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第3話 新人捜査官は、勇敢に戦う!

此方(こなた)、アンティオキーア領主、ロード(伯爵)・ザハール・アレクサンドロヴィチ・ペトロフスキーの次女にして、ポータム治安維持警察隊、異界技術捜査室、警部補のリーリヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤじゃ! 全員、大人しゅう(おとなしく)(ばく)に付くのじゃ!!」


 そう大声で宣言するリーヤ。


 ……これで止まってくれたら良いなぁ。僕よりは貴族という肩書きあるし。


「なんじゃ、このチビッ子いのは!」


「一応、貴族ったー貴族じゃが、次女のチビッ子じゃあなあ! すっこんどけ、ガキがオトナの会話に口突っ込むんじゃねぇ!」


 ……あかん、完全に子供扱いされちゃったよ。


 リーヤは涙ぐみ、ぐぬぬという表情をしていた。


 ……アレ、確か爆発する直前の表情のはず! やばくないかい?


「オヌシら、此方にヨウも申したのじゃ! そこに並ぶのじゃ! 此方が全員成敗してくれるのじゃぁ!! この『火炎球(ファイヤーボール)』を喰らうのじゃ!」


 リーヤは右手を上に掲げ、そこにリーヤが両手を広げたのよりも巨大な燃え盛るプラズマ火球(かきゅう)を生成させた。


「ナニ仕出かすんじゃ、このガキがぁ!」


「おうおう、特大の火炎球(ファイヤーボール)とは物騒なガキだ! 手前ら、こいつ片付けろ!」


 双方の怖いお兄さん方が、リーヤに一斉に攻撃手段を向ける。


 ……このままじゃ、リーヤさんが危ない!


「ふ、フリーズ!」


 僕は、隠れていた長椅子から飛び出して、リーヤを庇うように前に出て、(SIG_SAUER)(P365)を構えた。


「タケや……」


 リーヤは、僕を見上げて呟く。


「た、頼みます、僕に貴方達を撃たせないでください。そしてこんな小さな女の子に武器なんて向けないで下さい!」


 こんな豆鉄砲(拳銃)、装甲が硬いサイボーグやトロール相手では効果があまり無いだろう。

 一応魔力付与しているすごく痛い弾(全被覆空洞弾)だとしても、2発ずつ(ダブルタップ)眼とかの急所に叩き込まなければ豆鉄砲(9mm弾)では硬い相手は倒せない。

 12+1発の装弾数で倒せるのは最大でもいいところ6人、マグチェンジ(弾装交換)の隙に接近されたら、身長172cm体重60kg程度のやせっぽちな僕ではイッパツでお終いだ。


「なんじゃ、ボウズ。オマエも死にたいのか!」


「おうおう、貴族の娘を前にしてイイカッコかよ。死に急ぐのもイイ加減にしろや!」


 通報をして、もう20分以上時間が経つ。

 多分もうすぐ仲間たちが助けに来るはずだ。

 それまでなんとかして時間稼ぎをしないといけない。

 僕はリーヤを後ろに庇いながら、少しずつ入り口に近い方へ移動していった。


「タケ、其方(そなた)ムリをするのでは無いのじゃ! 其方が此方を庇うのは違うのじゃ。此方の方が歳上じゃし、此方なら魔法でどうにでもなるのじゃ!」


 リーヤは火球を仕舞い、俺の顔を見上げながら、心配そうに話してくれる。


「だ、だって、リーヤさんが小さな女の子なのは事実でしょ。オトコは女の子を守るのが当たり前だよ」


 そうリーヤに話して、庇いながらじりじりと後退する僕。


「なら、その手や足の震えはなんなのじゃ!? そんなに震えておったら、如何な射撃の名手の其方でも当るものも当らんじゃ!」


 僕は、自分の手や足が酷く震えているのに気が付かなかった。


 ……そりゃ僕だってとっても怖いよ。けど、いくら怖いからって、僕より歳上でも小さくて可愛い女の子を矢面には出せないよ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「武士、お前は皆を守れるオトコになって欲しいから、武士(ぶし)と書いてタケシと読むようにしたんだ。お母さんや佳奈(かな)の事を頼む……」


 それが父さんが僕に残した最後の言葉だった。

 今から9年前の次元融合大災害、その際に僕の父さん、警察官だった守部 宏(もりべ ひろし)は避難民を誘導していてバケモノに襲われた。

 バケモノと相打ちに近い形で致命傷を負った父さんは、収容された病院のベットで母さんや僕、妹の佳奈に遺言を残して亡くなった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「だ、大丈夫! これでもオトコだよ、僕は。(たま)には女の子の前でくらいカッコつけさせてよ!」


 僕は強がってリーヤに話す。


 父さんみたいにカッコイイ警察官になって皆を守りたい。

 それが僕の夢だった。

 しかし、僕には武道の才能がなかった。

 代わりに僕は科学系の勉強が得意だったので、化学系国立大学に進学し、その後県警の科学捜査研究所、通称「科捜研」に技術系職員、技官として入所した。

 それがナニの因果か異世界へと出向、今戦場に立っている。


 ……異世界に転勤して約一ヶ月、25歳の僕の人生もこれまでなのか。でも絶対にリーヤさんは守るぞ!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おうおう、ボウズ! そんなんで逃げられると思うのか!」


 ぱん!


