第9話 騎士爵は、美幼女と添い寝する。
「タケぇ」
リーヤが、ベットの中で僕に抱きつく。
「あ、リーヤさん。僕はずっと一緒ですから少し離れてくださいな。これじゃ僕、眠れませんって」
狭いシングルベットの上、リーヤはぴったりと僕にくっつく。
もうすぐ春を迎えるポータム、でも夜はまだ冷えるのでリーヤの温かさは、とても心地よい。
「しかし、どうしてこうなったのやら」
「だって、此方、タケに捨てられると思ってずっと不安じゃったのじゃ!」
僕の顔に自分の顔をくっつけて話すリーヤ。
僕の鼻に、女の子らしいリーヤの甘い香りが伝わる。
……風呂上りだからか、髪がとっても甘い匂い。捜査室では同じシャンプーやボディソープ使っているはずのに、僕とは大きく違うよぉ。
「はあ、今日は眠れそうも無いよ、僕」
「此方は、良い夢見れそうなのじゃ!」
リーヤは、やっと本来の笑顔、魔の魅惑の笑顔をしてくれた。
今日、お城での幼馴染レオニードとの出会い以降、リーヤはずっと曇った表情だった。
リーヤ、お姉さんとの話で少しは落ち着いたが、その後も不安そうな表情をしていたので、僕はずっと心配だった。
それが、いつもの表情に戻れたのなら、睡眠不足と「我慢」はしょうがあるまい。
……だって、まだ子供のリーヤさんを抱くのは、医学的にも倫理的にもアウトでしょ。
そう、僕達は同じベットで寝てはいるけど、ただの添い寝。
お互い、ちゃんとパジャマを着ている。
「じゃあ、寝ますか」
「うんなのじゃ!」
僕は部屋の照明を落とした。
◆ ◇ ◆ ◇
「タケ、此方と一緒に寝てほしいのじゃ!」
それは急な宣言だった。
僕が就寝準備を終えた頃、ドアがノックされパジャマ姿のリーヤが入ってきて、びっくりする事を言い出したのだ。
「ちょ! 一体何を言い出すんですか、リーヤさん!! 前にも言いましたよね、自分を大事にしてって。そりゃ、僕はリーヤさんが大好きですが、まだこういうのは早いです。もっとリーヤさんが成長しないと、お身体にも悪いですよぉ!!」
僕は想定外の事態に、頭が沸騰状態になる。
「タケ、何か勘違いしておらぬか? 此方、別に抱いて欲しいとまでは言わぬのじゃ。まあ、タケが望むのなら、此方もタケとなら良いのじゃが……」
リーヤは顔を真っ赤にして視線を僕から逸らす。
「え、じゃあどういう事ですか?」
「じゃから、普通に一緒に寝て欲しい、添い寝して欲しいのじゃ!」
リーヤは、深夜なのに大声で叫ぶ。
「リーヤさん、深夜ですからお静かに。話聞きますから、まずはこちらに座ってくださいな」
「うむなのじゃ!」
リーヤは僕の横にくっつく様にベットへ座り、話し出した。
「此方、タケを騙して悪かったのじゃ。もっと早くレニューシャの事を話すべきじゃったのに、今日まで言えなかったのじゃ。今のタケとの関係が壊れるのが怖かったのじゃ」
おどおどと僕の顔を見上げるリーヤ。
その表情が実に可愛い。
「だから、僕は一切気にしてませんって何回も言いましたよね。過去は過去、僕だって初恋の人は居ました。ちょうどリーヤさんがレオニードさんと出会っていたのと同時期ですね」
なので、僕も昔の初恋話、幼稚園時代の事を話した。
「そうなのかや? タケにもそういう事があったのかや。でもタケは幼稚園の幼児じゃろ。此方はもう今とは同じくらいの姿で80歳は越えておったのじゃ。じゃから話は随分と違うのじゃ」
しかし、まだ不安そうなリーヤ。
「まあ、お互い年齢と種族差はどうしようも無いです。僕がキャロリンさんから聞いた話ですが、異種族の場合でも人類種なら身体の成熟具合と精神年齢は一致するそうですよ」
「そうなのかや?」
精神活動は脳の発達、ホルモンバランスに大きく影響を受ける。
まだ初潮も迎えていない子供の身体のリーヤは、100歳を越えていても幼い精神のままで何の不思議もない。
……それに聞いた話だと長命種は社会活動ペースもマイペースで遅いらしいし。世の中の転生系ラノベで、子供なのに最初から大人精神ってのも医学的には変だよね。身体に精神が引っ張られて当たり前。更に性転換までしたら確実に精神は違うよ。
男性の脳には、胎児の際に男性ホルモンの暴露が必要らしい。
だから女性に生まれたら、脳の仕組みからして違うから記憶があっても生前の男性と同じ精神である筈は無い。
「なので、まだまだお子様なリーヤさんも子供で良いんです。無理に100歳越えたから大人だとか、僕よりもしっかりしなくちゃならないと思わなくても良いんです。ゆっくり大人になれば良いんですよ。それまで僕は待ってますからね」
