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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第9章 捜査その9:終末への序曲、帝国に蠢く闇

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第26話 恐怖は、背後よりそっと忍び寄る!

「さて今回の不始末について、キミはどう責任を取るのかい、バトラー?」


「申し訳ありません、デビット様。言い訳になるのですが、完全に現地メンバーが敵の罠に(はま)ってしまいました。これは私の管理不行きでございます」


 今は夜、間接照明がうっすらと室内を照らす。

 超高級客船リコリス号の最上階セレブルームで、中国華僑系優男は老齢の執事を叱責する。


「そうだ、現地メンバーのバカさを把握していなかったキミの失策だね。そして敵の力を見誤ったとも言えるよ」


「はい、誠に申し訳ありません。責任をとって私自ら異世界へ赴き、敵の首を取ろうと思いますので、お暇を頂けたらと思います」


 老執事は傷と皺の区別が付かない顔を怒りで歪ませる。

 背後では長身の女性秘書が眼鏡を光らせる。


「バトラー、ちょっと待ってよ。私は別にキミだけが全面的に悪いとは言っていないさ。私も敵の戦力を見誤った訳だし。それに私にはキミがまだ必要だよ。今回は失敗した。じゃ、次はどうするのかって話なのさ。ソフィア君、現状はどうなっている?」


「はい、デビット様。まず本社の動向ですが、PMSCを統括しCIAとも繋がっていたヨーロッパ・社長派が追い詰められています。会長派は、これを機会に無駄な人材を切って会社のリフレッシュ化を狙っているとの事。米国も()ねてよりCIAの横暴を危惧しており、代わりに国防情報部DIA及び国家安全保障局NSAが独自活動を行おうとしています」


 ソフィアは大型情報端末を見ながら、どこからか入手した極秘情報をデビットに説明する。


「なるほど。では、ここは会長派とDIA・NSAに恩と機会を売るのはどうかな? ピンチはチャンス、ここで私の価値を会長へ売るのも一興。では、急いで異世界のレオニード殿へ連絡を頼むよ、ソフィア君。反皇帝派が収監されている監獄の場所を教えてもらえば、そこをアノ部隊で襲うのさ。そして同時に反皇帝派にも同時に動いてもらう。ははは、これは面白い事になるねぇ」


「了解しましたわ。早速『業務』に取り掛かります」


 ソフィアは一礼をした後、その場を離れる。


「そうそう、バトラー。キミには現地部隊の監視・指揮を頼むよ。今度は自分の目の前で作戦を確認したいだろ? でも、無理はせずに帰ってきてよ。居ないと困るんだから」


「はっ、汚名返上の機会を頂きありがとうございます。了解です!」


 バトラーの目に光が戻る。


「さあ、世界を私の思うとおりに操るのです」


 芝居がかったデビットが、室内から見える東京湾の明かりを背景に呟いた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「この度は、わ、私なぞにお声をおかけ頂き、あ、ありがとうございましゅ、す」


 膝をついて陛下の御前に控えるヒロ、しかし陛下を前に緊張をして台詞を噛みまわる。

 その様子を見て、背後で笑いをかみ殺す僕達&チエ。

 今日は少年皇帝への報告を兼ねてヒロを連れて、陛下へ謁見に来ている。

 なぜか、チエが面白がって一緒に来ているのは不思議だ。


 ……まあ、表に顔を出さないで僕とリーヤさんをHD撮影している分身が居るんだろうけど。陛下の前だから礼儀良く表に出たのかもね。

 〝ワシにはワシの都合もあるのじゃ! タケ殿はリーヤ殿だけ大事にしておったら良いのじゃ!〟


 内心呟きまで突っ込む魔神ちゃんは、とりあえず放置する。


 〝今日は放置プレイも良いのじゃ!〟


 うん、放置する。


「そう緊張せぬでも良いぞ。余は別に圧迫面接などするつもりもない。今回は顔合わせと思ってくれて良い。一旦、日本のご両親に報告する必要もあろう。正式な面接は、後日行う。その際にはタケも居らぬし、高官ばかりの場となる。その時が本当の勝負だぞ」


「ですが、私。かのような場に決して見合うような人物ではございません。私が勤めていた会社が陛下にご迷惑をおかけしていました事ですし」


 謁見の間には、いつもの近衛警備騎士とお側役人たち。

 彼らも慣れたもので、陛下の「お遊び」に付き合っている。


 そして皇帝の横に立つアレク、そして僕達、チエとヒロが謁見の間に居る人員。

 今回は僕達の報告がメインで、ヒロの謁見はオマケだ。


「その事はもう終った。それにヒロは事件には関係しておらぬだろう? では、何も問題も無いぞ。余は早く地球の事情に詳しい経済アドバイザーが欲しいのだ。しかし、タケは逃げるので身代わりを要求したのだ」


