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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
最終章 捜査その10:僕は美少女姫様と異世界で刑事をする!

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第16話 魔神将は、悪の真意を知る!

 デビットは、高級ブランデーで喉を潤しながら、ソフィアや魔神女帝に、己のルーツを話し出した。


「私は、アメリカ移民をした両親に元に生まれた華僑二世なのさ……」


 デビットの父、(ワン) 沈偉(シェン)は、香港マフィア18K首領 (ワン) 月笙(ユエション)の次男として生まれた。

 生まれつき病弱で荒事を嫌う性格だったシェンは、父親の許可を貰い、マフィアから手を切ってアメリカへ単身移民。

 元々料理好きだったシェンは、ロサンゼルスにて小さな中華料理店を開いた。


 そして店員として雇っていた華僑移民のルーシー・リンと恋愛し結婚。

 1人息子のデビットと3人で、貧しいながらも慎ましやかな生活をしていた。


 しかし今から12年ほど前、シェンが急な病で後継者を指名しないまま死亡、組織の跡目争いが勃発した。


 長男の小龍(シウロン)派閥、上級幹部 () 彦祖(ヤンツー)派閥が真っ向から対決となった。

 元首領の血族であり、麻薬などを嫌って真っ当に組織を健全化していた長男派は、その資金力で組織を(まと)めようとしていた。


 それに反して古典的なマフィアだったヤンツーは、武闘派を集め荒事に打って出た。

 その一環が、アメリカにいた血族であるデビット達の暗殺だった。


「私がちょうど大学に入った頃、例の疫病が流行り出してアジア系の排斥があった時代でしたか。私が大学から帰宅すると自宅店舗は血の海でした。更に、両親は、すぐに殺されずに拷問を受けた跡もあったのです……」


 ヤンツーは、アメリカに居たマフィアを使ってデビットの両親を暗殺した。

 兄弟で仲が良かった長男派への牽制のつもりだったのだろう。


「警察はアジア排斥の一環だと話していましたが、私は1人、途方に暮れました。両親は死に、私自身の命も危ない。そんな時、私を助けにアメリカにまで来てくれたのがバトラーなのです。本当に、あの時は助かりました」


「いえいえ。デビット様の御爺様に頂いたご恩を、お返ししたかっただけですから……」


 武闘派でありながら裏方作業にも詳しいバトラーは、デビットを守り彼の両親の(かたき)を探した。


「そして、私は両親を無残に殺した犯人を見つけ、誰に頼まれたかを『丁重』に聞きました。最後は『早く殺してくれ、家族に手を出さないで』とは言ってましたね」


「自らが行った事を仕返しされたのに、まだ保身を願うのが愚かでした。デビット様が高潔なので、犯人の家族には手を出しませんでしたが……」


 淡々と話される過去に、ソフィアは息を呑んだ。


 本当の(かたき)、ヤンツーを討つためにデビットとバトラーは動いた。

 アメリカ内にあった関係マフィアを制圧、全てデビットや長男派へと寝返させた。


「そして世界を覆う疫病が落ち着いた後、香港へと私とバトラーが向かった直後に起こったのが、あの次元融合大災害でした。日本では『英雄』やら『異形の女神』やらが活躍したそうですが、香港や中国本土は地獄でした……」


 その一言でソフィア、いや異形の女神たる魔神将(アークデーモン)チエの顔が曇る。


 ……ワシ、日本を救うので精一杯じゃったのじゃ。ワシが救いきれなんだ命は、多かったのじゃ。


「その混乱に乗じ、私とバトラーは18K本部を強襲し、非常時に住民を救おうともせずに閉じこもっていたヤンツー一派を全員あの世に送りました。両親みたいに酷い目にあわせる時間的余裕が無かったのは、今も残念です」


「ええ、あんな簡単に死を与えるのは、私も嫌でしたよ」


 しかし、混乱と殺戮は香港全土を覆った。

 住民保護に奮闘した長男シウロンと部下達は、孤立した子供達を救う為に自らの命を使った。


「後は、魔物達から逃げるのに必死でした。まあ眼の前の命を救うのは、昔ながらの任侠(にんきょう)な祖父や伯父、私も本意。できる限りは助けましたがね。そして『英雄』が敵の首魁を討ち、災害は終焉しました」


 混乱のままの香港、デビットは祖父が愛し、伯父や父の生まれた地を、そのままにしてはおけなかった。

 今まで培ったコネクションや長男派の力を借り、政府が本格的に動くまで香港の治安維持や救援を行った。


「この救難活動が私の母国であるアメリカ、そして私のバックボーンを欲しがったケラブセオンの目に留まりました。私は組織をマフィアから健全な経済組織にすべく、ケラブセオンに組織を売る代わりに私をアジアマネージャ、そして組織構成員をケラブセオンの正規社員に就職させる条件を呑ませたのです」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「そうでしたか。デビット様は、本当に世界を救いたいのですね」


「ええ。世界には、愚かにも争う者達で溢れています。彼らをコントロールして世界平和をもたらせる為に、私は力を欲しているのです」


 わたくし、ソフィア、いえ魔神将チエは、デビットの過去を知った。


 ……コヤツ、マジに正義をなしておるつもりなのじゃ。かなり過激じゃが、一応の辻褄は合うのじゃ。やはり「正義」は別の見方では「悪」なのじゃな。


 わたくしは、事件を簡単に終わらせる、つまりデビットを殺しても事件は終わりにはならない事を知った。


 ……ワシ、こやつも救う必要が出来たのじゃ。デビットが王になっても、いずれは始皇帝の悲劇と同じになるのじゃ。


 賢帝であった始皇帝、晩年の評判は悪いが全部自分で仕事をしないと済まないワーカーホリックに周囲が付いていかれなかっただけという説が最近聞かれる。

 彼が不老長寿を願ったのも、自分がずっと皇帝で居れば秦帝国は永久に栄えるだろうと思ったかららしい。

 そして不老長寿の妙薬、「丹」水銀化合物を薬と思って飲み、死んだのは皮肉であろう。

 始皇帝の死後、跡継ぎ争いから秦帝国は崩壊、再び中華は愚かな武闘派が暴れる無法、戦乱が吹き荒れる地となった。


「ソフィア君、もし、もしもだよ。私を止める人が居るのなら、お人好しで優秀な君達だと思うんだ。だから、その日までは私に仕えて欲しい」


 デビットは、いとも簡単にわたくしの正体を知っている事を告げた。


「なんと、デビットはワシの事を見抜いて使っておったのじゃな! コヤツ、案外と度量が広いのじゃ!」


 カンが良ければ、女帝の雰囲気からチエちゃん、いやソフィアさんに何かあると分かるのでしょう。

 それにチエちゃんに寛大なのは、基本デビットの作戦に対しては邪魔をしていなかったからでしょう。

 特にリーヤちゃんを守るのはデビットも望んでいますし。


「うむ。これはなんとしてもデビットを停めるのじゃ! これ以上泣く人は見たくないのじゃ!」


 デビット、彼も英雄や主人公たる資格はあります。

 コウタくんやタケくんも、一つ間違えばデビットになっていたかもしれません。


 彼の人生を考えていて、昨今のアメリカでのアジア人差別やらコロナ禍で、何の罪も無い華僑の方々は大変だろうなとは思いました。


「うむなのじゃ! ワシ、頑張るのじゃ!」


 くれぐれもタケ君やリーヤちゃんの出番取らないでね。

 ただでさえ、このところリーヤちゃんの出番無いし。


「それは作者殿が悪いのじゃ! では、明日の更新を待つのじゃ! その間にブックマークや評価を頼むのじゃ!」


 ではでは!

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