第39話 巡査部長は、敵の強大さを知る!
「リーヤおねーちゃん! どーしてタケシおにーちゃんにくっ付くのぉ!」
僕は、アンズの怒った声で起きた。
「あ。おはよう、アンズちゃん。こ、これは困るよねぇ」
寝相が悪く夜着が捲くれ上がり、おへそやらお腹やらパンツやら見えた状態のリーヤが僕に絡み付いている。
「まったくリーヤ殿には油断もならぬのじゃ。昨晩は、とりあえずキスまでは放置したのじゃが、これはタケ殿も視線に困るのじゃ!」
チエ、起床したばかりの髪の毛ぼさぼさ状態で僕達の惨状を見る。
……ジュニアブラも見えちゃっているし、その「ふくらみ」をぎゅっと押し付けられては、僕も困っちゃう。しかし、やっぱり昨晩のキスはチエさんに見られてたのね。
「そう思うのなら、チエさん。リーヤさん剥がすの手伝ってくださりませんか? 僕では変なところ触ってしまいそうなんです」
僕の両手はしっかりとリーヤに封じられている。
力任せに引き剥がすのも不可能では無いが、リーヤに怪我をさせては一大事。
更に触れてはならぬ乙女の柔肌を、こちらから小学生女子の前で触るわけにもいかない。
「しょうがないのじゃ! しかし、タケ殿はつくづく紳士じゃな。ワシが同じ立場なら襲ってもおかしくないのじゃ! まあ、下半身の一部に血液が集まるのは朝だからか、それとも……」
ぐふふと下品な笑い声を出すチエ、それを不思議そうに見るアンズ。
「チエおねーちゃん。タケシおにーちゃん助けてあげたらどう? 苦しそうだよ?」
「確かにイロイロ辛抱するのは苦しいじゃな。ホレ!」
チエが指を鳴らすと、リーヤは自分の布団の上に転送される。
「はぁ、助かりました。さあ、今日も仕事頑張りますか」
今は朝6時過ぎ。
僕は、時間を見るのとメールチェックをするために、情報端末を見た。
「え! チエさん。これはケラブセオンに動きがあったようです」
「どれ? ん!! とうとうデビットが動いたのじゃな!」
ネットニュースには、ケラブセオンの工場や倉庫、そしてアジア支社社屋たるリコリス号で消失事件が起こった事が書かれている。
チエも自分の端末を見ながら、各方面へ連絡を始めた。
……今度は何を企んでいるんだろうか、デビットは? 僕は彼を止められるんだろうか?
僕は、まだ寝言を言いながら眠るリーヤの顔を見ながら、戦いが終わっていない事を知った。
◆ ◇ ◆ ◇
「どうやらデビットは、最終作戦を開始したのじゃ!」
チエにより、再び夕食時の岡本家で会議が行われている。
今回は、マム達もこちらに来ている。
……陛下は、遠隔ネット参加だけどね。マユコさんのご飯食べたそうにしているのは、しょうがないね。
「では、地球の情報をアヤメ殿、よろしくなのじゃ!」
「はい。日本時間の昨晩、アメリカですと日中堂々、ケラブセオンの武器倉庫が消失する事件が発生しました。近郊にあった監視カメラの映像をチエさんやコトミさんの協力で入手できましたので、皆さまに提示します」
皆が装備しているイルミネーターに映像が表示される。
最初の数秒は、誰もいない湾岸倉庫群を写していた。
しかし、突然空中に何か黒い巨大なものが現れて、倉庫へ何か光線を照射し、倉庫が消え去った。
そして飛行物体も突然と消失した。
「これは一体? 謎の飛行物体が倉庫を吸収したのですか、チエさん?」
「タケ殿、そう見えるのじゃな。それは、おそらく当りじゃ」
チエは苦虫を噛んだ様な顔だ。
「チエさん、コトミさん、マサトさんが映像解析をしたところ、謎の飛行物体の全長が数キロ以上のサイズであることが判明しています」
「そんなものは地球の科学力では作れないわよね、チエちゃん」
「そうじゃな、母様。そして急に作れるものでも無いのじゃ」
マユコの質問のとおり、いかな異世界魔術を加えた地球科学でも、飛翔する全長数キロの飛行体は、まだ作れない。
