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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
最終章 捜査その10:僕は美少女姫様と異世界で刑事をする!

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第14話 美少女姫様は、魔神女帝と出会う!

「今日は、妙に騒がしいのじゃ?」


 わたくし、リーヤは今日もリコリス号で「かごの中の鳥」。

 暇な時間をアニメ視聴で潰す毎日だ。


「そういえば、今日はデビット達が帰ってくる日なのじゃ!」


「ええ、既に空港へは到着しております。後2時間以内には、デビット様は船内へ帰還致しますよ」


 デビットは、レニューシカとソフィアを従えてアメリカ本国へと向かった。

 何か実験が行われるのに立ち会う為だったらしい。


「……結局、隙が無くて逃げられなかったのじゃ」


 ソフィアはチャンスがあれば逃げても良いとは、わたくしに言ってくれたものの、1人残るバトラーがずっとわたくしを監視している。


「何か言われましたか、姫様?」

「いえ、なんでもありませんわ」


 そう、今も部屋の隅でわたくしの挙動を一切見逃さないという雰囲気なのだ。


 ……タケにシテやられたのが、余程気に食わなかったのじゃな。


 バトラー、表層心理には殆ど何も見えないが、時折漆黒の恨みとデビットへの病的にも思える忠誠心が浮かび上がる。


 ……まあ、タケやチエ殿が動いておるのじゃ。囚われの姫は大人しくして、白馬の王子様の到着を待つのじゃ!


「姫様に置かれましては、お出迎えをしていただきますよう、お召し替えをお願い致します」


 そうバトラーは言い、部屋に入ってきた女性メイド達と入れ替わりに出て行った。


「ふう、しょうがないのじゃ……。では、メイドの方々、宜しくお願い致しますわ」


 わたくしは、マネキンの様にメイド数人に囲まれて着替えをさせられる。


 ……さて、デビットは何か成果を得たのかなのじゃ? 船内の様子からして、誰か重要人物と一緒に帰ってきたようなのじゃ。


「すいません。デビット殿は、誰かアメリカからお連れになられたのですか?」


「ええ、姫様。なんでも、とても優秀な技術を持たれている女性の方らしいですわ」


 着付けをしてくださっているメイドに聞くと、女性を連れ帰ってきたとの事。


「わたくしには秘密かも知れないことを教えて頂き、ありがとう存じます」


「いえいえ。こんなところにずっと閉じ込められて、何も知らされない姫様が可哀そうですもの」


 ケラブセオンの従業員、多国籍軍事企業に所属しているとはいえ全員が荒事向きばかりの人間では無い。


 この船はアジア支社の社屋でもあり、数千人が暮らす家でもある。

 普通の事務職、船舶運航、機関員、そしてメイドなどサービス業分野の人も多い。

 こと、わたくしに対して色々してくださる方々は、ソフィアを含めて皆わたくしに好意的だ。

 船内で出会う人も、基本わたくしには笑って挨拶をしてくださる。

 時々、こっそりとお菓子を下さる事もある。


 ……じゃから、此方(こなた)は船を沈めて逃げるという選択肢は、取りずらいのじゃ。


 船に閉じ込められた当初ならいざ知らず、一年近く顔を会わせていたら、お互いに情も沸く。

 彼らを危険にさらしてまで逃げる選択肢は、わたくしには無い。


 ……此方もタケの事は言えぬ、お人好しなのじゃぁ。


 わたくしは、姿見の鏡の中で奇麗に着飾られていく少女を見ながら、タケを思う。


 ……タケや、此方は頑張るのじゃ! じゃから、早く迎えに来ておくれなのじゃ!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「姫様、しばし留守にしてまいりましたが、私デビットは帰ってまいりました。今回、アメリカよりお連れしました方を姫様にもご紹介いたしたく、姫様にはご無理を申しました」


 えらく機嫌が良さそうなデビット、しかし同行していたレニューシカやソフィアの顔色は良くない。

 特に只でさえ色白なソフィアは、完全に血の気が無い。


 ……一体、向こうで何があったのじゃ?


「姫様、こちらが私の新たなビジネスパートナー、エンプレス殿です」


「そなたが魔族の姫かや? わらわは、エンプレス。宜しくたもれ」


 妖艶な雰囲気を醸し出す妙齢の美女、彼女はエンプレス、女帝を名乗る。

 そして、わたくしに向けて殺気まじりの強烈な魔力を叩きつけてきた。


 ……くっ! そうかなのじゃ。彼女がソフィア殿らを消耗させ、デビットを喜ばした存在なのじゃな!


 わたくしは一瞬その殺気や魔力量に怯み恐怖するも、伯爵令嬢として、タケの妻としての意地を見せる。


「わたくし、異世界帝国オルロフ朝、アンティオキーア領主ザハール・アレクサンドロヴィチ・ペトロフスキーが次女、リーリヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤでございます。風薫る季節に、エンプレス様にお会いできましたことを感謝致します」


 わたくしは怖がる様子を一切見せずに、貴族らしい笑顔で、どこから見ても恥ずかしくないでろう丁寧な挨拶をした。


「ほう、見事なものじゃ。そこなる情けない坊やとは随分な違いじゃな。リリーヤ姫や。わらわは、其方(そなた)を気に入ったのじゃ!」


 エンプレスは殺気を止め、妖艶な笑顔をわたくしに見せた。


「エンプレス様、お戯れはご勘弁を」


 蒼白な表情のソフィアは、急いでわたくしとエンプレスの間に立ちはだかり、両手を大きく広げた。


「ソフィア、そなたが守りたい存在が姫なのじゃな。せいぜい励むが良いのじゃ。わらわは、十分楽しんだぞ。デビット、わらわを他にも案内(あない)するのじゃ!」


 そう言って、デビットと共にエンプレスは貴賓室から立ち去った。


「リーレンカ、怖くないのかい? 僕は彼女が恐ろしくてたまらないよ。だって、モルモットになっていた貴族達を一瞬で喰らうのだから」


 半分腰砕けのレニューシカ。

 どうやらアメリカで行われていたのは、生贄を利用した何かだったらしい。


「ええ、さすがは姫様ですわ。彼女は、魔族種の母たる存在、封印されていた魔神女帝(デーモンエンプレス)ですの」


 わたくしは、この船から逃げるのが、ますます困難になったことを知った。


 ……タケぇ! 此方、大ピンチなのじゃ!

「うみゅう。ワシ、リーヤ殿を守り切れる自信無いのじゃぁ。どうしたらいいのじゃぁ」


 チエちゃん、まずは落ち着きましょう。

 幸いなことに、エンプレスは今すぐにリーヤちゃんを、どうこうする気配は無いです。

 一人で悩んでいても、いい案なんて思い浮かばないですよ。

 なんでも一人でしょい込みすぎるのは、チエちゃんの悪い癖です。


「そうじゃな。ワシ焦っていたのかもなのじゃ。母様(かあさま)やコウタ殿達にも相談するのじゃ! 作者殿、ありがとうなのじゃ!」


 いえいえ、こちらとしてもチエちゃんが狂言回し(ストーリーテラー)してくれているので、助かっていますから。


「早速、相談するのじゃ、では、明日の更新を楽しみににするのじゃ!」


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