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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第9章 捜査その9:終末への序曲、帝国に蠢く闇

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第7話 美幼女は騎士爵に過去の男の話をする。

「あれは、ドナートが倒れる前の話じゃ」


 リーヤの姉の家で、僕とリーヤは応接間で向かい合っている。


 ……いつもリーヤさんは、僕の横が定位置だからすこし変な感じだね。


 リーヤの横には、リーヤの姉オレーシャが、オレーシャの膝の上には娘のクラーラがちょこんと座っている。


「レニューシカ、レオニード・ニキードヴィチ・ルィートキンは此方(こなた)より10歳程歳上で、アンティオキーアの東隣、クーマエ領の前領主ニキータ・アズレートヴィッチ・ルィートキン『元』伯爵の長男なのじゃ。此方とは幼い頃から何回も会っておった。兄とも友達とも言える関係じゃったのじゃ」


 目の前のティーカップを眺めながら、とつとつと話すリーヤ。

 僕と眼を合わせるのが苦しいのか、いつもとは全く違う悲しげな表情だ。


「お互いに近い年齢じゃったし、魔力量的にも家の格的にも同じくらいじゃったので、お父様やお母様もそれなりの心つもりはあったのじゃろう。レニューシカは、此方の話し方が古風なのを笑いもからかいもせず、楽しい、面白いといってくれたのじゃ」


 リーヤの話具合からして、幼くて淡い恋心があったのかもしれない。


「そして、いつしか此方はレニューシカと結婚するのだろうと思い、同じ思いだったレニューシカと子供達だけで結婚の約束をしたのじゃ。今思えば此方人等(こちとら)は幼すぎたのじゃ。結婚がどういう事なのかをお互いに知らずに」


 尚も涙を流しながら話すリーヤ。

 その様子にクラーラが、

「おねえたま、どこかいたいの?」

 と、心配そうな顔だ。


「ラーラ、もう此方は大丈夫なのじゃ。ありがとうなのじゃ。タケには真実を話さねば、此方はもうタケとは一緒に居られないのじゃ。もし、タケに捨てられても、しょうがないのじゃ!」


 ……あれ、この話だとリーヤさんは僕と別れたくないって事だよね。じゃあ、どんな事が過去にあっても問題ないじゃん。

 〝なら、ワシのお節介は必要ないのじゃな。一安心なのじゃ! 後は、リーヤ殿を惚れ直させるのじゃ!〟


 内心呟きに毎度やってくる魔神将(アークデーモン)チエ。

 どうやら僕達の関係が心配になってやって来たらしい。

 というか、この修羅場もどこからかHDカメラ撮影していることだろう。

 シリアスをギャグ時空へと送ってくれるのは、今回はとてもありがたい。

 僕は安心してリーヤに話した。


「僕は何があってもリーヤさんと離れる気はありません。ですから、安心してお話しください」

「え、いいのかや? 此方はタケを騙しておったのじゃぞ?」


 リーヤは、やっと僕の顔を見て話してくれた。


「はい? 過去に何かあったというのは以前聞いてますし、別に先に婚約者がいたというのは驚きでしたが、それ以上の感想は無いですけど? まあ、焼餅したくはなりますけどね。幼い頃のリーヤさんは、それこそ可愛かったでしょうし。それともリーヤさんは、僕との婚約を解消してレオニードさんとヨリを戻すのですか?」


 僕は、わざと冗談っぽい感じで話す。


「いや、過去は過去じゃし、今此方が一緒に居たいのはタケなのじゃ! タケのお母様に話した事に、一切嘘偽りは無いのじゃ!」


 僕の回答に、リーヤは僕を配偶者として選ぶと宣言してくれた。


「なら、何も問題ありません。僕もリーヤさんとはずっと一緒に居たいです。ですから、今まで通りですよ」


「タ、タケェェ!!」


 リーヤは立ち上がり、テーブルを飛び越えて僕に飛びかかった。


「ちょ。危ないですよぉぉ!」


 僕は、飛んで来たリーヤの勢いで、椅子ごとリーヤを抱えたまま後に倒れた。


「タケ、タケぇぇ。此方で本当に良いのかや? お子ちゃまでワガママでガサツで、とても貴族令嬢には見えぬ此方で良いのかや?」


「はい、そんなリーヤさんが大好きですから」


 泣きながら僕に強く抱きつくリーヤ。

 そして顔を僕の胸に押し付けて叫ぶ。

 僕は、そんなリーヤの頭や背中を優しく撫でた。


「あ、あーん。此方、タケが居てくれて良かったのじゃぁぁ!」


「ふぅ。わたくしもヴァレリーにあんなこと言って貰えたことあったかしら? でもリーヤ良かったわね。ラーラ、お姉ちゃんはとっても素敵な人を見つけたの。貴方もそんなカレシいつか見つけるのよ」


 不思議そうな顔の(クラーラ)を膝に乗せたオレーシャ、僕達の様子を温かく見守ってくれた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「レニューシカじゃが、此方とは別れる事になったのじゃ。あれは、ドナートが亡くなってしばらくしての事じゃ」


 今、リーヤは僕の膝の上でお茶を飲みながら話してくれている。

 その様子をオレーシャとクラーラはニコニコして見ている。


 ……やっぱりリーヤさんの定位置は、僕の横か膝の上だよね!


「レニューシカのお父様、ニキータ・アズレートヴィッチ・ルィートキン『元』伯爵が不正を犯して改易となったのじゃ。此方は幼かったので詳細は聞かなんだのじゃが、私服を肥やして領民を泣かし、陛下をも騙しておったらしいのじゃ」


 20年程前なら、確か陛下が皇帝に就いた直後。

 子供と舐められていた事もあったのだろう。


「そして改易で爵位も奪われ平民にまで身を落とした父と共にレニューシカは平民となり、此方の前から去ったのじゃ。此方は後に事情を知ったのじゃが、もう手遅れでレニューシカが何処へ行ったかは分からなかったのじゃ」


「罪があったとはいえ、改易で命までは取らなかったのは陛下らしいですね」


「うむ、もし連座でレニューシカまで死刑になっておったら、此方はあの時、陛下に刃を向けていたかもしれぬのじゃ。甘いと言われる陛下じゃが、恨みの連鎖を生むのは停めたのじゃ」


 前皇帝の代までは、家族も連座制として同じ罰を受ける事が多かったらしい。

 しかし少年皇帝は、罪は本人が償うもの、家族は別だという宣言をした。

 この場合は改易なので家族共々、平民へとなったけれども。


 ……甘いと言われても、僕は陛下の考え好きですよ。


「しかし、レニューシカがスルコフ公爵家に雇われておったとはのぉ。何か嫌な予感がするのじゃ」


「保守派の重鎮というのが気になりますね。けど、リーヤさんは気にしなくても良いですよ。彼は彼の考えがあって保守派に付いたのですから。もちろん彼に命の危険があるというのなら、一緒に助けに行きますけど? 過去がどうあれ、リーヤさんの大事な人でしょ」


「タケぇぇ。此方、タケで良かったのじゃぁぁ!!」


 リーヤは、嬉しそうに後頭部をぐりぐりと僕の胸に押し付けた。

「これで一安心なのじゃ! ワシ、すこし心配じゃったが、取り越し苦労だったのじゃ。安心してHD撮影するのじゃ!!」


 チエちゃん、デバガメは勘弁してね。


「タケ殿にはバレバレじゃが、問題ないのじゃ!」


 さて、ここから物語はどう動くのか。

 今後をお楽しみに!

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