第12話 暴走する愛、そして悪意は連鎖してゆく。
「ど、どうして! 僕じゃなくて、このサルを選ぶんだ、リーレンカァ!」
立ち上がり、僕を睨みつけて叫ぶレオニード。
「もう一度言うのじゃ、レニューシカ。今、わたくし、リーリヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤはタケシ・モリベを愛しています」
リーヤは、暴走するレオニードを悲しげな眼で見て、僕を愛する宣言をしてくれた。
「だから、どうして同じ魔族種で幼馴染の僕を捨てて、地球の短命で力も無いサルを選んだんだ、リーレンカぁ!!」
「それは運命だったのじゃ。タケは確かに此方よりも魔力も少なく、寿命も短い、多分あと100年は生きぬのじゃ。じゃが、タケは此方を、今の此方を愛し、大事にしてくれるのじゃ。そして何回も自分の命をはって此方やお父様の命を救ってくれたのじゃ」
リーヤは、僕との出会いを運命と言ってくれている。
それがとても嬉しい。
僕自身、リーヤとの出会いは運命だと思っている。
初対面の時に可憐さと日本語で驚かされ、一緒に仕事をしていくうちに仲良くなり、そして何回も死線を一緒に潜った。
そして、僕自身リーヤ以外の人との結婚など考えられない様になった。
……自分にロリコンの傾向がここまであったとは思わなかったけどね。でも、どんなリーヤさんでも好きになる自信はあるよ。
「なら、僕との出会いも運命だったのじゃないのか、リーレンカ!?」
「最初は、此方もなんとなくレニューシカと結婚する気はあったのじゃ。幼さと出会いの無さが原因じゃな。じゃが、レニューシカと別れて後、此方は家を出、学校へ行き、仕事をする事で沢山の人々と出会ったのじゃ。そして魔族種のまるで止まった様な生き方がイヤになったのじゃ」
リーヤは、涙を浮かべてレオニードをしっかりと見る。
一度は将来を誓い合った彼を振るのは、辛いのだろう。
しかし、リーヤは僕を選んでくれた。
だから、僕は一生をかけてリーヤを愛さないといけない。
リーヤの一生の一部だけでも良い、それを僕に預けてくれた事を大事にしないといけないのだ。
「なんでそう生き急ぐんだよ? リーレンカにはまだ500年以上時間があるじゃないか。もっとゆっくり生きようよ」
「レニューシカや。其方は、昔ながらの貴族なのじゃな。古くて自分たち魔族種以外を蔑み、ただただゆっくりと過ごすだけの。此方は、そんなのがイヤなのじゃ。皆と仲良く新しいことに挑戦していきたいのじゃ!」
まだしつこいレオニードに言い含めるように話すリーヤ。
僕がレオニードの立場なら、どう思うのだろうか?
リーヤの幸せを祈ってかっこつけて立ち去るのか、それとも未練がましく叫ぶのか。
「なら、僕と一緒に地球企業との商売をしよう、リーレンカ。警察なんて危ないし、下品な仕事を辞めて僕と一緒になろう!」
「レニューシカ。昔の其方は、もっと優しかったのじゃ。使用人であろうとも優しくしておったのに、今は……。もう昔のレニューシカは居ないのじゃぁ」
大きな涙を溢すリーヤ。
昔の彼が冷酷な男になってしまったのが辛いのだろう。
……ああ、警察を下品ってイワンのバカと同じ事言っちゃったよ。
リーヤを求めてきたバカ殿、イワンの事を僕は思い出した。
「ああ、昔の僕は甘かった。だから、父によって地獄を見たんだ。もう二度とあんな悲しくて恥ずかしい思いはしたくない。だから、僕は変わった。甘さを捨て、敵を排除し、弱みを見せず、這い上がった。今の僕は、『貴族』として、スルコフ公爵様の右腕になるまで伸し上ったんだ! リーレンカに相応しい男として!!」
どん底を味わったから、甘さを捨て「貴族」らしくなったというレオニード。
しかし、それは貴族らしさを嫌うリーヤにとっては、最悪手なのだ。
「残念なのじゃ。もう話しても無駄じゃな。レニューシカ、さらばなのじゃ! この先、レニューシカに幸せがあらんことを祈ります」
そう言って、リーヤは貴族らしい別れの挨拶をして部屋を出て行った。
「リーレンカぁ! どうして僕を捨てるんだぁぁ!! お、お前か、オマエが悪いんだ。何をやってリーレンカを誑かしたぁ! 僕のリーレンカを奪いやがってぇ! タケシとやら、絶対許さない。僕はオマエからリーレンカを奪い返す!」
