第25話 砂塵吹き荒れるエリア51!:その3 戦いは、正を以て合し、奇を以て勝つ
「フェンリル分隊! いったい、どうなった?!」
ケラブセオンの指揮所は大混乱をしている。
「生贄」を喰らいにいった部隊が、いきなり通信途絶になったからだ。
そして遠方からの監視映像では、どこからか全員が狙撃を受けた後、氷の棺に覆われ、更に謎の幼女がそれらを回収するのが見えた。
「ミスター.ウォン! これは一体何が起こっているのか!?」
「おそらくですが、姫を奪還しに来た白馬の王子様の仕業でしょうね。正々堂々のはずが、妙に策を弄してきたようですが……」
「あら、デビット様。それは、勝負をするまでと暗殺はしない程度のお約束ですけれども。兵は詭道なりと言いますでしょ?」
国務大臣はうろたえるも、デビットは想定内と慌てないし、リリーヤ姫の側に立つソフィアも、気にせず毒舌を吐く。
「確かにそうだね、ソフィア君。中国系の私が異界の魔神に孫子で言い負けるとは、面白いね。女帝様、ここからが面白く成りますよ。レオニード殿、タケシとの対決の時が来ましたね」
「チエや。おまえの策とやら、見せてもらうのじゃ! わらわを存分に楽しませるのじゃ!」
「了解です、デビット殿。リーレンカ、私は絶対勝って其方を私のものとするのだ!」
デビット、魔神女帝は状況を楽しみ、レオニードは待ってましたと、リーヤにタケの撃破宣言をした。
「レニューシカ、タケは貴方には絶対負けませんですわよ。くれぐれも死なない工夫はしてくださいませ。多分、タケは貴方を殺さずに無力化して下さりますわ」
「リーレンカぁ。私は地球人に手加減されて負けるほど弱くは無いです! 今回、デビット殿から『鎧』も借りましたから、見ていてくださいませ」
リーヤはレオニードに対して死なないくらいに負けてきてと言い、レオニードはそれに対して負けないと言い張った。
「ん! なんだ、この爆発音は? CP、報告せよ!」
プレハブの建物が大きく揺れ、爆音が響く。
デビットの横に立つバトラーは、CPに対して状況報告を命令した。
「はっ。吸血鬼兵達を収容していた輸送車が襲撃を受けています。襲撃者は、……。え! なんだって? り、了解。敵は男性1人、女性4人組みです!! 全員刀剣で戦ってますぅ?!」
再び衝撃音がプレハブを襲う。
「さて、母様達に勝てるのかや、デビットよ?」
ソフィアは、ぼそりと日本語で呟いた。
◆ ◇ ◆ ◇
「はぁぁ!」
マユコは裂帛の気合で、漆黒の吸血鬼兵達の中へと突撃をした。
「ふっ! オン・インドラヤ・ソワカ!! 帝釈天雷撃斬!!」
妙齢美女マユコが持つ日本刀が激しく帯電をし、その一撃を喰らった吸血鬼達はバラバラに吹き飛ぶ。
「おかーさん、手加減無しだねぇ。よいしょ! オン・バヤベイ・ソワカ! 風天旋風撃!!」
小学生美少女アンズは身長よりも長い薙刀、知性剣光兼を振るう。
その際に彼女のポニーテールがひらりと可憐に舞う。
彼女が放った一撃は衝撃波を伴った旋風となり、喰らった吸血鬼達を激しく吹き飛ばした。
「マユコ御姉様はしょうがないですわ。行きますの! オン・マリシエイ・ソワカ! 摩利支天日輪剣!!」
スポーティ美女尼僧カレンは、チエに授かった宝具を仏剣に変形させ、それからレーザーのような光を斬撃として放つ。
吸血鬼に対して太陽光は効果アリ、一撃で数体の吸血鬼が燃え上がった。
「カレン御姉様。吸血鬼は殺しちゃダメなんですよぉ。マユコ御姉様の方が手加減分かってますわぁ。さあ、新婚のわたしぃの力を見るのです! オン・バサラ・サトバ・アク! 金剛薩埵金剛壁!!」
同じく高野山系おっとり美女尼僧シンミョウは、新婚なのを自慢しながら、チエから授かった肩当て付きマントを翻し、金剛杖を振り、マユコ達に倒されながらも再生を始めた吸血鬼達をダイヤモンドで出来た牢獄へと閉じ込めた。
