第10話 騎士爵は、美幼女に翻弄されまくる。
「ふぅ。昨夜は大変だったよぉ」
今は午前6時、定時起床時間だ。
昨晩、寝相が悪いリーヤと一緒に寝た際の肘鉄やら蹴りを食らってしまった割には、意外と気持ちの良い朝だ。
「みゅにゅぅ……」
リーヤは布団を半分吹き飛ばし、パジャマのお腹も捲れ上がっていて、可愛いおへそが見えている。
「もうハシタナイですよ、お姫様」
僕は、風邪を引かないようにリーヤのパジャマを引き下げて、リーヤのおへそを隠し毛布を被せた。
……パンツまで見せちゃだめだよぉ。
「さて、着替えて走って射撃練習してきますか」
僕はリーヤの寝顔をもう一度見て、部屋を出た。
◆ ◇ ◆ ◇
「タケ! 何処に行っておったのじゃぁ!!」
午前7時前、僕が汗をタオルで拭いながら部屋に戻ると、リーヤが起きだしていて、ぷんぷんと怒っていた。
「何処って、いつもの運動と射撃練習ですが?」
僕は、愛銃とタオルを見せた。
「此方、起きたら誰も部屋におらぬのでびっくりしたのじゃ!」
「だって、リーヤさん。気持ち良さそうに寝ていたんですから、起こすの悪いって思いましたし」
下ろした髪がつやつやと朝日を受けて輝く美幼女。
リーヤの姿は、朝も魅力的だ。
「まずは着替えませんか? さっきから暴れたら、お腹やら色んなところの肌がチラチラと見えるんですけど」
「な、なにぃ! タ、タケのえっちぃ!」
リーヤは身体を捻り、今更ながら腕で薄い身体を隠す。
「あのね。昨夜あれだけ身体を僕に押し付けてエッチな事していたリーヤさんが言いますか、それ? 僕は今からシャワー浴びて着替えますから、リーヤさんもお部屋へ帰ってくださいませ。せっかくですから、朝ごはん一緒に食べますか? 簡単なものしか出来ませんけど」
「わ、分かったのじゃ! では、準備で来たらメールで連絡するのじゃ!」
そう真っ赤な顔で言ったリーヤは、どたばたと僕の部屋を出て行った。
「ふぅ。ほんと台風だよね、リーヤさん」
僕はベットに寝転び、リーヤの残り香を味わった。
◆ ◇ ◆ ◇
「こ、此方。恥ずかしいのじゃぁ。とうとうタケと一緒に寝てしもうたのじゃぁ!」
わたくしは、自室のドレッサーの前で悶えていた。
昨晩やってしまった事が、今更ながら恥ずかしくてたまらない。
「しかし、タケは紳士じゃったのじゃぁ。軽く触る以外何もしなかったのじゃ」
日本のタケの家で見た鏡台が素敵だったので、わたくしは洋風のドレッサーを地球から買った。
実家では、誰かがわたくしの姿を整えてくれるが、ここポータムでは自分で何でもやる必要があるからだ。
ドレッサーの鏡には、茹蛸の様に真っ赤な幼女がいる。
金色のぱっちりとした竜眼、アクセサリーみたいな角、つややかな黒髪、ちょんまりとした鼻にピンクな口。
以前タケが言った通り、まだまだ「蕾」、されど将来が期待できそうな幼女。
我ながら、美少女の範疇だとは思うが、タケはわたくしの外見だけで好いてくれている訳では無い。
……今の外見で好きなのは、それはそれで困るのじゃぁ。
わたくしは、まだお腹よりも前に出ていない胸を思わず触る。
「うむ、早く成長するのじゃ!!」
わたくしは、急いで身支度を整えた。
◆ ◇ ◆ ◇
「さて、マム。これは一体どういう事なのですか!? 僕にリーヤさんを嗾けたりして。僕がリーヤさんを襲うとは思わなかったのですか?」
僕は、ポータルから出勤して来たマムを尋問する。
今朝は会う人全部から、「リーヤちゃん、どうだった?」と聞かれて僕は困っているのだ。
「あらあら、リーヤさん。お身体は大丈夫かしら? 裂けていない? え、何も無かった? うーん、タケの度胸無しというべきなのかしら? それともリーヤさんが大事すぎて手を出せない紳士のか、それとも、ま、さ、か、男性不能!? タケ、アタクシがED用のバイアグラを処方しましょうか?」
「だってしょうが無いじゃない。リーヤんの声、夜中でも聞こえてたし。心配したこと無かったけど」
「拙者も横の部屋で困ったでござる。まあ、何も無かったのは良かったでござる」
「先輩、頼みますから『そういう事』は他所で御願いしますよぉ。自分、困りますです」
「えぇ! リーヤお姉さん、タケお兄さんと一緒に寝たのぉ!」
「タケ殿は紳士じゃぞ。ワシが同じ立場なら襲っておったのじゃ!」
皆、言いたい放題だ。
「で、なんでチエさんが居るんですか? まさか、昨夜も僕達を……」
「うむ。R18にならぬように、ワシ監視しておったのじゃ。恥ずかしい会話も全部録画・録音済みなのじゃぁ!」
「此方、恥ずかしいのじゃぁぁぁ!!」
もう捜査室は大騒動だ。
「あらあら、大変ね。でも、リーヤちゃんがすっかり元気になって良かったわ。リーヤちゃん、タケちゃんは良かった?」
「もう最高なのじゃ。此方、これからも毎晩添い寝してもらうのじゃ!!」
「リーヤさん、頼みますから、それは勘弁して下さいよぉ。僕の精神力が限界突破しちゃうよぉぉ!」
今日の捜査室も賑やかだ。
……もう勘弁してぇぇ!
