょうか。砲艦外交を行うためにも、この要塞無しでは難しいですからね」
バトラーからの報告を聞き、苦笑するデビット。
「今更わらわは慌てぬし、まずは要塞修復が優先なのじゃ。次にチエと戦うとなれば、おそらく総力戦。楽にはいかぬぞ。リタ姫や魔神王も合流しておったら、今度は逃げる事も厳しいかものぉ」
「そうですね。ソフィア、いえチエ殿は実に恐るべし策士で技術者です。あのロボット兵器、見事でした。次の邂逅が実に楽しみです」
恐るべし敵と言いながらも、魔神女帝もデビットも楽しそうにしている。
「お2人とも強敵と言いながら、お楽しみの様ですね」
「そういうバトラーも、彼らと戦いたいのでしょう?」
「はい。この指の敵というのもありますが、強き相手、それも素晴らしき英雄達との戦いは楽しみですね」
バトラーは金属製の右手人差し指を押さえながらも、笑う。
そんな時、要塞が激しい衝撃に襲われた。
「ほう。早速お主らの相手が来たのじゃ! この場所を探し当てるとは恐るべしじゃな」
女帝は、上を見て囁く。
「思った以上に早かったですね。では、オモテナシをしましょう! バトラー、戦闘準備です」
「はっ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「チエ御姉様。量子魚雷初弾、要塞への命中を確認! まもなく、お父様以下第一部隊が接敵します」
生物的な外見の宇宙船の中、CICにて女性魔神将「調」が報告をする。
「初手としては成功なのじゃ! 次は、要塞内への進入なのじゃ!」
チエはCICモニターを見ながら、偉そうにドヤポーズをする。
「しかし、父上は良いモノを貰ったのじゃな。恒星間宇宙船とはのぉ」
「最近、取引を開始した惑星の方々に戦力をお貸ししたら、そのお礼にと御船を2隻も貰いましたの。なんでも、星を渡り歩いては生命を殺し資源を撮り尽くす凶悪なモノとの戦いで苦戦なさっていまして、その「拠点」を破壊するのにお父様自ら大活躍なさったそうですわ」
「それは良いことをしたのじゃ! 父上も武力の使い方が分かってきたのじゃ! 戦い奪うのみが力では無いのじゃ。助け、そして見せ付けるのも『力』なのじゃ! お、そろそろじゃな?」
モニターには、魔力シールドで自らを包んだ魔神達が、尖鋭要塞から飛び出した飛翔体との戦闘に入ったのが確認された。
「あれは地球原産の兵器では無いのじゃ。おそらく要塞自身が最初から持っておった機動兵器なのじゃ。まるでGのボールじゃな。」
「宇宙空間での機動性は、さすがに向こうが上のようですが、小さくて硬い魔神相手で攻めあぐねていらっしゃいますわね。あ、『槍』お兄様が破損箇所から要塞内に突入さなりましたの」
球形で腕を持つ敵を、身長以上の長さの槍を振るい、どんどん撃墜している魔神将が、要塞の破口から突入するのがCICモニターで確認できる。
「後は父上が時間稼ぎをしている間に、ワシらが内部で大暴れじゃな。では、行ってくるのじゃ!」
「皆様に御武運が有りますように」
チエは、妹の声援を受けてコクピットがある異空間へ跳躍した。
◆ ◇ ◆ ◇
「良い感じに作戦が進行していますね」
「うむ、此方人等も頑張るのじゃ!」
僕とリーヤは、機動兵器コクピットに座り、イルミネーター越しに戦場の状況を見ている。
「各員、傾注なのじゃ! まもなく『槍』が敵要塞内に侵入、そこでM2発進用のゲートを開くのじゃ! 後は、乱戦になるのじゃが、落ち着いて敵を殲滅して、要塞の主副反応炉を破壊するのじゃ! そうすれば、要塞なぞガラクタなのじゃ!」
チエから最終ブリーフィングが行われている。
今回、僕達8機の機動兵器は要塞内に突撃、中心部にある動力炉を破壊する。
それに到る途中にいるであろう敵を殲滅、そして勝利する為に僕達は「タイムとマインドのルーム」(笑)で長い時間訓練をした。
更に各自に合う装備を準備し、多数迫り来るであろう敵を殲滅できるだけの弾薬を準備した。
……皆、よく頑張ってくれたよ。教える僕の方が悲鳴あげてたものね。
もちろん要塞内の敵兵を、僕達は魔神王が接触した範囲でしか知らない。
魔神王と戦ったのは空中戦用の航空ドローン、そして無人型に改造されたであろうゴレム号。
そして今回の宇宙戦で、おそらく要塞が予め所有していた無人兵器兼作業機械が現れた。
「内部で敵になるのは、おそらく大半がゴレムじゃな。大丈夫、こっちも火力アップしたので、数発アサルトをぶち込めば倒せるのじゃ! それに接近戦用装備に特殊装備も満載なのじゃ! 絶対勝って、ワシら全員で母様やタケ殿の料理を食べるのじゃ!」
「そうなのじゃ! 此方もタケと一緒にご飯食べたいから、頑張るのじゃ!!」
「皆、頑張ろうね! 修行はとっても楽しかったよ!」
「おー!」
僕はスティックを握る手に力を込めた。
「さあ、お楽しみの発進シーンなのじゃ! いくのじゃ!」
チエの掛け声と共に、機体視界には発進口が見えた。
「タケシ・モリベ、M2改1号機。行きます!」
「いくのじゃ!」
僕とリーヤの掛け声が重なる。
そして、蒼い躯体がスラスターから青白い炎を出して発進口から飛び出した。
「いよいよ、最終決戦なのじゃ! 要塞内部には無限に沸くザコ敵。それを蹂躙して突き進むロボ。あー、ロマンなのじゃぁ!」
気分は、なんたら無双とかですね。
でも、そう簡単に勝てるかは……。
「作者殿の事じゃ、もう一手何か隠しておるのじゃろ?」
そこは明日以降をお楽しみにです。
「では、明日正午を待つのじゃ! 読者の皆の衆、ブックマークや評価などして待っておるのじゃ!」