そう一気に僕を睨んで叫んだ後、レオニードはドンとドアを開いて出て行った。
「ふ、ふぅぅ。怖かったよぉ。ありゃ、今後大変だなぁ。でも、アイツをリーヤさんに近づけるのは危険だな」
僕は、懐に潜ませていた拳銃の安全装置を入れなおした。
もしリーヤを襲ったときには、僕はリーヤに何を言われようともレオニードを射殺するつもりだった。
それがリーヤの騎士たる僕の仕事なのだから。
◆ ◇ ◆ ◇
「ミロン様、詳しくはそちらに帰ってからになりますが、地球のサル共との貿易、やり方次第でいくらでも美味しい事になりそうです。ただ、皇帝派の動きが邪魔になるでしょう。以前も地球企業を帝国から追い出すような行動をしています。皇帝派だけ上手い汁を吸うつもりなのではないかと」
夜のポータム、貴族街にある高級宿舎、そこでレオニードはスルコフ公爵と水晶球を使った魔法通信を行っていた。
「ほう。では、領主会議で言った話は嘘だと?」
「はい、いかな辺境伯とて地球のサル。その低俗な考えは帝国の利にはなりませぬ。最近では陛下もすっかり地球の考えに染まり、我ら古くからの帝国を守るものからしては、害にございます」
暗い室内で水晶球からの光りで照らされるレオニード。
その表情は冷たい。
「しかし、反皇帝派の大半は一掃されて今は細々としておる。ワシとて表向きは皇帝派には属しておるからな。あんなガキに頭を下げるのも癪だが、辺境伯にしろ配下にしろ油断ならぬ」
「そこで案なのですが、地球の企業が面白い話を持ち出してきています。近日中に地球へ行って話を聞いてきますが、どうやら魔法や魔族種の力を欲しがっているらしいのです。サルでも使い方次第では役に立ちそうです。特にあの銃器とかいうものは面白いですよ」
レオニードは、自分の情報端末に映し出されたメールを見ながら話す。
そこにはケラブセオン・エンタープライズのアジア支社日本支店の営業部異世界担当課長、柳原の名前があった。
◆ ◇ ◆ ◇
「此方、疲れたのじゃぁ。タケ、肩を揉むのじゃぁ」
「はいはい。お姫様」
今、僕はリーヤと混浴をしている。
といっても、2人とも浴衣を着てだけれども。
過去彼との話し合いで疲れたリーヤ、何か疲労回復手段が無いかと僕に聞いてきた。
そこで、僕は日本、都内両国にある少々高級なスパへリーヤを連れて行った。
今回の業務が大変だった事を聞いていたマムは、僕に公用車の使用許可までくれたのだ。
もちろんR18は禁止だぞって言われたけど。
まずはお互いゆっくりとジェットバスやサウナで身体を洗って暖める。
そして5階の岩盤浴ブースは男女一緒に居られるので、そこで一緒にまったりしているのだ。
「此方、蕩けるのじゃぁ」
「ホント、今日はお疲れ様でした」
周囲のリーヤを見る眼が少し気になるけど、皆可愛いリーヤを愛でる雰囲気なので、僕は安心してリーヤにくっつく。
……あ! 今、嫉妬を感じたぞ。ごめんね、リーヤさんは僕の彼女なんだよ!
「タケ、今回はすまなんだ。レニューシャがあそこまで愚かだったとは思わなかったのじゃ」
「いえいえ。僕は気にしてませんから。それよりもリーヤさんの方が大変だったですからね」
リーヤも僕にくっつく。
「もう此方は大丈夫なのじゃ。こうやってタケが此方を大事に思ってくれておるのじゃからな。そうじゃ、ポータムへ帰ったら今日も添い寝するのじゃ!」
「えー! ごめんなさい。また僕、眠れないんですけどぉ」
「どうしてなのじゃ! 此方、もう迫ったりはしないのじゃ!」
「だってぇ、リーヤさん寝相悪いんだもん。もう蹴られるのはイヤだから、キングサイズのベットが入る部屋借りてからにしましょうよぉ!」
「なんじゃ、此方と一緒に眠れないと言うのかやぁぁぁ!!」
僕達はケラケラと笑いあったのだった。
「タケ殿とリーヤ殿が仲良くしておる裏で、何かが蠢いておるのじゃ。ワシ、調査するのじゃ!」
チエちゃん、舞台裏から物語に干渉するのは勘弁してくださいよぉ。
「なに。物語を面白くするだけなのじゃ! 作者殿は安心するのじゃ」
怪しいなぁ。
では、明日の更新をお楽しみに。




