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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第9章 捜査その9:終末への序曲、帝国に蠢く闇

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第16話 騎士爵は、科学の力で事件を調べる。その1

「タケ、ちょっと解剖室まで来てくれないかしら?」


 僕が事務仕事をしていると、キャロリンから内線電話で呼び出しが入った。


 ……今、確かグレータさんの解剖中だよね。何か科学的証拠が挙がったのかも。御遺体は苦手だけど、がんばろ。


「はい、了解です」


 僕は、隙あらばイチャつこうとしているリーヤを上手くかわし、解剖室へと向かった。


「タケのいけずぅ!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ごめんなさいね、タケ。気持ち悪くなったら、すぐに出ていいわよ?」


 血が付いた青い術着姿で完全装備のキャロリンが、僕にすまなそうに謝る。


「いえいえ。これも仕事ですから」


 僕は防護めがね、前掛け、マスクとゴム手袋をして、御遺体に一礼をしてからキャロリンの横に行った。


「御遺体の傷なんだけど、良く見てくれないかしら?」

「はい」


 僕は、覚悟をしながら御遺体の額の銃創を見る。


「ここ裂けているのは、頭蓋骨と皮膚の間に発射ガスが入ったからね。そして接近して撃たれたから傷跡が焼けているし、発射残渣が傷口の周囲に付着しているの」


 キャロリンは、丁寧に傷の状況を説明してくれる。


「でも、普通の傷と違うの、気が付かないかしら?」

「そうですねぇ……」


 僕は科学者の眼で遺体を見る。


 ……酷い仕打ちだよね。頭を接射するなんて。ん! あれ、もしかして!?


「この傷、生活反応が無い!」


「その通りなの。死亡後、まもなくしてから撃たれたかもなのよ」


 割けた傷跡なのだが、割けただけで周囲に炎症反応が見られられない。

 また焼けた跡にも同じく炎症反応、つまり生きていた時に受けた傷で起こる生活反応が見られない。


「まだざっとCTなんかで検査した感じだけど、各部の内出血、肋骨や手足、指の骨折、指の爪の欠損など、明らかに生前に拷問を受けた跡はあるんだけど、どれも致命傷には遠いの。それと腕に注射痕があったから、何か薬物を使われた可能性もあって……」


 聞けば聞くほど、グレータさんが酷い仕打ちにあっていた事が分かる。

 こういう拷問と注射といえば……。


「プロポフォールとかチオペンタールですか?」


「たぶん自白剤として使われた可能性があるわ。心臓血を採取しているから検査を御願いできる?」


「はい、分かりました」


 ここからが僕の戦い、科学捜査の腕の見せ所だ!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「さて、どんな検査結果が出ますやら」


 僕は、ラボで科学捜査を行っている。

 固相抽出などで前処理をした血液サンプルをGC/MS、ガスクロマトグラフ質量分析計にセットした僕は、別の分析機器での検査結果を見に行く。


「タケ、どんな感じなのかや?」


 今日は神妙な感じのリーヤ、僕の仕事が気になってラボに見に来た様だ。


此方(こなた)、解剖は見たくないのじゃが、タケの仕事は面白いから見に来たのじゃ。グレータ殿の敵討ちはしたいからなのじゃ!」


 悲惨な死を迎えさせられたグレータの事は、リーヤも思うところがあるのだろう。


「今は分析機器の結果待ちですね。では、結果が出ましたところからリリーヤ様にご報告いたします」


「うむ! 良きに計らうのじゃ!」


 少し憂い顔のリーヤを喜ばすべく、冗談モードで僕はご機嫌伺いをすると、リーヤはドヤポーズで迎えてくれた。


「まずは摘出された弾丸ですが、前回の射殺事件と同一、.45口径のもの。しかし、旋状痕(ライフルマーク)は類似するも一致しませんでした。なので、複数犯が同一機種の銃器を使っている可能性があります」


