第23話 砂塵吹き荒れるエリア51!:その1 兵は詭道なり
砂漠の中にテントが複数建っている。
そこには、多くの人々が忙しそうに働いていた。
「おい! ちゃんと『生贄』の準備出来たのか!」
「はい、2組を待たせています」
「で、こっちの『新兵器』は大丈夫か? 防護服の遮光と冷却は?」
「そちらも確認済みです。命令があり次第、動けます!」
そんな中、冷房が効いたプレハブから彼らの様子を見る人達が居る。
「ミスター・ウォン。まだキミの言う新兵器、『ブラッド・プラトゥーン』は見えないが、何処にいるのかね?」
「国務大臣。彼らは太陽光にはどうしても弱いので、遮光された車内に待機させています」
「それで戦えるのか? そんなのではイラクでは戦えないぞ」
でっぷりとした壮年白人男性は、ケラブセオン社長デビットに文句を言う。
それは、こんな暑い場所で長時間待たされているからかもしれない。
「彼らには遮光冷却防弾服を着せていますから、日中の砂漠でも活動可能です。更に彼らは常人の数倍の膂力、再生能力を持ち、血液を摂取している限り不老です。今回の実験体は、ベトナム戦争での勇者の方々で若返り戦いたいと言う方々私改造させて頂いています」
「そ、それは……。事前に聞いていたが、本当に人体改造をしたのか?」
「はい、米軍では元々義体化歩兵部隊が居ましたね。機械とバイオ、その違いだけです。更に彼らには魔力と呼ばれる異世界の力の一端すら持っています。異世界で簡単に倒された義体兵士よりも強力ですよ」
デビットは、禁断の秘術を行った事をなんでもないように話した。
「長官。我が社の社長はこのように優秀です。安心してデモをご覧下さい」
「会長。貴方は一体何を企むのですか? 世界を破滅させる引き金かもしれないんですよ?」
国務長官は、後ろから声を掛けた車椅子に座る白髪の老人に問う。
「そうですね。確かに我が社は禁断の道を歩いています。ですが、異世界や宇宙からの侵略も考えられる昨今、わが国、いや地球は力を持たなくてはならぬのです。ですから、私はデビットの思想に共感し、彼を社長に推したのです」
「わ、分かりました。では、成果を見せてください」
「ええ、存分にお見せしますよ、長官。そうそう、途中から乱入しそうな者達もいますが、それもお楽しみを」
デビットは深い闇のような笑みをした。
◆ ◇ ◆ ◇
男達は、アラビア語で叫ぶ。
「隊長、どうしてオレ達はこんなところに引っ張り出されたんですか? さっきまでグアンタナモに居たはずが、こんな砂漠になんて……」
「それはオレが聞きたいぞ。ここは一体何処なんだ」
中東系の男達は気が付くと、砂漠の中に居た。
さっきまでキューバの米軍グアンタナモ収容所に閉じ込められていたはずだった。
彼らは、イスラム系テロ集団に加入し、イラク等で米軍などと戦っていた。
しかし、多勢に無勢、更に世界を覆った疫病によってスポンサー達が彼らと縁を切り出し、孤立化していたところを米軍に強襲され、戦う間もなく捕まってしまった。
そして悪名高きグアンタナモ収容所へと送られていた。
「昼飯に薬が入っていたんだろうな。食べていた後の記憶が無いな。で、なんで戦闘服に着替えていてAKライフル持っているんだ?」
「全く分からん。ん! 向こうに看板があるぞ。英語だな。なんだとぉ!」
男達が看板に近付き見る。
そこには、英語でこう書かれていた。
〝アメリカ空軍ネリス試験訓練射撃場〟
「なんだってぇ! 知らない間にオレ達は砂漠の秘密基地まで連れて来られたのかぁ!」
合衆国ネバダ州レイチェル、砂漠と塩湖、乾燥湖が広がる広大な土地。
またの名を「エリア51」、米軍の開発中秘密兵器のテストが行われる場所だ。
「あー、あー。生贄になる方々。聞こえるかな?」
どこかにあるスピーカーからアラビア語での言葉が聞こえる。
「混乱をしていると思うのですが、貴方達は生贄として選ばれました。テロによって罪も無い民間人を殺めた貴方達は罰を受けねばなりません」
「なんだ! 先にオレ達の家族を殺したのはオマエ達アメリカだろ! 罰を受けるのはオマエ達、神に逆らうオマエ達だぁ!」
「貴方達の話は聞きません。これは決定事項なのです。死刑の代わりに貴方達は、とある実験部隊と戦ってください。万が一、彼らに勝ったら貴方達の罪を許します。ぜひ、頑張ってください」
男達の話を一切聞かずに一方的に話した後、スピーカーはブツという音をして音声を止めた。
「ナンだって言うんだ。アメリカが爆撃をしなきゃ、オレの家族は、娘は死ななかったんだ。その仕返しをして何が悪いんだぁ!」
「ああ、オレの彼女も、母さんも……。アメリカが、西側のやつら。全部が憎い! 神の名の下に天罰を与えるんだ!」
口々にアメリカを批難する男達。
しかし、彼らの悪口は銃撃音によって遮られた。
「ち、ちきしょー! 撃ちかえせ!」
「おう!」
砂塵渦巻く中、銃撃戦が開始された。
◆ ◇ ◆ ◇
「おい、オマエ達動くなよ。オマエ達は第二ラウンドが出番さ。それまで命があるのを、ありがたく思え!」
屈強な米軍警備兵数人がM4を構え、座り込んでいる者達へと銃口を向ける。
日光を避ける為の分厚い布を身にまとう者達、彼らも生贄として集められたのだ。
「始まっちゃいましたか。このまま彼らを見殺しにするのもイヤですよね」
「そうじゃな。彼らはテロを行った罪人じゃが、命で償わせるのは少々違うのじゃ。自らの罪を知った上で反省させ、怨嗟の鎖を絶ち切るのじゃ」
「おい! ナニ分からない言葉で話している! アラビア語じゃないな。ん、なんで日本語なんだ!?」
沖縄勤務経験があった軍人が、アラブ人テロ犯のはずの者達が日本語でこそこそと話している事に気が付く。
更に、よくよく見れば小柄な者、まるで子供みたいな者達が多い。
「それはじゃな!」
とびきり小柄な者が、身を隠していた布をバっと放り投げた。
「ワシらは、お人好しの異世界戦隊なのじゃぁ!」
「ぐぅ!」
警備兵達が全員、一瞬で撃ち倒される。
「ごめんね。全部急所を外したから、しばらく辛抱してね」
手足を撃たれた警備兵は苦痛の中、すまなそうに謝る東洋系童顔の青年を見た。
「チエさん、では手はず通りに行きます!」
「タケ殿、皆の衆。作戦開始なのじゃ!」
「おー!」
「ここからはワシらのターンなのじゃ! デビットや伯母上の思うようには絶対させぬのじゃ!」
なるほど、生贄になる方々に紛れていたのですね、チエちゃん。
「うふふなのじゃ! 兵は詭道なりなのじゃぁ!」
さあ、これからがクライマックス。
リーヤちゃんを救う戦いの始まりですよぉ!
「ぐふふ。そこは既に策を弄しておるのじゃ! 作者殿も驚くのじゃ!」
はい、楽しみにしていますね。
では、明日の更新をお楽しみに!
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