第37話 つかのまの平穏、そして最終決戦へ!
「タケ、早くするのじゃ!」
「ちょっと待ってよ、リーヤさん」
ケラブセオンとの戦いが終わり、今僕とリーヤは地球で一緒に過ごしている。
「リーヤちゃん、もう暑くなったから帽子被らなきゃダメよ」
「はーい。ありがとうなのじゃ、マユコママ。アンズ殿も行くのじゃ!」
「うん、リーヤお姉ちゃん!」
梅雨が明けようとする日曜日、僕はリーヤやアンズに引きずられ弄ばれている。
今日は、2人で夏の洋服やアクセを探しに行くらしい。
子供たちだけでは危ないので、お目付け兼務お財布というのが今日の僕の仕事だ。
決して、リーヤとのデートでは無い。
……また、楽しい日々が帰ってきたのだから、少々大変でも楽しいね。
あの事件は、地球・異世界共に大きく社会のあり方を変えた。
まず事件の中心だったケラブセオン、多国籍軍需企業が世界制覇を目指して暗躍していたという事実が、近年の対テロ戦争を民間委託した手法が正しかったのかという論争になった。
……アメリカが世界警察を辞めて久しいけど、世界にテロは絶えないから、誰かが対抗しなきゃいけないのも事実だよね。
ソ連国防のために産み出された「小さな大量破壊兵器」AKシリーズ、カラシニコフ・アサルトライフル。
量産性が高く、悪環境でも動作し、小型軽量なので少年兵でも取り扱い可能。
革命の武器としてモザンピーク等、複数の国旗に描かれる兵器が世界に溢れた後、議論を放棄した、もしくは放棄された者達が武器を手に取り、行動を開始した。
そして、それは無差別テロにも繋がり、アメリカでのワールドトレードセンターの崩壊、9.11から始まる世界規模での対テロ戦争になった。
「ワシがいくら分身をして、世界中でテロの芽を摘んでもイタチごっこなのじゃ!」
「あれ、チエさん来てたの?」
「ワシ、今はゆっくりエネルギー補給中なのじゃ! 後は、リーヤ殿とタケ殿のイチャコラ監視もあるのじゃ! あ、そこな男子、リーヤ殿の写真を勝手に取るで無いのじゃ!」
僕の思考を読んで突っ込むチエ。
どうしても街中で目立っている異世界美少女リーヤを守るように動く。
「ありがとうございます、チエさん。大丈夫、僕とリーヤさんとはR18展開には当分なりませんからね」
「なら良いのじゃ! タケ殿も悩んで抱えるタチじゃが、ワシやリーヤ殿、母様やマム殿には相談するのじゃぞ。悪意を溜め込みすぎると、デビットのようになるのじゃ!」
デビット、彼も世界を憂いていた。
人同士の争いから両親を失い、バトラーの助けで復讐をするも、なおも世界に溢れる戦乱を止めたいと思い、ケラブセオンの力を使って「正義」の刃を振るうため、自らを世界を支配する王となるべく行動をした。
「僕も一つ間違えていたら、世界を恨んでデビットの様に『正義』の刃を振り回していたかもです」
「タケ殿は大丈夫じゃろ? お父上の教えがあった上に、お母上や妹殿が居られるからなのじゃ。コウタ殿もデビット同様、サバイバーズ・ギルトに長く悩んで、救えなかった幼い自分を助ける代わりに周囲を助けて居ったのじゃ!」
チエは遠い顔をして、コウタの過去話をしてくれた。
コウタの両親は、ケラブセオンの前身組織が操る魔物に襲われた子供ら、アヤメ達を救う為に犠牲になったそうだ。
「辺境伯も、そうだったんですか。でも、そんなお人好しがコウタさんや彼のご両親らしいですね。しかし世間は狭いですね、アヤメさんが助けられた子供のお一人だったなんて」
