第27話 砂塵吹き荒れるエリア51!:その5 人を致して人に致されず
「タケ殿、M2の出番なのじゃ!」
「了解! さあ、いくよ!」
「のじゃ!」
僕はチエからの連絡を受け、狙撃銃をチエ謹製の異次元ポケットへと放り込んだ。
そしてスポッターの相棒と共に、チエから貰ったもう一つのアイテム、簡易型ポータルを起動して、とある場所へと移動した。
「さあ、いくよ。メインシステム起動、イルミネーター接続。操縦モードV、各種センサー、正常起動確認。バッテリー電圧及び魔力圧、正常。超伝導モーター、冷却システム稼動。システム、オールグリーン!!」
僕はコクピットへと座り、キーボードを引き出して命令を送る。
僕の命令に応じて、イルミネーターに各部の状態が表示される。
「サブシステム、オールOkなのじゃ!」
スポッターの彼女も僕の前の座席に座り、システム確認をしてくれた。
僕はツインステッィクを握る手に力を込める。
……夢の発進シーン、行くよ!
「では、M2。タケシ・モリベ。行きます!!」
「いくのじゃ!!」
僕達が操るロボが、空中へと飛び出した。
◆ ◇ ◆ ◇
「ふぅ、危なかったよぉ」
僕の目前には、僕が操るM2号から発射された40mmグレネード弾を喰らって倒れたロボが居た。
……もう少しで、マユコさん達がペッタンコになってたよぉ。
「お、オマエはタケかぁ! リーレンカは私のモノだぁ!」
レオニードが操るロボが、大声で叫びながら、のっそりと立ち上がる。
「此方は、タケのものなのじゃ」
「しょうがないですよ。今のレオニードは話を聞きそうにも無いです。ここは殺さない程度に倒しちゃいますね」
「タケや、レニューシカを頼むのじゃ」
「はい!」
僕は「スポッター」の辛そうな声を聞いて、機体のスロットルを踏み込んだ。
「レオニード! 勝負だ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「な、なんだ!? こいつ早いぞ!」
タケの操る蒼いロボは、まるで残像を残しそうなスピードでレオニードの操るゴレム号を翻弄する。
周囲をジャンプしながらホバー走行をする、ゴレム号より一回りは小さい蒼いロボット、M2。
ゴレム号は重機関銃を撃つが、M2を一向に捕らえられない。
M2、身長4m弱。
2本の角のようなレーダーマストがヒロイックな頭部には、バイザー型のアイセンサー。
胴体は細く、背中にはスタビライザーと放熱板を兼ねた羽。
腰、脛、背中ランドセル、肩に、複数の高機動スラスターを持ち、そこから青白い燃焼ガスを吐き出して、まるで飛ぶように地面を疾走する。
両腕には小型盾としてのガントレットを持ち、グレネードガンを下部に持つアサルトマシンガンでゴレム号を撃つ。
「ち、ちきしょー! どうやったらあんなスピードで動けるんだぁ!!」
レオニードは焦る。
いくら撃っても敵を、タケを捕らえられない。
その代わりに、こちらは攻撃を受け放題。
幸い、火力が大した事が無いため、致命的な攻撃は受けてはいないが、徐々にセンサーや関節部へダメージが蓄積されている。
「ぐぅ。今度は視覚がぁ!」
飛び跳ね回る蒼いロボは、ゴレム号のメインカメラを破壊した。
すぐにサブカメラへと切り替わったが、死角がかなり多い。
超音波レーダーでは敵の残像しか捉えられず、フェイズドアレイ・レーダーにはノイズが多く入る。
「ステルスとでも言うのかぁ! くそう、死ねぇ!!」
レオニードはノーロックでロケット弾を周囲へ撒き散らした。
◆ ◇ ◆ ◇
「あれがタケくんの機体なのね。チエちゃん、かっこいいわ。流石ね」
「本当はN博士風にしたかったのじゃが、今回はエビ博士風なのじゃ!」
「シンミョウ、あれって趣味よねぇ」
「カレン御姉様、趣味ですね」
「オレ、いまひとつチエ姉貴のセンス、わからねー」
「わたしは、アレ好きだよ。チエおねーちゃん。今度、わたしにも作ってね」
ロボ同士が戦う戦場から離れた場所に避難しているマユコ達。
すっかり観戦モードなのだ。
「あ、焦れて撃っちゃったぁ」
「母様、これでチェックメイトなのじゃ!」
レオニードのロボが、ロケット弾を乱れ撃ちをした。
そしてその爆炎が消えた跡から、蒼い閃光が飛び出した。
◆ ◇ ◆ ◇
「もらったぁ!!」
僕はロケット弾を避け、その勢いでレオニードのロボへ突撃をした。
そしてロボの左手をレオニードのロボ、ゴレム号の弱点、重要機器が集中する腰部へ叩き付けた。
「必殺!! パイルランサー!!」
僕がトリガーを引くと左腕小型盾から3本、杭状の金属が超音速で飛び出して、ゴレム号の腰部をずぶりと貫いた。
……これぞ、ロマン兵器パイルバンカーだー!