「陛下! それでは、まるで僕がヒロを身代わりにして逃げた様に聞こえますが? 確かに僕は陛下の側でお仕事は出来ませんが、ヒロは立派で優秀な男でございます。僕以上の仕事が出来ると思い、推薦をしたのです」


「陛下、タケは陛下には渡さぬのじゃ! それにヒロは此方も推薦するのじゃ! タケと同じくらいお人好しの優秀な人物なのじゃ!」


「タケ、リーヤちゃん……」


 僕やリーヤがヒロを褒めると、ヒロは振り返って僕達の顔を眼を潤ませて見てくれる。


「その点は余も理解しておる、タケ、リーヤ。だから、今回わざわざ呼び寄せたのだ。という事で、余に仕えてくれるな、ヒロシ・イシカワ?」


「御意! 未熟な若輩者ですが、陛下のお役に立てたらと思います」


 ヒロがちゃんと陛下と話せたので、僕達も一安心だ。


「タケちゃん、良かったわね。わたくしも心配してたのよ、タケちゃんってば、ずっとヒロ君のこと心配していたんだもの。わたくしも一緒にいてヒロ君は大丈夫と思ったわ」


「タケっち、友達思いだよね。そういうのイイね」


「拙者も幼馴染は大事にしたいでござる。もうエサイアスの様な悲劇は見たくないでござるよ」


「そうだよぇ。わたしも今回ルカお兄ちゃんと一緒に仕事できて嬉しかったよぉ」


「ワタクシ、元気じゃないタケは見たくないですわ」


「センパイがお人好しだから、自分も受け入れてもらえましたから。こういうのは自分も好きですね」


「そうなのじゃ! ワシはこういうのが大好物なのじゃ!!」


 仲間達は、僕を囲んで言いたい放題だ。


「タケ、今回は本当にありがとう。タケって皆に可愛がられて居るんだね。それは僕も嬉しいよ」


「うん、僕も嬉しいよ。陛下、ヒロの事を宜しく御願い致します」


 僕はこんな雰囲気が大好きでたまらない。


「うむ。『友人』のタケの御願いだからね。ヒロ、宜しくね」


「陛下ぁ、あまり気安いお姿をお見せするのは……」


 そして外見相応の幼い顔を見せる少年皇帝に苦言を申すアレク。

 いつも通りの平和な場面だった。


 そう、この時までは。


 ・

 ・・


 そんな時、城外から轟音が響き、衝撃波で謁見の間のガラスが砕ける。


「一体、何があったのだ! アレク、調べるのだ!」

「はっ!」


 アレクは謁見の間を早足で去っていく。


「ふむ、煙と炎があちらに見えるのじゃ! マム殿、あそこには何があるのじゃ?」


 チエは窓際に立って遠くを見ている。


「あそこは確か監獄があるあたりかしら? ま、まさか日中堂々と脱獄!?」


「それは大変なのじゃ! タケ、此方達も救援に行くのじゃ!」


 マムとリーヤも遠くを見ている。

 3人とも魔法的な方法で遠視をしているのだろう。

 煙が見える建物は、城からは数キロは離れている様に見える。


「陛下ぁ。マメルティヌス監獄で騒ぎになっております。未確認情報ですが、異形の兵士が妙な飛び道具を振り回していて、犠牲者が多数発生しているもよう」


 アレクが大汗を書きながら、陛下に報告をする。


 ……異形の兵士? 飛び道具? もしかして地球の兵士?!


「陛下! 敵の正体ですが、もしかすると地球の兵士、先日のPMSCの残党かも知れません。意見具申申し上げます。僕達に出撃許可を願いえませんか?」


「陛下、ワシからも進言するのじゃ! 敵は強いのじゃ。ワシも同行するので、タケ殿達を送るのじゃ!」


 僕の具申にチエが補助をしてくれた。

 帝国の騎兵では現代火力への対抗は難しい。

 その上、魔法で対抗するにはリーヤクラスの実力が必要だ。


「うむ、了解した。では、エレンウェ、タケ! 余の名の元に異界技術捜査室へ出撃命令を与える。敵の殲滅と監獄内の人々の救援を頼む。くれぐれも死ぬのでは無いぞ、皆」

「御意!」


 こうして、再び僕達は戦場へと向かった。

「今回の敵は手ごわいのじゃ。ワシ情報では、タケ殿が戦う中で最強の敵なのじゃ!」


 え、どこから情報仕入れたの、チエちゃん?


「それは内緒なのじゃ! ワシも久しぶりに出陣なのじゃ!」


 皆を宜しくね、チエちゃん。


「そこは任せておくのじゃ!」


 では、緊張の次話、明日正午をお待ちくださいませ!

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