第21話 騎士爵は、罠を張って待ち構える!
「やっと仕事が終わりまして、明々後日には帝都を離れる事になりましたので、今日はご挨拶に参りました」
僕とリーヤ、影の中のギーゼラは帝都にあるケラブセオン事務所を再び訪れていた。
挨拶と前回約束した帝都へ早く移動できる経路地図を渡すために。
なお、渡したのはリタ姫を送る際に使った山間部ルート。
距離的には近いものの、山やら川やら踏破する必要がある。
この会談にはヒロ、ヤナギハラ、ヘイデンの他、アランと名乗る男も同席した。
〝アランとやら、此方では思考が読めないのじゃ。こやつ、精神ブロックも使う凄腕なのじゃ〟
……えー、まだ強敵増えるのぉ!
リーヤからの接触念話によると、アランの表層思考はブロックされているらしい。
僕もリーヤさんに聞いて思考ブロック法は勉強中だけど、思考ダダモレらしい。
「わざわざご挨拶ありがとうございます。さすがにどんなお仕事だったかは教えていただけ無いでしょうね。」
「ええ、一応秘匿情報ですので。でも、明後日には陛下に結果を直接ご報告するので、僕は胃が痛いですよ」
僕がヤナギハラに「エサ」を答えると、ヤナギハラ、ヘイデン、アランは表情を変えぬものの、ぴくりと反応した。
〝3人、撒き餌に引っかかったのじゃ!〟
「それは大変ですね。イシカワ、モリベさんはお忙しいからあまりお時間を取らせるなよ。では、失礼ながら私達は業務に戻らさせて頂きます。ごゆっくりどうぞ」
腰の低い礼をしながらヤナギハラ、そして他2人は去っていく。
……今から急いで作戦会議ですね。ギーゼラさん、カンナちゃん宜しく。
〝おにーちゃん、まかせてぇ〟
カンナからの元気な念話が帰ってきて、影はすっと僕達から遠ざかるヤナギハラの影にもぐりこんだ。
「ごめんね、タケ。なんか、ここ数日社内がゴタゴタしているんだ。御偉い御貴族さまとの話もあったからか、PMSCの方々がピリピリモードなんだよ」
「こっちこそ、急に来てごめんね。またしばらくヒロとも話せないから、上に無理行って時間作ってもらったんだ。お互い家に帰ったらまた対戦しようね」
「うん、今度は負けないぞ!」
「此方も一緒に対戦するのじゃ!」
「リーヤちゃんもタケと仲良くね」
僕とリーヤは、ヒロと笑って別れた。
ヒロとは、リアルで殺し合いをしないことを祈って。
◆ ◇ ◆ ◇
「ミスター・スミシー。今回、我々は貴方方カンパニーの依頼で動いてますが、そろそろ表の業務にも障害が出そうです。あのガキが皇帝と話す機会がある前になんとかしないと困りますぞ。ガキの仲間達には監察医がいると聞く上に、殺したババァについて聞き込みもしている。かなり証拠を掴んでいるはずです!」
「ヤナギハラ殿。そう申されても、こちらも御社の上層部との取り決めがあって動いてます。米国は異世界帝国と日本が組んで強大になるのを危惧しています。日本は米国のポチ、金庫、中国への壁以上の役になってもらっては困るのです」
PMSC事務所二階の小部屋でヤナギハラ、ヘイデン、アランの3人が集まっている。
ヤナギハラは、アランに掴みかかりそうな勢いで話す。
しかし、アランは一切気にもしない。
アランが所属する米国CIA作戦本部では、各国の情勢を調査、時に介入をして、各国の米国への危険度低下、更に米国への好感度・依存度を上げ、米国の利益・安全を確保している。
今回CIAがたくらむのは帝国の不安定化による国力減少と米国への依存増加。
ケラブセオンと帝国の商売を上手くさせるのも作戦内容に入っている。
昨今はCIAと軍の協力関係が上手く出来ておらず、作戦を行う際にPMSCとの契約を行う事例も増えた。
大規模PMSCを所有するケラブセオンとの関係を悪くする必要もCIAには無い。
「とはいえ、御社が帝国と通商契約を出来ねば無意味。こちらも動きましょう。『やる』なら明晩ですね。御社が囮になってくれたおかげで、我々の尾行で敵の拠点は判明していますし」
「では、PMSCでも兵士を準備しましょう。深夜に一気強襲して、後は建物毎証拠や死体を焼いてしまえば、鑑識をするものも最早居ないのですからね」
「なら、商社側は大人しくしておきます。特にイシカワから情報が捜査室へ漏れるのは困りますし」
3人が英語で話し合い、今後の計画をしている間に、小さな影がこっそり去っていった。
◆ ◇ ◆ ◇
「……って事だよ。CIAの工作員ってホントに居たんだね。アタイ、映画の中だけだって思ってたよ」
「拙者が帝都の市場で聞き込みをしていた時にも、CIAが居たでござるか。見事な隠業でござるよ」
「僕も地球の映画では見たことありますが、今回の尾行は見事でした。僕も言われないと気が付かないですね。フォルちゃんも映画とかで見たよね。」
「うん、ルカお兄ちゃん。これはまた『商売繁盛』になりそうですね、マム」
「ええ、これは大変な事になりそうよ。陛下にも話をしますが、今回のミッション次第ではアメリカが敵に回ります。落としどころを上手くしたいわ」
皆は、ルカのセーフハウスで作戦会議中、盗聴防止にリーヤに風の結界を貼ってもらい、結界外ではフォルが作った別音声を流している。
敵が強大なので、話題も盛り上がる。
なお、ブルーノとキャロリンはポータムでお留守番中。
「出来る限り穏便に、人死にを抑えて犯人達を確保、PMSCの独自暴走の結果って形にした方が良いのでは無いですか? ケラブセオン自身は油断できませんが、表立って帝国が敵対するのも危ないですし」
「そうじゃのぉ、此方としては悪者は全部退治したいのじゃが、そうもいくまいて」
今日も僕の膝の上に座り、僕の意見に同意してくれるリーヤ。
「そうね、タケの提案方向でいけるように陛下と相談するわ。殺人実行犯を逮捕して、今後の動きに釘打てれば十分ですし」
マムは、皆の顔を見回しながら話す。
「では、ミッションスタートよ。敵の襲撃は明日の夜と想定されます。全員、勝つわよ!」
「アイ、マム!」
僕達は戦闘準備を開始した。
……犠牲になった人達、敵討ちするからね!
「なるほど、CIAも絡んでおったのじゃな。話が大きくなるが大丈夫かや?」
チエちゃん、御心配ありがとうです。
なんとか頑張ってみますね。
「なら良いのじゃ。では、明日の更新を楽しみにするのじゃ! ブックマーク等も宜しくなのじゃ!」




