第41話 魔神VS尖鋭要塞!
魔神族と巨大知的海生物が共に住まう海多き星、セテ。
そこに魔神族の宮殿がある。
「貴方、良かったですわ」
「そうか。最近、オマエとこうやって睦むのも、ワシは楽しいぞ」
宮殿の奥深く、女王の間に魔神王と魔神女王が居る。
2柱は汗をかき火照った身体をお互いに重ね、ピロートークをしている。
「チエのおかげでオマエとも仲直りできたし、最近は他所の星でも話し合いから始めたら、我らに有利な話も多くなってきた。武力は使うだけでなく、見せ付けるというのも面白い考えだ」
「ええ、貴方。魔神とてこの世界に生きる者。世界を破壊しては何の意味もないですわね」
近年、他の惑星侵略を停止した魔神族。
その代わりに交易や交流、武力の貸し出し、時に武力による「砲艦外交」を始めた。
それは、以前の侵略行為よりも被害が少なく、より多くの益を魔神族へと与えた。
すべては魔神将チエの入れ知恵であるが、有益なのには違いなかった。
「では、もう1ラウンドいきませんか、貴方」
「そうだな。しかし、お前も好きだな」
微笑み会う魔神2柱が絡み合った時、爆音と衝撃が宮殿を襲った。
「なんだ? 何も魔力を感じなかったぞ!」
「ですわね。誰か、わたくしに教えてくださいませんか?」
「お母様、『調』です。先ほど、都市の外周に巨大な飛行物体、まるでウニの様なものが出現しました。そして、何かの攻撃を海に向けて放ちました!」
女王は魔神将の娘から情報を聞き、動き出す。
「貴方、戦さですわ!」
「おうよ! 魔神の城に喧嘩を売りに来るとはバカのする事か」
魔神王は女王との睦みという楽しみを潰されて、その怒りと日頃より溜まっている暴れたいという欲求のぶつけ先を見つけた。
◆ ◇ ◆ ◇
「女帝殿、この星が貴方を陥れた女王ら魔神族の拠点ですか?」
「ええ、そうですわ。ここには非戦闘員、民間人なんて誰もいませんから、お好きなように暴れてもいいのでおじゃるよ? わらわも、彼らには恨みがありますのじゃ」
「いえいえ、まずは威嚇が大事。それでも、話しかけもせずに襲い掛かってきたら、後は容赦しないです」
要塞の奥深く、現代戦闘艦艇で言うところの戦闘指揮所にいるデビットと魔神女帝、そしてバトラー。
彼らは異文明技術によって作られた立体映像モニターで周囲を見ていた。
「しかし初めて撃ちましたが、この要塞艦の荷電粒子砲は威力がありすぎます。あれを都市部に撃ったら大変な事になりそうです。そういう意味で、揚陸兵団や航空兵団を作ったのは正解でした」
「ほう。やはり脳筋な魔神に砲艦外交は効かなかったのじゃ。デビットや、対応すのじゃ!」
映像には、周囲の魔神よりも一回り巨大な魔神が先頭になって、魔神の集団が空中を要塞目掛けて飛んできている。
「はい、了解です。しかし、尖鋭要塞という名称は言い辛いですね。何か、名前をつけましょうか……。そうですね、黙示録の悪魔からアバドーンとしましょう。さあ、行くのです、我が尖兵達よ!」
要塞アバドーンの底部、ウニの口部分から沢山の小型機体が飛び出した。
◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、図体がでかいだけのウスノロなど、ワシ自ら吹き飛ばしてやる」
身長5m程、2対4枚の羽を持ち、同じく2対4つの金色の眼を持つ魔神王は、魔神たちの先頭を切って要塞へと向かう。
「ほう! あの程度のザコで、ワシらを足止めでもする気か?」
目の前一杯に広がる黒い点、無人戦闘機を前に、大きな牙を持つ口元を歪ませて舌なめずりをする魔神王。
「者共、かかれぇ!」
「うぉー!」
魔神達と無尾翼型無人戦闘機との空中戦が開始された。
「ほい! そんなものかよぉ!」
図体の割りに小回りの聞く魔神王、全幅18m程、ブーメラン状の無人機背後に回りこみ、魔力弾をエンジンへ叩きつけ、撃墜する。
「チエに、この手の機体の弱点を聞いてて良かったな。人工知能とやらの判断が遅い! ん、少しは賢くなったか? でも、まだまだぁ!」
他の魔神達も、生体ならではの小回りを生かして格闘戦闘に持ち込む。
無人機もレーザーや高機動ミサイルを撃つが、対象として小さい為になかなか命中せず、更に命中しても魔力シールドに弾かれて、大した被害を出せない。
「では、皆の衆。こいつらの足止め頼む。ワシは本陣へ攻め入るぞ!」
魔神王は、凶悪な表情をして要塞へと突撃していった。