僕は、涙目になりつつあるリーヤの頭をなでて慰める。
「それでいいのかや? 此方まだまだ大きくなるのに時間がかかるのじゃ。此方でなくても、ヒト族、地球から嫁を娶るのでいいのじゃぞ」
「でも、それはリーヤさんがイヤなんでしょ。母さんの前でそう言ってたし。だから、リーヤさんは一切気にしないでノンストレスでね。いっぱいご飯食べて、勉強して運動して成長できるように頑張ってください。それを僕は応援しますからね」
「た、タケぇぇ!!」
リーヤは感極まって僕に飛びつき、しっかりと抱きついた。
「もう、こういう処はお子ちゃまですよぉ」
僕はそのまま、リーヤと一緒にベットに転がった。
◆ ◇ ◆ ◇
「で、結局今回はどうしてこんな事したんですか?」
「此方、困ってお母様に電話をしたのじゃ……」
僕に寄り添って、シングルベットで一緒に横になるリーヤ。
リーヤの話によると、どうやって僕に償えばいいのか、そして僕を逃がさないようにするのはどうしたらいいのか、エカテリーナに聞いたそうだ。
そして彼女曰く、
「既成事実を作れば良いのです。今こそリーヤちゃんの魅力で押せ押せしちゃうの。ベットに潜り込んでしまえば勝ちよ。まあ、タケ様の事ですから、リーヤちゃんを無理やり傷付ける事はしないわ。ゆっくり一晩同じベットで話して一緒に眠ればいいわよ」
と、母親とも思えぬ作戦をリーヤに授けたそうな。
「一応、マムにも相談したら、添い寝まではOKもらえたのじゃ。もし襲われたら魔法で吹っ飛ばしてもイイとも言われたのじゃ!」
暗い部屋、同じベットで顔や身体をくっつけて話すリーヤ。
とても嬉しそうなのはイイ事だ。
……マムにエカレリーナ様、僕にSAN値の限界挑戦をさせるつもりなんですかぁ。リーヤさん、まだ小さいけど、良い匂いだし、柔らかいし、温かいし。辛抱苦しいんだよぉ。
僕は、下半身の一部が硬くなるのを必死に我慢する。
「タケ、おしりや胸くらいは触っていいのじゃ。なんなら我慢せずに最後まででも良いのじゃぞ?」
リーヤ、僕の下半身に自らの足を絡めるようにして、自分の下半身を押し付ける。
「あ、あそこが硬いのじゃ! タケ? 辛抱せぬで良いのじゃぞ?」
「あのね、リーヤさん!! 僕もイイ加減怒りますよ!! 今日は添い寝だけ。これ以上は進みません! あまりふざけていたら、ベットから追い出しますよぉ」
僕は、あまりにもの行為にリーヤを叱る。
何処の世界に「カモネギ」と理解して大人に迫る幼子がいるのやら。
「ごめんなのじゃぁ。此方、タケが此方に欲情してくれたのが嬉しいのじゃぁ」
……まったく困った娘だよ。
そうこうしながら夜が更けた。
◆ ◇ ◆ ◇
「すうすう」
規則正しいリーヤの寝息が聞こえる。
そして彼女の甘い吐息が僕に届く。
「まったく、このお姫様にも困ったもんだね」
僕は、幸せそうなリーヤの寝顔を見ながら未来を思う。
「まあ、しばらくは辛抱しますか。こんな可愛いくて良い子、泣かせたく無いからね」
僕はベットと布団や毛布を整え、リーヤが寒くないようにして眠りに入った。
……明日は、良い目覚めになりそう。
なお、この後、寝相が悪いリーヤから肘打ちやら蹴りを喰らって、僕はベットから何回も叩き落された。
そして誓った。
ダブルじゃなくてキングサイズのベットを新婚家具として将来買うことを。
……明日の朝、定時に起きれるかなぁ。くすん。
「リーヤ殿、寝相が悪いのかや。タケ殿も辛抱ご苦労様なのじゃ。しかし良い映像も取れたのじゃ!」
チエちゃん、趣味悪いですよ。
こんな事まで撮影してたんですか?
「じゃってR18展開は阻止しなきゃなのじゃ! しかし想定どおりのギャグ展開で終わって良かったのじゃ。さすがタケ殿なのじゃ」
リーヤちゃんが大事ですから、今は抱き合うのでも十分と思っているのでしょう。
因みにタケ君の幼稚園時代のエピソードは、私の実話。
とても可愛い子で、写真を見直して懐かしく思いました。
「ほう、作者殿にも色々あるのじゃな?」
そりゃ、人生半世紀越えたら色々ありますから。
「では、明日以降の展開が楽しみなのじゃ。もうタケ殿とリーヤ殿の間には心配いらないのじゃ。ワシ、ますます暗躍するのじゃ」
お手柔らかにね、チエちゃん。
「では、ブックマーク、評価、感想、レビューなど楽しみにまっておるのじゃ!!」