「そうじゃな。身近にナナ殿や母様がずっと一緒だったのも、コウタ殿の心を守って居ったのじゃ。あと、世間の狭さは、『壁の向こう』に文句を言うのじゃ!」
僕もコウタも身近に愛する者たちが残っていてくれて、愛を育んでくれたから、壊れずにすんだ。
しかし、チエはあいも変わらず意味不明なことを言う。
「デビットにはバトラーが居ましたが、僕達の様にはならなかったんですね」
「バトラー自身が自らの怒り、復讐を優先してしまったのが悲劇なのじゃ。そういう意味では、血なまぐさい解決方法しか知らぬバトラーも哀れじゃな」
そういえば、同じ様に血を流す方法で愛する者を育て、歪ませてしまったユーリという存在が居た。
リーヤの御見合い話で僕は彼と戦い、初めて人の命を、ユーリの命を奪った。
「戦乱が続くと、復讐の連鎖、怨嗟の増幅が行われるのじゃ。中東のテログループも指導者以外は、大抵は身内を殺されて復讐に走ったものが多いのじゃ!」
僕達がアメリカでの戦いの際、身代わりになった囚人達も皆、復讐からテロ組織の一員となった。
「復讐をするなとは言えぬし、ワシも言わぬ。罪は償わせる必要はあるからのぉ。じゃが、無関係な者達を幸せそうだからとテロに巻き込むのは絶対に違うのじゃ。復讐は当事者同士でするものなのじゃ!」
「ですよね。そうやって無関係な者を巻き込むと、更に恨みが加速しますから」
「タケ、チエ殿。何をそこで悩んでおるのじゃ! 今日は、此方達のショッピングに付き合うのでは無いのかや?」
僕とチエが話し込んでいると、少し離れたお店の前でリーヤがぷんぷん顔で怒っていた。
「あ! ごめんなさい、リーヤさん。すぐに行きます!」
「うむ、ワシも行くのじゃ!」
僕とチエは、リーヤの下へと走っていった。
◆ ◇ ◆ ◇
何処ともしれぬ、何ひとつ生命が見られない砂漠が広がる惑星。
そこの風化した遺跡に、宇宙服を着たデビットとバトラー、そして本来の蛇神形態に戻った魔神女帝が居た。
「これは! なんて素晴らしい!!」
「これこそが、遠い過去に滅んだ惑星の文明が我ら魔神との戦いでの決戦兵器として開発していた機動尖鋭要塞でおじゃる」
遺跡の奥深く、彼らの前に全長数キロにもなる巨大なウニ状、尖った針を周囲に展開した円盤があった。
「さあ、これを使って地球、いや宇宙から戦いを無くすのです!」
舞台俳優じみた様子のデビットの瞳は金色の色をしていた。
「作者殿、デビットは恐るべき兵器に手を出してしもうたのじゃ! アレはヤバイのじゃ!」
チエさん、そこは書いている私も理解してますよ。
最終決戦には、話を大きくしたいですからね。
「それにしても敵が巨大すぎるのじゃ! 宇宙機動要塞と喧嘩なぞ、普通やらぬのじゃ! うみゅぅぅ」
で、チエちゃんなら、どうやって対決しますか?
「そうじゃのぉ。こういう宇宙要塞撃破の心得は、内部侵入もしくは動力源への直接攻撃なのじゃ! スターウォーズEP4のXウイングでの雷撃や、ヤマト2での内部突撃なのじゃ!」
と、なりますよね。
でも生身で突撃するのは危険ですよ。
それに宇宙空間ではタケ君達は無力ですし。
「あ! 良い方法を思いついたのじゃ! ビルドファイターズのアレを真似るのじゃ!」
さて、どんな方法で行くのか。
チエちゃんのお手並み拝見です。
「早速帰って、アレの量産するのじゃ! そして全員特訓なのじゃ!! では、明日の更新を楽しみにするのじゃぞ! ブックマークはワシ、大好物なのじゃぁ!!」
ではでは!