◆ ◇ ◆ ◇
「デビットや。無人戦闘機とやらは苦戦しておるぞ?」
「はい。思った以上に魔神というのは手ごわいです。さすがは女帝様と同じ種族。今後の事を考えれば、ここでダメ出しできたのは収穫でした。バトラー、全機体からのデータを纏めておいてくれないかい?」
「了解です。あ、一体大型魔神が要塞に取り付きました!」
バトラーの報告直後、要塞が揺れる。
「すいません、大型魔神が底部発進口から侵入してきました! 急ぎ、該当箇所にゴレム兵を送ります」
「まったく脳筋の王にも困ったモノですわ。あれで、案外と核心を突くのが恐いのでおじゃる」
「しょうがないですね。今回の作戦は失敗とします。魔神王を要塞から追い出して、城に一発撃ってから撤退しましょうか。今回の失敗は、次に生かしましょう!」
デビットは、しょうがないと気持ちを切り替えた。
「ですわね。まだまだ、わらわを楽しませておくれ」
女帝は妖艶な笑みでデビットに答えた。
◆ ◇ ◆ ◇
「な、なんだ! このザコの多さは?」
魔神王は、倒しても倒しても出て来る機械人形に圧倒されていた。
「ちょ、おい! 押すなぁ! ちきしょー。オレの星に喧嘩売ってタダで済むのかよぉ!」
上から押しつぶす様に魔神王に群がる機械人形達。
彼らは、魔神王をどんどん通路の先、外部へのハッチまで押し出す。
「く、くそぉ。こんな事ならチエや女王に範囲攻撃魔法を教えてもらえば良かったぞぉぉ!」
押しくら饅頭になった魔神王は、ポイと空中に浮ぶ要塞アバドーンから押し出された。
「ち、ちきしょー!」
そして空中の魔神王は、妻達がいる宮殿へ要塞からビームが放たれるのを目撃した。
「じょ、女王!!」
攻撃の結果を見ずに、要塞は空間跳躍をする。
「嫌がらせかよぉ! 女王! どうなった? 早く誰か教えてくれ!」
魔神王は、眩しさから眩んだ眼をぱしぱしさせながら、愛する女王の居た宮殿方面を見た。
「ん? あれは!」
「お父様! こちら『調』です! お母様含めて宮殿内は全員無事です。もう一度伝えます、全員無事です!」
王は娘からの連絡を受けて、安心して強固な魔力シールドに包まれた宮殿を見た。
「貴方、慌てちゃって可愛いわ。わたくしの事、そんなに心配なさってくださるなんて」
「そ、それはだな。ワシは、オマエくらいしか睦める相手がいないからだぁ」
照れ隠しに、青黒い顔の肌を真っ赤にしている王。
その様子に、周囲の魔神達からも温かい雰囲気が溢れる。
「最近、王様って可愛くない?」
「だな。女王様とイチャイチャしている事多いし、魔神将様達も皆、仲良くやっているな。以前の魔神族とはオレ達含めて随分変わったけど、これはこれで良いな」
「そうそう! チエ様、様々だ!」
「こらぁ! オマエら、王を愚弄するでないわい!」
強面魔神達がユーモラスに語り合うのを、遠くから女王は笑って見ていた。
「さて、次は何処に攻め入るのか。チエ、貴方ならどうしますか?」
「デビットめ、第一目標をセテにしたのじゃな? 女帝の恨み晴らしもあるのじゃろうが、今の父上、母上に勝てるはずもなかろう!」
チエちゃんのお陰で仲良く力を増している魔神族相手に、喧嘩を売るのはバカですよね。
「おそらく民間人がおらぬから、威力偵察を兼ねた要塞の戦闘試験なのじゃろうて。じゃから、危険になる前にとっとと撤退したのじゃ。引き際は見事なのじゃ!」
無人工廠を入手し、ハイテク兵器を大量投入するデビット。
魔神族なら対処できましたが、他の星では厳しいかもです。
「今回の無人戦闘機はアメリカ軍の試作Xナンバー、X-47Bのアップデート版じゃな。デビットがアニメに詳しくなくて助かったのじゃ! マクロスシリーズのゴーストシリーズを使われたら恐かったのじゃ!」
V-9シリーズとか、恐いですよね。
そういう意味では、既存兵器の応用範囲なのは助かります。
「ロボも、タケ殿が倒したゴレムの無人型じゃし、デザインも性能も古臭いのじゃ! 日本アニメバンザイなのじゃ!」
魔神やエルフ姫、そしてリーヤちゃん達を魅了する日本アニメ。
今後も発展して欲しいものですね。
「さし当っては、秋のマヴラブや『ゆゆゆ』、無職転生第2クール目が気になるのじゃ! 今期の86、ダイナゼノンやゴジラも面白いし、まだ時期も分からぬが、本好きの下剋上第3期も待ち遠しいのじゃ!」
と、チエちゃんのお楽しみアニメ話で終わります。
では、明日の更新をお楽しみに!