 同じ種類の銃であれば、同一の工程、旋盤やコールドハンマーで製作されるために、ライフリングは類似する。

 しかし何回か使用することでライフリングが削れ、銃ごとの個体差が生まれる。


「つまり十分に訓練されて装備もしっかりした組織が敵なのじゃな」


「ええ、そういう事になります。流石は姫様」


「此方、賢いのじゃ!」


 リーヤはドヤ顔だ。


「今、銃弾を蛍光X線装置にセットしてます。こちらの機械では素材が何で出来ているのかを、X線という見えない光で見ます」


「確かキャロリンが使こうておるCTとやらも、X線で身体を透かして診ておったのじゃ!」


「おお! 本当にすごいです、リーヤさん!! 僕、ビックリしました」


「此方、医学も勉強したのじゃ!」


 ますます満面の笑みのリーヤ、しかしCTまで勉強しているとは驚きだ。


「此方、タケに褒めてほしくて勉強、いっぱいしたのじゃ」


「ええ、もう感動です。賢いリリーヤ姫様」


 僕はリーヤの頭を何回も撫でた。


「これじゃ! これなのじゃ!」


 そうこう僕達がイチャコラしている間に検査結果が出る。


「ふむ。この弾は前回の弾と元素組成がほぼ同じ、おそらく同一メーカーの製品でしょう。これで敵が1組織なのが、ほぼ確定しました」


「弾の購入先も同じならそうなのじゃ。なれば、敵は軍隊なのかや?」


「さて、それはもう少し検査結果が出てからですね」


「ふむなのじゃ。あ、そういえばタケに聞きたかったのじゃ。どうしてこの弾は身体の中で花が咲くように開くのじゃ?」


 リーヤは、弾の変形具合が気になるらしい。


「よくぞ聞いてくれました。これはホローポイント弾という種類で、銃弾の先に穴が開いているんです。僕の拳銃も、ホローポイント弾を使っているので、見てください」


 僕は腰のホルスターから愛銃(Sig P356)を抜き弾倉を外して、そこから一発弾を抜いてリーヤに渡した。


「おう、確かに先端に穴があるのじゃ! この穴に意味があるのじゃな?」


「はい! 今日はリーヤさんスゴイですね。全部正解です」


「うむなのじゃ! 今日、此方は絶好調なのじゃ!」


 僕は、リーヤにホローポイント弾について説明した。

 動物など水分が多い物に弾が命中すると急速に減速するが、その際に先端に開いた空洞が急膨張を起こし、花が咲くように変形をする。

 そして命中物体に全運動エネルギーを叩き込む。

 弾は貫通するよりも中に止まった方が被害が大きい。

 体内を、よりぐちゃぐちゃにする訳だ。


「恐ろしいのじゃ。しかしタケはヒトを殺さぬのに、どうしてこんな恐ろしい弾を使うのじゃ?」


「まずは一発で確実に相手を倒す為です。守るべき人達を守るのに手加減できない場合も多いですからね。後は流れ弾の防止です。貫通弾は何処に行くか判りませんが、こいつなら撃った相手の体内で止まりますから。こんな危ない弾でも手足等、急所を外しつつ動けなくなる場所を撃てば、殺さないで無力化できます」


「さすが、此方の愛するタケなのじゃ!!」


「はい、僕の武器は人々を守るためのものですからね」


 僕はリーヤの笑顔に支えられて、更に戦うことを誓った。

「イチャコラしながらの科学捜査解説回なのじゃな。こういう科学機器類は、説明が難しいのじゃ」


 ええ、チエちゃん。

 自分もX線回折装置は大学時代に見ただけですね。

 GC/MSは、毎日っていうほど使ってますが。


「GC/MSは科学捜査ドラマでは常連じゃな。確かNCISでは島津、CSI・NYではAgilent製品じゃったな。国内ドラマでは島津とAgilentのどっちかじゃ」


 京都が舞台の「科捜研の女」は地元企業の島津製作所が全面バックアップしてましたね。


「こういう小道具は、ドラマを引き締めるのじゃ!」


 まあ、ドラマみたいに5分で分析できたら良いですけど。


「そこもフィクションなのじゃ! DNAのPCR解析も一日は掛かるのじゃ!」


 とまあ、突っ込みどころがありますが、そういう科学系ドラマ大好きです。


「では、明日の解説回をよろしくなのじゃ!」

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