◆ ◇ ◆ ◇
「そ、そんなバカなぁ?!」
仰向けに倒れたゴレム号のコクピットでは、複数の警報が鳴り響く。
「あれを避けて、こんなダメージを与えるなんてぇ」
ゴレム号の腰部関節や動力システムは破壊され、もはや歩行移動は不可能になった。
更に動力系、FCSにも異常をきたし、武器も使えない。
「ち、ちきしょぉ」
レオニードは、機体コントロールを取り戻そうと必死に魔力を振り絞る。
しかし、機体はうんともすんとも言わない。
「なんでぇ。これだけの力を貰って、なんで私が地球人ザルごときに負けなきゃ、リーレンカを奪われなきゃいけないんだぁ!」
涙を流しながら、駄々っ子の様に暴れるレオニード。
そして彼の目前に蒼い機体が迫ってきた。
「レオニード。大人しく投降しろ! さもなければ、……」
蒼い機体から、若い男の異世界共通語が聞こえる。
蒼いロボの銃口は、レオニードが搭乗するコクピットを狙う。
「ど、どうして。どうしてぇ!!」
レオニードは泣き叫んだ。
「それはな、レニューシカや。其方が傲慢になり、タケを見くびったからなのじゃ。其方が嫉妬に狂っておった間、タケは自らを高めておったからなのじゃ!」
「え! ま、まさか……」
蒼いロボットから予想もしない声、レオニードが愛する少女の声が聞こえたのだ。
「レニューシカや。此方は其方と再会できたのが嬉しかったのじゃ。じゃが、其方は変わり果ててしまい、此方の愛したレニューシャでは無くなっておったのじゃ」
蒼いロボットの横の空中ににドアが現れ、そこから可憐な魔族少女が日本人青年を伴って出てきた。
「リーレンカァぁ!!」
「やっと登場ができたのじゃ、ワシの傑作M2号」
チエちゃんらしい、ヒロイックなロボですね。
機体サイズ的にはKMFクラスですけど、あのKMFって小さすぎてコクピットが確保できないから、アニメでは一回り大きい設定だったとか聞きました。
「うふふ。ワシにそんなミスは無いのじゃ。詳しい仕掛けは明日の話で公表するのじゃ。ちなみにMは『むせる』の略じゃ!」
なるほど、チエちゃんがダンジョンマスターとしてコウタ君達の前に初めて登場した際の「むせる」君の2号機ですね。
「そういう事なのじゃ。じゃが、今回は、もっと驚きの事があったのでは無いかや?」
そうですね。
タケ君に付き添っていたスポッター、彼女はリーヤちゃんでした。
「では、今デビットの前にソフィアと一緒に居るリーヤ殿は誰かじゃな。そちらも明日の更新を待つのじゃ!」
では、明日の更新をお楽しみに!!
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