◆ ◇ ◆ ◇
「では、タケシ君、リーヤさん。またで悪いけど宜しく頼むよ」
うんざり顔のコウタが、僕とリーヤに話す。
ネット回線越しでも、コウタの少し疲れた表情が分かる。
「はい、了解です、功刀閣下。しかし、これって何か裏ありますよね?」
「うん、だから君たちに頼んだんだよ。どちらにも繋がりがある君たちだからね」
「コウタ殿の頼みでは、此方しょうがないのじゃ!」
またまた僕達は功刀辺境伯、コウタから仕事の依頼を受けている。
今回は、帝国保守派と地球企業の仲介役。
以前コウタに接触をしてきた地球企業、ケラブセオン・エンタープライズが、今度は帝国北方の保守派重鎮スルコフ公爵に接触をしてきた。
そして、双方の代理人がポータム、領事館にて会合を行うことになった。
それがヨリにもよってリーヤの元彼、レオニードと僕の親友、ヒロなのだ。
コウタが陛下と今後の事を対応中の多国籍企業が、今度は別の上級貴族とのコネクションを狙う。
横から入られたコウタとしては良い気持ちはしないが、陛下から頼まれては仕方が無い。
どうやら僕達が城内で公爵とすれ違った時、陛下に謁見をして地球の企業との接触の許可を頼んだらしい。
「君たちは通訳兼監視役で御願い。何か不味い雰囲気なら俺を呼んでもいいから」
帝国に何かあったらと心配なコウタ、これが日本企業ならそこまで心配はしなかったのだろうけど外資系、それもPMSCなど独自軍事力を持つ多国籍企業相手だと油断も出来ない。
「はい。注意してみます。そういえば、ナナさんのご様子は如何ですか? この夏前でしたっけ、ご出産は?」
「ありがとう。マユ義母さんの話だと安産間違いなしだって。もう男女も分かるんだけど、俺には内緒なんだ。ひ孫が生まれるって爺さん婆さんが盛り上がっているっぽいけど」
嬉しそうに僕達に妻子の様子を話してくれるコウタ。
その幸せそうな様子が、実に微笑ましい。
「此方、早く成長してトモヨお母様に孫の顔見せるのじゃ!!」
リーヤ、今日も絶好調らしい。
「さし当って、今晩もタケに添い寝してもらうのじゃ!」
「え、君たち! もうそういう関係まで進んでいるの?」
「リーヤさん、ご勘弁を。コウタさん、まだ僕リーヤさんには手を出してませんよぉ。ただの添い寝だけですよぉぉ!!」
僕の悲痛な叫びが、ポータム領事館に響いた。
「さあ、物語が動くのじゃ! ワシ、楽しみなのじゃ!」
ええ、チエちゃん。
もうタケ君しか見ないリーヤちゃん。
それを見る元彼のレオニードはどう思うのか?
また、タケの親友ヒロはどう動くのか。
今後の動きをお楽しみに。
「明日の更新が、ワシ待ち遠しいのじゃ。ブックマーク等してくれたら、もっと早く更新するかもなのじゃ!」
チエちゃん、無理言わないでね。
まあ、嬉しくてがんばるけど。
では、明日の正午にまたお会いしましょう!




