第33話 帝都強襲 その2:帝都を斬る!
帝都強襲より一週間程前、拙者はネットを通じてチエ殿から作戦指令を受けていた。
「此方、もう最高なのじゃ!」
「もうリーヤさんたらぁ。もう随分と大きくなったのですから、僕の膝の上は窮屈でしょ?」
「さては、此方が重くなったと言いたいのじゃな? タケのいけずぅ」
ケラブセオンから奪還されたリーヤ殿が、タケ殿の膝の上でイチャコラしているのがモニター越しに見える。
「リーヤ殿は、相変わらずでござるね」
「そういうワンコも変わらずなのじゃ!」
成長して、幼さの中に美がよりはっきり見えつつあるリーヤ殿。
……いたずらっぽい表情も可愛いと思うでござる。
「拙者は、地元に巡回騎士として帰還して、故郷に錦を飾ったでござるよ!」
「それは立派なのじゃ!」
ケラブセオンの力で皇帝代行になったミロン・パーヴロヴィッチ・スルコフ公爵は、拙者達捜査室が自分の邪魔になると強引に組織解体し、拙者達は皆が散り散りバラバラになった。
マムやギーゼラ殿の様に家に帰ったもの、タケ殿やブルーノの様に元の仕事に戻ったもの、地球の学校へ行ったフォル殿、陛下と共に姿を消したキャロリン殿など。
そして拙者は地元へと帰った。
「皇帝派の暗殺者も来たでござるが、タケ殿に見繕ってもらった新しい拳銃で返り討ちにしたでござる!」
「それは良かったです。携帯できて、威力と装弾数を考えたらSigP320コンパクトの.40SWモデルになったんですよ」
「13+1発も撃てるのは心強いでござった。ありがとうでござる!」
地元に帰る前、拙者は愛用していた銃器を全部没収された。
帝国内では軽機関銃や大砲などは過剰な火力だという名目だったし、暗殺するのに邪魔だったのではないかと、今になれば分かる。
しかし、たまたま拳銃は監獄襲撃事件で拙者の身代わりになって失っていたので、没収後にタケ殿が探してくれていた拳銃が地球から到着し、拙者は隠し持つことが出来た。
おかげで暗殺者も、彼らの想定外の銃撃で簡単に倒すことが出来たのだ。
「危ないですわぁね。わたくしやギーゼラの所にも暗殺者来ましたが、……。うふふ、あのくらいでわたくし達を倒せると思うのは甘いですわね。おもいっきり虐め返して、わざと生かして返してアジトに帰るのを尾行してから一味を全滅させたから、もう安心ですけども」
「アイツらって、アタイの尾行に気が付かないんだもん。らくしょー!」
「なるほど、拙者のところには暗殺者が一回来たきりだったのは、そういう理由でござったか。」
マムの事だ、実にエゲツナイ事をやったのだろう。
その上、影に潜れるギーゼラが尾行すれば、余程に魔法に詳しくないと気が付かれないだろう。
「そういえば、リーヤ殿はどうやって船から逃げてきたでござるか? チエ殿の伯母上、魔神女帝が現れたのでは難しいでござるよ」
「僕も、そこは気になります。チエさん、どうやったのですか?」
「うふふ。ワシ、それを聞いてくれるのを待っていたのじゃ!」
拙者とタケ殿の質問に、嬉しそうにチエ殿は語りだした。
「まずは母上、魔神女王がキーなのじゃ。母上の分け身が、リーヤ殿に化けて居ったのじゃ!」
チエが語るところによると、女帝が一時船を離れたタイミングがあったらしい。
そのタイミングで、空中から結界の隙間、数ミリの間からそっと豪華客船リコリス号に進入した女王は、ソフィアに変化していたチエ殿と合流、リーヤ殿に化けた。
「後は、女帝の張ったテレポートブロック結界、ディストーションフィールドを避けて逃げたのじゃ!」
チエ殿達、魔神には次元回廊、つまり結界内異空間を作る力があり、それはテレポートブロックには干渉しないらしい。
「まず母上に次元回廊を作ってもらい、そこに朧を予め入れてもらって居ったのじゃ!」
チエが産み出した配下、上級魔神朧、彼も次元操作能力を持つ。
「リーヤ殿には朧の作った次元回廊に入ってもらい、朧は母上の次元回廊中を飛び、こちらのワシの近くまで近付いてもらったのじゃ! 後は、朧のマスターであるワシが朧を召喚すれば、リーヤ殿込みでワシの元へと登場するのじゃ!」
少し聞いただけでは拙者では理解できないが、色々裏技を駆使したという事は理解できる。
「それで今、女王様がこちらに居られないのですね。納得です」
リーヤ殿を膝に乗せたタケ殿は、チエ殿の話が分かったらしい。
……さすが、タケ殿でござるよ! 科学でもタケ殿はすごいでござるし。
「では、ここから作戦内容を伝えるのじゃ! 今回は3面作戦なのじゃ! まずはデビットの野望阻止と身柄確保、次はケラブセオンの異端研究所の破壊及び証拠確保。最後が陛下や異世界組による帝都強襲、玉座奪還なのじゃ!」
チエ殿から語られた作戦は、拙者の想定を超える大変なものだった。
拙者達は、陛下を連れて帝都へ移動、他の作戦と同時刻に城内へと潜入し、帝都内への放送施設の確保、及び玉座に座る簒奪者の確保をする事になった。
「マム殿には朧とリタ殿を付けるから、存分に暴れるのじゃ! なお、フォル殿は地球から遠隔情報支援をするのじゃ。もちろん銃火器はワシが準備しておくのじゃ!」
「チエ様、それは助かりますの。では、ヴェイッコ、ギーゼラ。ポータルを使ってわたくしの居る神殿まで来てください。陛下もタイミングを見てこちらへどうぞ。後は、地下道を使って進入しますわ!」
「了解でござる!」
「ヴェイッコ殿は真面目でござるから、話が早く進むのじゃ!」
彼も時代劇が絡まなきゃ、真面目な犬のお巡りさんですからね。
タケくんも真面目だけど、最近はリーヤちゃんが絡むと怪しいです。
「そこはしょうがないのじゃ! ワシもリーヤ殿の魅力に負けておるのじゃし。読者人気もリーヤ殿が一番らしいのじゃ!」
チエちゃん、それはあまりにメタ発言ですよぉ。
「もうかまわぬのじゃ! ファンアートなぞ普通書籍化せねばもらえぬのじゃぞ! ワシ、羨ましいのじゃ!」
確かにリーヤちゃんは自慢の「娘」ですが、チエちゃんも自慢の「娘」ですよ。
「作者殿、ありがとうなのじゃ! では、明日の更新を楽しみにするのじゃ! ブックマーク、感想など待っているのじゃ!」
ではでは!
イラスト:池原阿修羅さま