「もうシンミョウのばかぁ。わたしぃの彼は何処に居るのぉ!」
「カレン。オレじゃダメかな? 最近は地球にも詳しくなったし……」
1人未婚でアラサーのカレンは悲鳴を上げるが、それを背後からフォローする様に槍を持って米軍兵士達をなんなく倒すやんちゃっぽい美男が慰める。
「『槍』さんはイイオトコだけど、魔神将でヒトじゃないもん。わたしぃ、人類のカレシ欲しいのぉ! あんた達、わたしを倒せたらカレシになっても良いよぉ!!」
とても尼僧とは思えないあらぬ事を口走りながら、屈強な兵士達をぶっ飛ばしまわるカレン。
それを見て魔神将・槍もマユコも、そしてアンズも苦笑をした。
「はぁ。カレンちゃんってばぁ。婚期ますます遅れちゃうのは、わたしが荒事に誘うからなのかもねぇ。御見合いおばさんになったほうが良いのかしらぁ」
マユコは銃撃を避けつつ、突っ込んでくるハンヴィや装甲車ごと兵士達を一瞥もせずに吹っ飛ばして、困ったわという顔をした。
◆ ◇ ◆ ◇
「なんだぁ?! こいつら、非常識すぎるぞぉ! デビット様、吸血鬼兵、一個小隊24人全滅です。現在、米陸軍特殊部隊群一個小隊が応戦をしていますが、時間の問題かと。お早くお逃げください!」
「彼女は確か辺境伯の義母だったね。まさか、彼女がここまで強いとは。バトラー、君の報告にも彼女や娘達の事は無かったと思うけど?」
「申し訳ありません、デビット様。この失態、私が命を賭して殿となって償いましょう。その間にデビット様達は急ぎこの場をお離れ下さいませ」
CP指揮官は、デビットに非難を勧め、バトラーは殿になる宣言をした。
「バトラー。キミが犠牲になる必要は無いし、私達にはまだ隠しだまはあるよ。レオニード殿、出番ですよ」
「はい! では、リーレンカ。行ってきます。帰ってきたら君にプロポーズをしますから、待っててください」
「はぁ。期待せずに待っておるから、くれぐれも死なぬようにだけはするのじゃぞ、レニューシカや」
レオニードはリーヤの座る前に膝ま付き、華麗に出陣の挨拶をした。
その様子をリーヤは、彼が死なないようにだけは祈って、呆れ顔で見送った。
「母様、大暴れなのじゃ! しかし婚期に焦るカレン殿は困ったモノなのじゃ! 米軍特殊部隊相手にカレシになってと迫りながら吹っ飛ばすとは非常識なのじゃぁ!」
そういえば、岡本家関係者で婚期逃したのってカレンちゃんくらいだよねぇ。
コウタ君の教え子達も彼氏いてもうじき結婚するらしいし。
「もう焦っておるのじゃな。ワシ、今回の事が片付いたら見合いオバサンするのじゃ! 1人不幸なのは見てはおれぬし、おちょくれないのじゃぁ!」
そこは宜しく頼みますね。
「確かに我が弟、『槍』はさっぱり武人タイプで脳筋じゃが、イイオトコなのじゃ。ヒトでなければと選り好みせねば、お勧めなのじゃ!」
その場合、子孫生まれないでしょ?
まさか魔神と人間の混血なんて……。
「ワシが『槍』に与えた義体は人体ベースで生殖能力もあるのじゃ! じゃから、何の問題も無いのじゃ! なお、ワシの義体、ソフィアなぞも、そうなのじゃぁ!」
はぁ、チエちゃんってば、何処まで暴走するんだろうねぇ……
「じゃって、ワシら魔神は本来普通には子を成せぬ。王や女王のみが子孫を生み出す力を持ち、ワシら魔神将では、下位の上級魔神を生み出すのがやっとなのじゃ。長年のワシの夢、子を成すのを適える為には手加減なぞせぬのじゃぁ!」
チエちゃんの願い、いつか適うといいですね。
では、明日の更新をお楽しみに。
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