 後もう少しで部屋のドアに到着しそうな時、僕達の足元に銃弾が刺さる。


「そのジャリガキ共々バラしてコンクリートとやらで固めて海に沈めりゃ、終わりさ!」


 ……こいつら、僕らを生かして返す気は無いのかよ! 警察官殺したら、お前ら生きていけないぞぉ。


「お、おまえら、警察と貴族、両方を敵に回すのか! ここでの会話は既に本部へ送っている。ここで僕らに何かあれば、この屋敷(ごと)戦略魔法で焼きはらわれるぞ。そして貴族は草の根分けてでも、お前らを探して復讐するぞ!」


 僕は震える声で、精一杯の警告をした。


 ……一応、一切嘘は言っていないからね。リーヤさんのお父様、(リーヤ)が可愛くて仕方が無い感じと聞いているから、リーヤさんに何かあったらポータムの街ゴト焼き払いかねないよ。


「なんじゃ、ソリャ。今更、命乞いかい?」


「いいや、時間稼ぎさ!」


 その時、無痛ガン(M134ミニガン)やバトルアックスを持った怖いお兄さん達が吹っ飛んだ!


「遅いよ、ヴェイッコさん、ギーゼラさん!」


「拙者たちが遅いとはどういう話でござるか、タケ殿?」


「そーだぞぉ、タケ坊! アタイら、これでも全速力だったんだからなぁ!」


 窓の外から擲弾銃(ダネルMGL)を持った狼男(ヴェイッコ)と、散弾(Kel-Tec_)(KSG)を持ったドワーフ褐色娘(ギーゼラ)が飛び込んできた。



これにて初日の公開は終了です。

続きは明朝に。

では、ブックマーク、評価良かったらお願い致します。


(追記)

 今回も作中に登場した銃の説明をしますね。


1:SIG SAUER P365

 9mm×19mmパラベラム弾使用、2017年発表された個人秘匿携帯用(コンシールド)のマイクロコンパクト拳銃、ポリマー(樹脂)フレームで軽量、重量500g。

 10+1発の弾を通常装弾可能、この話の際には小指を掛けられるフィンガーレストつき12発弾倉を使用しています。

 なお、タケくんが使用しているのは、更に携帯性重視の為に出っ張った部分を全部取り除いたSASモデルです。


 因みに全被覆空洞弾とは、空洞(ホローポイント)弾の一種。

 ホローポイント弾は、弾の先端部分に空洞と刻みがあり、柔らかい体内に潜り込むと、鉛合金の弾が花咲くように広がり、体内をズタズタにします。

 銅合金の被覆カバーをすることで、服などに当たった時に体内にもぐりこむ前に弾が広がるのを防止しています。

 なお、ホローポイントや、大きく体内で変形するダムダム弾は軍隊では残酷だからとハーグ陸戦条例で使用禁止、警察、狩猟目的では使われています。

 軍用は貫通をしやすい様にフルメタルジャケット、つまり弾全部を薄い銅合金で覆っています。


2:ダネルMGL

 40mm×46mm擲弾使用。

 6連発可能なリボルバー(回転式薬室)型グレネードランチャー、ネジまきでリボルバーを回す。

 爆発する榴弾、ゴム弾、発煙弾、催涙弾などを使用可能。

 弾道は山なり、命中させるのはコツが必要です。

 SAOガンゲイル・オンラインで主人公レンの友人フカ次郎の愛用品。

 彼女は有り余る筋力で二挺拳銃ならぬ二挺グレランを使います。


3:Kel-Tec KSG

 12口径(70mm)プルバップ(握る部分より後に銃のメカを置いて銃の長さを短くする)ポンプアクション(持ち手を後方にスライドして撃ち終えた薬莢を捨てつつ、新たに弾を送る)散弾銃。

 2つのチューブ型マガジンを持ち、一発ずつ撃つ弾のマガジンを帰る事が出来る変態銃です。

 装弾数7×2、今回ギーゼラはドア破壊用の大型弾と対人用ゴム弾を装備しています。


 以上、銃器紹介でした。

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