更に転送ビームなぞ、不可能だ。
……確か、成層圏プラットホームで巨大な飛行体を作ろうとする計画はあったよね。
〝Gダム世界でいうところの、ガルダ級じゃな。ゲームの蒼穹愚連隊の第一ステージは、東京上空の成層圏プラットホームからの出撃じゃ!〟
会議しながらも、僕の脳内呟きに突っ込むチエ。
どうやら、潜入捜査をしなくなって能力に余裕ができたらしい。
〝そういう事なのじゃ! 今日は本体なのじゃ!〟
「同様の現象は、ケラブセオンが所有するバイオプラントでも起こっています。更に、横浜港に係留中のリコリス号も最上層部分がごっそり切り取られました」
イルミネーターには、横浜港監視カメラが写した遠隔映像が映り、リコリス号上空に現れた巨大飛行物体が、ビームで上層部を切り取るのが見えた。
「チエさん。これは間違いなくデビットの仕業ですね。リコリス号の上層ラウンジとかは彼が使っていた物ですし」
「そうなのじゃ! 此方も、ラウンジのレストランで何回かデビットと会食をしたのじゃ!」
僕と添い寝できて、すっかり顔がつやつやなリーヤ。
僕の横で、僕の意見に賛同してくれる。
「そこは間違いあるまいて。で、この遠隔映像から、飛行物体の外見や大まかなサイズが分かったのじゃ!」
映像補正されたものがイルミネーターに表示される。
それは、まるでウニの様に全体に沢山の針を生やした全長3kmサイズのものだ。
「また、ほぼ同時刻に帝国帝都近郊にあったケラブセオンの自動工廠が消失したのじゃ! 詳細はマム殿頼むのじゃ!」
「はい。こちらと違いまして映像があるのではないですが、昨晩帝都の物見台で夜間監視をしていた兵が、突然工場上空に巨大なウニの様なものが現れたのを目撃しています。そしてまた突然と消えた後には、工場は無くなっていたそうです」
イルミネータには、今朝に撮影された工場が削り取られた写真が映っている。
「この写真撮影は、余自らが行ったのだ! かのような事態、皇帝がその眼で見る必要があるのだ!」
自慢げに話す少年皇帝。
そこには威厳というより、楽しい事を見つけた少年の顔がある。
……あれ、よく考えたら陛下も外見は中学生くらいだよね。なら、実はリーヤさんと殆ど年齢変わらないか、歳下なのかも?
リーヤより少し歳上のレオニードが青年、高校生かちょっと上くらいの外見だったのだから、少年皇帝がそれ以下なのでは無いか?
〝今更なのじゃが、陛下よりリーヤ殿の方が少しだけ歳上なのじゃ。じゃから、マム殿は2人の母親役なのじゃ!〟
チエの補足念話で僕も納得だ。
……いや、今はそれどころじゃないよ!
「さて、この飛行物体。ワシには、ひとつ心当たりがあるのじゃ!」
チエは、皆の顔を見ながら話し出した。
「前半はリーヤ殿の可愛い姿を描写し、後半は敵の巨大要塞についての説明回なのじゃ!」
チエちゃん、説明ありがとうです。
「やはりリーヤ殿は可愛くてナンボなのじゃ! そして今回初めて明かされる事実、レオニード、リーヤ、陛下はそれぞれ10歳程ずつ年齢が違うのじゃ! なので、リーヤ殿は陛下のお姉ちゃんなのじゃ!」
裏設定でありましたが、リーヤちゃんの成長具合や幼馴染のレオニードの姿から、分かる人には分かっていましたね。
「じゃから、誰よりも歳上なマムは陛下や、リーヤ殿、そしてタケ殿らを自らの子のように思っているのじゃ! なお、マムの年齢はあえて聞かぬのじゃ! 母様同様女性の年齢は聞くのが怖いのじゃぁ」
補足説明、チエちゃんありがとうです。
さて、タケ君達にもデビットの機動要塞の事が分かりました。
これから、どうやって要塞攻略をするかです。
「そこはワシの腕の見せ所なのじゃ! 既にある程度の数のアレが完成しておるのじゃ。シミュレーターも人数分は準備済みなのじゃ!」
では、明日の更新をお楽しみに!




